偶然の連続から、会社やそして社会の変革へ繋がる出来事が起こる。
Gaiaxには、トップダウンで文化が変わるというよりも、社員が上げた声を無碍にしない文化があり、社員一人一人がムーブメントメーカーとなり、会社の制度や文化を形作っています。ダイバーシティの課題のひとつである「ジェンダーギャップ」もそのひとつ。
「女性の生き方・働き方」をどう考え、どう変えていくか?
シリーズで、その変革の様子を追っていく「ジェンダーダイバーシティ」シリーズ、ご覧ください!
なお、ガイアックスに興味を持ってくださった方は、オンライン座談会にてメンバーに直接疑問をぶつけることができます。「採用に興味がある」や「ガイアックスってどんな会社だろう?」と思った方はご確認ください。
» オンライン座談会
今、ガイアックスでは、ダイバーシティ(多様性)を更に推進する動きが強まっています。
性別、人種、国籍、宗教、年齢、学歴、職歴、性的指向など、人にはそれぞれの違いがあります。
現代では、それら全てが受け入れられ、マイノリティと呼ばれる人も不満なく人生を過ごせているか…… おそらく、「YES」と回答する人は、ごくわずかでしょう。
マイノリティに位置する人が差別をうけたり、不当に扱われるニュースはテレビやインターネットから今でも流れ、実生活の中でも「なぜ、こんな事を言われないといけないの?」と戸惑う場面が誰かしらあるのではないかと思います。
21世紀に入った現在でも、便利な世の中になったとはいえ、気候変動や資源・人口問題など社会課題は山積みです。
何か課題を解決する時には、人と人とが手を取り合い、協力していくことが求められる。
これは、私たちが普段生活する会社や学校といった社会でも同じではないでしょうか。
それは互いを理解することから始まる。
ダイバーシティ(多様性)を尊ぶこと。
「それは大切なことだよね」と、会話の中で話したとしても、実際にそれが浸透するには、人の心がそれを「当たり前」だと感じる感性が必要になります。
常識とは、数年・数十年で変化する真理ではないもの。潜在意識の中に組み込まれた一つの偏見なのかもしれません。
社会の構造が多様性を尊ぶことに壁を作っているのだとしたら、まずは今ある「常識」を社会構造から覆す必要がある。
人と違うこと、平均とずれていること、今までの常識とは違うこと、前例がないこと……
何か変化を起こして、それが全体にポジティブな影響を及ぼすであろうと予測ができても、100%上手くいくのかどうか、特に前例がない場合には、これらを覆すことは簡単ではありません。
そして、私たちの会社にも、まだまだ取り払わないといけない「常識」があることでしょう。
ダイバーシティの中の一つに「女性の働き方」でもある「ジェンダーギャップ」があります。
これからシリーズで、ガイアックスがそのテーマをベースに変革していく様子を追っていきます。
盲点のない経営判断が実現できる組織には女性役員が必要
ガイアックスでは、未来会議という「ガイアックスを正しい未来につれていく」ための会議が定期的に開催されています。この会議には代表の上田をはじめ、ガイアックスの取締役やその時のトピックにふさわしいと思われる人物がアサインされます。
ここでは、各自で出し合ったアジェンダに対して、ダイアログをし内容を話し合います。さらに具体的な実行や判断が必要なものは、本部長会議に上程される仕組みになっています。
3月10日に開催された未来議会議の中で、こんな議題がありました。
「女性登用について」
それは現在、オランダに在住しているソリューション事業部の本部長である管さんからの議題でした。
オランダやデンマークでもいろんな企業の方と話す機会があるが、女性の管理職比率が高いことに驚く。今回のコロナの件について上田さんが言及されていたように、男性ばかりの集合体では盲点が生まれやすいと感じる。もちろん実力の観点もあるかと思うが、多様な視点を持つことで盲点を失くす(減らす)努力はした方が良いと思っている。ゲスト制でも良いとは思う。<非連続な未来の姿:より抜け目のない、適切な経営判断が実現できる組織>
− ソリューション事業部本部長:管
世界経済フォーラム(WEF)が毎年発表する「男女平等ランキング2020」では、アイスランドが1位、ノルウェーが2位、フィンランドが3位となっており、日本はG7最下位の121位になっています。欧州では女性活躍が当たり前のようにあるけれど、世界的に見たときに日本の立ち位置は、まだまだ低い状態。
他の数値に置き換えてみても、2020年8月の日本での自殺者数は1849人となり、前年に比べ246人増加しています。その内訳は8月の自殺者数の増加分246人のうち186人(75.6%)が女性。コロナ禍の影響によりサービス業を中心に女性の方が失業し、生活苦に陥っている可能性が高いことが伺えます。また、2015年の内閣府の統計では、配偶者から暴力を受けた女性は4分の1にも上り、在宅勤務の増加に伴う家庭内暴力の増加が、2019年よりそこからさらに2020年5月時点で3割増加し、女性の方がストレスが溜まりやすい環境にある因果関係が考察されます。このように、数値だけを俯瞰すると、日本はまだまだジェンダーギャップの問題を抱えている国であることが見て取れることでしょう。
未来会議では、取締役に女性がいないガイアックスとしての「女性登用」について話が持たれましたが、誰が適任なのか?そして、どうすべきなのかまでには話が及びませんでした。
この未来会議には男性しか出席していないということもあり、3月31日に「女性活躍に関する座談会」が設けられました。
今回は、その座談会でのガイアックスの女性陣の議論を公開いたします。
女性活躍に関する座談会
会議概要
日付:2020/03/31
場所:オンライン
背景
ガイアックスで、幹部陣には女性も多いものの、執行役・取締役に不在ということなどをはじめ、女性活躍について、適切な環境を作れているのか不安。
本部長会議などで、男性のみで議論するというのもイマイチ。
本会議への依頼内容
問題があるかどうかの現状認識、その対策案も含めて、議論して、報告してほしい
重要な要素
未来会議同様、アウトプットに責任を負わない
判断を伴う議題については本部長会議へ
ガイアックスグループでの女性活躍という視点での問題点について
日比 ジェンダーと言う意味では、LGBTQの当事者としても、女性としても、不利に判断されているとは日常では感じない。他の会社から比べると、働きやすい。ただ、取締役会、経営会議の場に女性がいないのは、構造として課題だとは感じる。だからといって誰か女性を登用しようしたとき、女性陣としてあの場に入りたいと思う人は少ないと思う。その心理的ハードルが何なのかはわからないが、そこに無意識のジェンダーバイアスはあると思う。それは男性だけでなく、男女両方に対して。
また、未来会議の議事録を読んでいて、優秀な人材を取りたい、いけてる会社としてブランディングしたいということは出ているが、なぜそれをやるのか?という部分がない。それが話として出てきていない、もしくは指摘する人がいないのは、マテリアリズムっぽくて、心理面に話が及ばない所は課題だと思う。
荒井 女性だから不利だと感じる、差別される、ということはない。入社当時は飲み会でのセクハラっぽい発言なども多かったと思うが、今はもうないと感じている。課題として感じることもない。だからこそ、会社の場であえて、ジェンダーを持ち出すということをしようと思えない。女性を持ち出す方が勇気がいる。
新卒時代の配属部署は、子供がいるが奥様が専業主婦で、家庭のことは奥さんが基本的にやっている印象で、みんな一日中とにかく仕事に没頭していた。不満はなかったが、このチームではこの働き方でいないとダメだと思っていたし、この文化に逆らって改革しようとも思わなかった。ただ、このままでは家庭を持って働くことはできないため、いつかは環境を変えようとは思っていた。これは昔の話だが、同じように、差別されているわけでもないし、押し付けられている訳でもないが、暗にそう言う雰囲気がある、と言うのは今もあるのではないか。
野口 GRiDに引っ越してきたから、だいぶ社風が変わった。五反田の時は、部長陣の中で出産する人はいなかったため、妊娠すると「部長をいつおりるんですか?」と言われた。悪気はなく、そういうことが当たり前のような空気感があった。ガイアックス以外で役員をやっていた時はもっと酷いことを言われたので、ガイアックスはまだ優しい方だったとは思うが。GRiDに移ってから、多様性を受け入れる素養が高まったと感じた。(※ガイアックスは五反田オフィスから永田町GRiDへ2017年に移転)
別の視点で、ガイアックスに入社する人で、野心を持って偉くなりたいという人がいない。他社だと出世競争や、偉くなることに対するモチベーションが強い。マネージャーや部長にすら、バリューを感じるという人が少ないイメージ。
荒井 成り上がりたい人が、ガイアックスに来るイメージは確かにない。社会的ポジションや年収を求めてくる人はいないのではないか。
石山 GRiDに移転してからでいうと、ガイアックスは個人と多様性が尊重される会社というイメージがあるし、実際そうだと思う。その意味では、今あえて女性に対して何かを打ち出すことは、ガイアックスとしてはむしろマイナスだと感じる。女性活躍はダイバーシティの一環でしかない。今は女性の比率が物理的に低いとは思うが、ガイアックスの目指す数十年後のビジョン、例えば超分散型社会でブロックチェーン型の会社を作るなどを本気で目指していくのであれば、この議論すら無くても良いのではないかと思う。
とはいえ、会社の内部を考えると女性がいない事で、女性特有の病気、出産、などの制度や環境設備が疎かになってしまう事も考えられるため、意思決定のプロセスに女性がいないことは問題ではないかと感じる。
野口 ガイアックスでは事業部長に裁量がものすごくあるため、わざわざ執行役にならなくても決定できる範囲が大きい。数字も事業部長が見ている。そうすると、ガイアックスの執行役には事業で数字を出すマネジメント力よりも、メッセージングの強さやビジョンを言葉に落とせるかどうか、などが大事ではないかと感じる。
日比 もしそれがあれば、経験がなくても役員になってもいいのか?
野口 良いのではないかと思う。ただ事業部長とのやりとりはもちろん必要なため、成長は必要だと思うが。
日比 国際政治の分野で考えると、先進国が作ったルールが既ににあって、第三世界が発展した結果そのルールが自分達にあったルールじゃないと思っても、変更できないと言う現実がある。男女の世界も似ていると思っている。男性だけの社会で作ったルールの世界に女性が進出した時に、そのルールを変えられるか。組織の構造を変えられるポジションに、女性が入ることは大事だと思う。無意識に男性優位であったり、男性的な考え方だと言うことをわかった上で、議論ができると良いとは思う。例えば、ガイアックスは、全体的にDOが強い。行動をどんどん起こした人が認められるけど、その影でそれを実現すべくサポートをし続けた人は評価されにくいのでは、と感じる。
荒井 それで言うと、男性性と女性性の問題かと思っている。ホフステイトモデルによると、そもそも日本人は、世界的にも男性性が飛び抜けて高い社会であるらしい。北欧の男性より、日本の女性の方が男性性が強いとも言われている。結果として、結果をだす、完璧にこなすと言うのが日本人の特徴である。性別の問題というよりは、男性的であるということが求められ、女性であっても男性性を強く持って仕事をするように求めれれていると言う雰囲気が、日本のビジネスシーン全体にある。そもそも女性性を持ち出すのが勇気がいる。男性も男性性を強く持たないと、という苦しさを感じている人もいると思う。
意思決定の場に女性がいないのは機会損失だとも思うが、確かに事業部で意思決定の多くををさせてもらえるので、執行役会の場で女性が必要なのか、というとわからない。
日比 ソーシャルメディアラボの中では、男女平等だし、組織改革としても弱さを出すことができている。そのためソーシャルメディアラボメンバーはソーシャルメディアラボへの興味はみんな高いが、その分ガイアックスへの意識は下がっている。それだけ事業部のカラーが強い。
荒井 確かに今は事業部ごとに考えることが多く、ガイアックス全体として女性活躍と言われても、イメージがつきにくい。
千葉 今部署を横断で仕事させてもらうことが多いが、例えば本部長会議とブランド推進室の会議は全く異質。ブランド推進室はブランドを担うという事もあり、なぜやるか、どうしてそうすべきかといった精神性の話も多い。ブランド推進室は性別としても女性も多いが、性質としての女性性も高いからだと思う。女性性があるかは、会議の性質に現れると思う。男性性が高い会議体だけでは、機会損失があると言うのはその通りだと思う。
女性としての働きにくさについて
千葉 女性として、ガイアックスで働く上で、働きにくさはあるか?
(皆無言、、、)
荒井 なくなってきたと思う。
野口 数年前まではママはママで、別のコミュニティという感じがあったが、今はそれがない。今はママで時短であっても、区別されている感じはしない。他のメンバーにも裁量があるし、副業もしてるし、みんな様々のため、特に女性だからとかママだからと区別されているとも感じない。
日比 働き方ではないが、意見があった時に言いづらさは感じる。男性性言語で喋れないと、成果・数字ベースで交渉しないと、話を通しずらいということはある。相手言語で喋らないと通じないし、評価されないのは、やりにくいと感じるときはある。
野口 女性性が強く、俯瞰していろんな視点で議論できる人が役員に入った場合は、経営会議の組み立ても大きく変わってくると思う。
千葉 女性区別をしているわけではなく、実力で評価した時に女性がいない。という言い方は、そもそもとても結果主義で男性性的だとは感じた。今の男性性的なグランドルールで上がってくる人しか役員にしないというのであれば、性別ではなく、女性性をもつ役員が入ることは難しいのでは無いか。
荒井 みんなの意見を聞いて、ガイアックスがホールネス、あるがままを許される組織であるかと言うと、2段階あると思った。基本的には自由にさせてもらっているが、その中でベースとして男性性に合わせていようとしている。女性らしさは見せないようにしているので、その意味では完全にありのままでは無い。
野口 自分も一緒で、プロセスを言いたい部分があっても、会社では出さない、持ち込まないようにしている。女性性の強い会議であると、議論が進展しづらいのでそれはそれで問題もあるとは感じる。
役員に女性がいないことで損していることについて
日比 施策の多様性は落ちると思う。
野口 男性だけの会議体だと全く違った方向のアイディアなどは生まれないのでは無いか。
荒井 女性性は創造性が強く、男性性は戦略性が強いと感じる。男女というより、男性性と女性性の共存ができれば、より組織としては強くなると思う。
日比 短期的な結果を求めず、長期的な結果を求められるか。弱さをきちんと出せるかは大事だと思う。
社外から女性役員を登用することについて
千葉 女性役員を社外から登用するという案がある一方で、それを行った場合現在いる社員は役員になる実力が無いと判断されたと思い、士気が下がらないのか、との懸念もあがっている。女性役員を社外から登用するということについては、どう思うか?
石山 対外的な女性活躍の指標に合わせて行く必要があるかは、確認したい。例えば、上場企業だからこそ、女性の役員比率をあげたいのか、コーポレートガバナンス的に必要だと思っているのか。
その上で、外から役員を登用することは賛成ではあるが、もしやるのであればダイバーシティにそって比率を考えた上で、行うべきだと思う。例えば外国籍やマイノリティーなども考慮し、そこに女性がいるのは良い。女性だけ登用するのは、ガイアックスぽくないし、今更感がある。
野口 社外からの登用は全く問題ない。
荒井 また、実際に機能するかどうかの方が問題であると思う。対外的なPRだけであればいいが、実際に女性役員の良さを生かすのであれば、色々内部も変更もしなくてはいけない。とはいえ、内部からは反対する人は出ないと思う。
日比 経営におけるダイバーシティの最先端を話し合い、ガイアックスとしての理想状態や目的を明確にした上で、それを推し進めて行く役員が女性であれば良いのではないか。女性比率をあげることが目的であるというなら、全く意味を持たないと思う。
荒井 女性役員の施策は、経営陣の本気度が捉えられる施策だと思う。
野口 数年前にビジョンドリブンに変わった変革期の1年間は大変だった。これに匹敵するような変化が必要だと思う。現在のガイアックスの女性メンバーが役員になったところで、現ルールに合わせて終わりだと思う。
今後の対応について
日比 無意識のジェンダーバイアスは女性が女性自身にかけている事も多いと思うため、それを知る研修は有効だと思う。また、こう言う話をする場がそもそもなかったので、継続していく事も大切だと思う。
荒井 現時点で女性が働きにくい、差別されているとの問題意識は全くないため、現女性メンバーがボトムアップで進めていくイメージがない。本気で現役員側が組織改革として女性性の活用を行いたいのかという点が重要になると思う。本気でやるのであれば協力したい。
野口 ガイアックスの事業もこれ以上大きく変わるという感じはしない。本当に大きく変革させたいのであれば、外部から全く異質、女性役員などの登用を検討しても良いのではないか。
千葉 数年、数十年後に、社員が減って会社自体はどんどん小さくなる事を目指し、そこに本当に多様な人が集まると言う意味では、役員にダイバーシティが無いところには難しいと思う。本当にそこを目指すのであれば、役員も多様化する事を行う必要があるのではないか。
これから
この座談会の数ヶ月後、議事録をとった千葉さんから「この議論を表に出そう」という話が持ち上がりました。
そして、ガイアックスのブログチームとして、何か出来ることはないかという話になり、ブログチームでもあり、現在tiny peace kitchen事業部を牽引する荒井智子さん、ガイアックスのブランディングディレクターの Natalia Davydova さんを筆頭に、社内で有志の「ジェンダーギャップ」プロジェクトが立ち上がります。
ここから、ジェンダーダイバーシティの記事をシリーズとして執筆し、ガイアックスを変革していく動きへつながっていきます。
その翌週、ガイアックスのブログチームは「投資先の経営者」へのインタビューをするため、今年上場した企業であるアディッシュ株式会社の役員である杉之原明子さんという女性へ「ジェンダーギャップ」について、質問をする機会がありました。
そうして、時を同じくしてガイアックスのブログチームとアディッシュ株式会社の杉之原さんも「女性の働き方やジェンダーギャップ」について同じ課題感を持っていたことがわかり、杉之原さんと一緒にプロジェクトが動き出します。
次回は、アディッシュ株式会社の杉之原さんがガイアックスのメンバーへ教えてくれた「ジェンダーギャップ」の実情についてお伝えします。