人生に対する意識・考え方を、“自己承認”や“社会的成功”だけに囚われない現代の若者は、どのように人生を歩み思考を巡らせているのか?
ガイアックスでは、若者達の新しいリアルで等身大の生き方をシリーズでご紹介します。
ミレニアル世代の生き方
21世紀に入り、AIや自動運転の技術は目覚しく進化を遂げました。
テスラモーターズの時価総額は一時8000億ドル(約80兆円)となり、グローバルカンパニーとして自動車業界を牽引してきたトヨタ自動車の時価総額を2021年に追い越す自体に。
テスラモーターズは、2021年8月にヒト型ロボットの開発を発表。将来的には高度なAI技術を採用し、テスラ車を運転できるようになるかもしれないと伝えられたことは記憶に新しいでしょう。
テスラモーターズが出てきた時を同じくして、ブロックチェーン技術(分散型台帳技術)の出現や、シェアリングエコノミーの台頭、インテグラル理論に基づいたティール組織論が注目され、新たな時代の転換を見せました。
この時代に20代30代として生きる世代がミレ二アル世代です。
ミレニアル世代は、1981年以降に生まれ、2000年以降に成人を迎えた世代のことを指します。
きわめて早いスピードで変化するVUCA時代(複雑系社会)を「どう生きるのか?」。
その答えの一つとして、田舎への移住が世界的に今多くのミレニアル世代のトレンドにもなっているとも言われています。
» 参考:田舎への移住が世界的トレンド? ミレニアル世代が見つけた「新しい幸せ」。(VOGUE)
ミレニアル世代以降の価値観では、いい車やいい時計を持つことへの ”条件” 的な関心よりも、「幸せである」という ”状態” への優先順位が高く、レールの上を歩むのではなく、より「幸福」に生きるにはどうしたら良いのか?と考え実行している世代なのかもしれません。
今回は、ミレニアル世代やZ世代に焦点をあてた” Woke generation”シリーズの第一弾として、ミレニアル世代でもあり、ユニークなキャリアの決断をした大木健太郎さんへお話をお聞きしました。
何を大切にし、どう生きているのか?… ” Woke generation”の「新しい生き方」のリアルに迫っていきます。
大木健太郎
2018年新卒入社。TABICAでのインターン、経理部でのアルバイト、世界一周の旅を経て、2018年4月より正式に経理部へジョイン。ガイアックスや子会社、投資先の経理を担当し、2021年5月に退職。「どう生きたいのか?」と向き合うこと・考えること。まずは自分自身が生きたい人生を生き、人の想いに貢献する人でありたい。人に、社会に、世界にどう貢献できるのか。28歳、人生の旅人、言葉の紡ぎ手。2021年10月まで農家で修行。
武内美穂さん
大木健太郎のパートナー。IT企業勤務。幸せとは何か?を知りたくて福祉系の学部へ入学し、授業とラクロス部の恩師からの学びで、「選択肢を広く持つこと、そして自分の意志で選択すること」と考える。現在勤務するIT企業での仕事は「会社員の働き方の選択肢とやりがいを増やすこと」を意識している。最近は、より自分自身の幸せと向き合い、生き方を模索中。
それぞれの選択、それぞれの生き方
今回インタビューしたのは、2016年秋にインターンとしてガイアックスにジョインし、入社後は経理部に所属していた大木健太郎さんと、パートナーの武内美穂さん。
大木さんは2021年5月にガイアックスを退職し、現在は農家に住み込みで修行生活を送っています(2021年9月時点)。
今後は地方移住を考えているというお二人は、どのように生き方のビジョンを明確にし、お互いのビジョンをすり合わせてきたのでしょうか。
お互いが自立した存在としてあること
もともと同じ大学の同じ学部に通っていたという健太郎さんと美穂さん。
当時は、すれ違えば挨拶をするくらいの仲だったそう。そんなお二人の関係は、健太郎さんが、和歌山県でワーケーションをしていた美穂さんを訪ねたことから、変化していきます。
大木 僕は6年大学に通ったんですけど、2年間は休学して、フィリピンに行ったり、日本を旅したりしてフラフラしていました。僕が社会人になった2018年の夏、たまたまFacebookで彼女が外資系IT企業で働いていて、和歌山県の白浜町でワーケーションしていることを知り、面白そうだなと思って連絡したんです。
2015年時点でB2Bのクラウドを扱っている企業を選ぶ感覚も面白いと思いましたし、単純に宿代が浮くなと(笑)。それほど親交があったわけではないのに、「行っていい?」と連絡したのがきっかけです。
武内 健太郎がフィリピンに行ったりしているのは知っていたので、フラフラしているついでに白浜にも来るんだろうなと思っていました。それを機にちょくちょく一緒にご飯を食べるようになり、2019年の5月に付き合い始めました。
印象的だったのは、付き合い始めた当初から「いずれまた海外に行きたい」と話していたという健太郎さんに対し、「やりたいことはやってほしい」と話す美穂さん。
その背景にはどのような思いがあるのでしょうか?
武内 海外に行ってしまったら寂しさは感じると思いますが、彼を束縛することは自分を束縛することにもなるので。もし私が「行かないで」と言って彼が海外へ行くことを諦めたとして、後々「あの時に美穂が行かないでって言ったから」と言われるのは絶対嫌だと思っていて。私のせいでやりたいことを諦められたら、たまったもんじゃないです(笑)
それに、私も海外に行きたいと思っていたんですよね。でも、今すぐではなくて、子どもを産んで育ててからなら行けるかなって。
大木 「海外に行くなら20年後にしない?」って美穂に提案されたんだよね。海外に行くなら元気に動けるうちに行きたいので、意外と時間はないなって思っています。
キャリアを考えることは、どう生きるかを考えること
「キャリア」という言葉は、一般的には仕事上の経歴や経験を指すことが多いですが、本来は働くことも含めた「生き方そのもの」を意味します。
個々のライフプランを大切にするカルチャーがあるガイアックスでは、メンバーが会社を辞めることに対しても、あまりネガティブな反応がないという印象があります。
実際のところはどうだったのか、お聞きしてみました。
大木 当初から「海外に行きたい」という話は社内チームの中でもしていて、部長も応援してくれていましたし、特に摩擦はありませんでした。(あくまで僕の記憶でですが笑)
コロナの影響で移動が制限されるようになってしまいましたが、オリンピックが始まる頃にはその状況も開けていくんじゃないかなと考えて、2月1日にチームのメンバーにいきなり退職する旨のメールを送ったんです。
最初は7月頃に辞めると伝えていたんですけど、しばらくは海外に行くのは難しい状況が続きそうだったこともあり、色々と考えて、やっぱり5月に退職しようと考えが変わりました。それが3月末のことです。
7月に辞めますと話した時点では、周囲は「そっかそっか」という反応でしたが、5月に早めたら「早くない?」というリアクションはありました(笑)。
退職して農家での修行を始めるという選択をした大木さん。
一方の美穂さんは、現在のお仕事を続けることにしたそう。
武内 今の仕事は私にとってチャレンジングな内容なので、すごく楽しいし、やり切りたいと思っています。今後自分がやりたいようにやっていくためにも、周囲から応援してもらえる人でありたいので、自分が価値を発揮して実績を作っていきたいです。
子どもを授かって産休に入れば、キャリアも一旦ストップしますしね。会社自体は、いつキャリアを中断して復帰したとしてもフラットに見てくれるので、そこに対する不安はあまりないですが、自分が納得いく形でひと区切りつけたいです。
とはいえ、もっと自分の感覚や気持ちに素直になるとしたら、空気や水が綺麗な所に自分の身を置きたいという気持ちも出てきました。
そこから、海外へ行くのを後にするなら、移住しようかという話に発展していきました。
相手の言葉を「待つ」というコミュニケーション
将来や生き方について選択をする時には、自分の心に素直になり、本音で語ることが大切になってくるのではないでしょうか。
「最初から本音で話していた」という健太郎さんに対し、美穂さんは、健太郎さんとのコミュニケーションの中で、徐々に自分自身の本音に意識を向け、言葉にするようになったそうです。
武内 私が本音を言えていない時は、絶対に健太郎に突っ込まれるんです(笑)。
健太郎は元から本音で話す人だったし、私の話もすごく聞いてくれるんですよ。
大事な話題の時には、私が話すのを毎回待ってくれるんです。そういう所がすごいなって思っています。
大木 人の話を聞くのって大事じゃないですか。もともと建前とかどうでもいいと思っちゃうタイプなので、上っ面から出てきた言葉は気になっちゃうんです。
本当の意味での「わからない」は、「知らない」ということなんですよ。
でも、会話の中で適当に答える「わからない」は、考えようとせずに、誤魔化したいということなんじゃないですかね。
本音じゃないことを聞いても、僕は「ん?どういうこと?」ってなっちゃいます。
本音から出た言葉なら、答えは何でもいいんですけどね。
「わからない」と言ったことも、掘っていけば何かしらあるはずなんですよね。
つい会話の中で「わからない」と言ってしまう時もあるんですけど、「今のは言い訳のやつだった!」と気がつくようになりました。
適当に答えると突っ込まれて逆にめんどくさいことになるので、僕は最初から本音を話すようになりました(笑)。
働く理由は、自分で決めていい
夏の間は農家で修行生活を送り、10〜12月は移住先を探しつつ、結婚式を挙げない代わりに二人の大切な人たちに会いに行こうと計画しているそう。
そして、それ以外はまだ何も決まっていないのだとか。
移住に関しても、色々と考えて踏み切れない人たちもいる中で、お二人は「決まっていないこと」を楽しんでいるようにも見えます。
大木 不安を感じなくはないですけど、どうにかなると思っているし、どうにかするだろうと思っていて。
いつ死ぬかわからないし、やりたいこと以外のことをする時間はないなって。
そう考えるようになったのは、休学してフィリピンに行った時の経験がきっかけになっています。
大学生の時に、自分の中に「そもそもなぜ働くのか」という疑問があって、その答えがないまま流されて就活をしていました。
でも内定は出ず、「もういいか」と半ば投げ出す気持ちでフィリピンに行きました。
現地の語学学校には、様々な理由で来ている社会人の人たちもいて、そういう人たちに「“働く”って何ですか?」と聞いて回りました。すると、みんな答えが違ったんですよね。
その時に、働く理由は自分で決めていいんだ、と気がつきました。
もう一つ、フィリピンのNGOでインターンをしているときに、そのNGOがサポートしている子どもたちにインタビューさせてもらう機会がありました。その中で「あなたは今幸せですか?」と質問してみたんです。
まだまだ開発途上国のフィリピンです。僕の予想では、満足いかない環境に対する不満などが出てくるんじゃないかと思っていたんですけど、答えは即答で「Yes」。
理由を聞くと、「家族も友達もみんな元気だから」と。その時の僕はガムシャラに生きていた感じだったんですけど、その答えを聞いて、なんか、それでいいんだよなって。
幸せはすでに自分の中にあるんだなって思いました。
「僕はこのままでいいじゃん」と思えるようになったのは、その時からですね。
≫健太郎さんのフィリピンでの経験について、詳しくはこちらをご覧ください。
武内 私は自分を見つめるトレーニングをしたことで、自分を深く信じることができるようになって、よりアグレッシブな選択ができるようになったと感じています。
移住先の人間関係とか、不安要素を考え始めたらキリがないと思うんですけど、「自分なら大丈夫」という今までの経験からくる感覚があるのと、健太郎が一緒なら平気でしょ、という思いがあります。
健太郎は私にはないものを持っているし、彼と一緒なら辛いことがあっても笑い飛ばせるかなって。そう思ったから、私はそんなに不安になったり悩んだりしないんだと思います。
「生きること」に手間をかける
社内で見かける大木さんといえば、サンダルに短パンにTシャツ姿。そして会社を辞めたかと思いきや、農家での修行を始めている。
一見すると破天荒なようにも見えますが、お話を伺っていると、とても純粋で、物事を深く考えている方だということが見えてきました。
大木 最近は先住民に興味を持っているんですけど、彼らは何かをする時に、当たり前のように後の世代のことを考えています。
「自分」だけじゃなくて、「より大きなもの」の中で生きているというか…。
食べ物があって、屋根のある家があって、先住民はそうやって生きているのに、現代人は「生きること」の根本をやっていないんじゃないかな?って。
僕がやりたいのは「生きること」なんです。
農家で修行しているのも、「農業をやりたい」というよりは、自分で食べるものを作りたいからなんですよ。
武内 健太郎と暮らすようになって、「手間をかけて生きるのは面白いな」と思うようになりました。食べ物に関しても、簡単に買って食べることができますよね。大量生産・大量消費は便利なんですけど、そんなに楽しくもなくて。
きっと自分が畑で育てたものは1万倍くらい美味しんだろうなって思っているんです。
それに、生きることに手間をかけていたら、不幸せにはならないんじゃないかな。
自分が本当は辛いと思っていることとか、違和感があることを蔑ろにして突き進んでしまうと、自殺のような社会問題にも繋がってしまうことがあると思っていて。
でも、辛いと思ったタイミングでちょっと自分に手間をかけてあげれば、そうはならないかもしれない。
「便利にしよう」ばかりではなくて、「これに手間をかけたらどうだろう?」と工夫してみる方が、人間という生き物として生きてる感じがしませんか?
大木 あと、僕は「そもそも」ということについては、かなり考えているかもしれません。「そもそもキャリアって何?」とか、「そもそも結婚って何だろう?」とか。あとは、原理原則が大事なんだろうなと思っています。
難しいことではなくて、僕はただ、「大切なことを大事にしよう」としているだけなんですよ。
お二人のストーリーを知っていただくことで、「自分にとっての大事なこと」を見つめ直すきっかけになりそうです。ありがとうございました!
インタビュー・構成 ヤマグチタツヤ
ライティング 黒岩麻衣
編集 遠藤桂視子
「自分を見つめるトレーニング」と美穂さんはお話されていましたが、自分自身の認めたくない部分や、人に見せたくない部分と向き合い、時に人に伝えることで壁を乗り越えていったそう。
お二人が表しているのは、不安や恐れを誤魔化して塗り固めたような「表面的な自信」ではなく、安心感の土台となるような「深いところから湧き上がる自信」なのだと思いました。
大木さんはご自身のnoteでも生活のことや日々考えたことなどを発信されていますので、ぜひチェックしてみてください!
自分の人生は自分で決める
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