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対話による自主自律型組織へ – すべての始まりはあのチームセッション

最終更新: 2023年9月15日

リモートワークが普及したことにより働き方が多様化したことで、誰かの指示命令ではなく、一人一人が自分のビジョンに突き動かされて自走する自主自律的な組織づくりの必要性を感じる企業も多いのではないでしょうか。フラットな組織、挑戦の邪魔をしないカルチャーのガイアックスも、自主自律的な組織づくりに取り組んでいます。今回スポットライトを当てるのは、SOCことソーシャルメディアマーケティング事業部(以下、SOC)。ガイアックスの中の1つの事業部でありながら、リモートワークやクラウドソーシングの活用といった新しい働き方に早くから取り組み、自主自律的な組織づくりを進めてきました。いち早く働き方をシフトしたSOCですが、様々な葛藤を経て現在に至っています。その過程でも、メンバーが一堂に会するミーティングの場において株式会社はぐくむの小寺さんによるチームセッションを取り入れたことは、重要なターニングポイントとなりました。今回は「組織変革物語」をテーマに、SOCが小寺さんとの関わりの中でどのようにして自主自律的な組織へと変革していったのか伺っていきます。

詳細は、『ガイアックス × はぐくむの自主自律型組織変革コンサルティング』よりご覧いただけます。

第一回「すべてはあのチームセッションから始まった」

リモートワークをはじめとした新しい働き方によって成果を出し、順風満帆に見えるSOCですが、とある出来事から「このままで良いのか?」という問いが事業部長・管さんの中に生まれました。そのタイミングで管さんと小寺さんが出会い、初めてのチームセッションが実施されました。
「すべてはあのチームセッションから始まった」とされる初回の場で何が起こったのか。当時のSOCの事業部長である管さんと、株式会社はぐくむの小寺さんに、お二人の出会いから初めてのチームセッションまでの出来事を伺いました。
管 大輔

管 大輔

ソリューション事業本部責任者

2013年新卒でガイアックスに入社。2015年9月から事業部長を務め、クラウドソーシングの活用、リモートワークの推進など働き方の多様化を積極的に進めた結果、2年間で離職率を40%から0%に、売上が5倍に成長。2019年に本部長就任。2020年に新卒採用支援サービス『オンライン就活』を立ち上げ、事業責任者を兼務。複業ではコーチング事業を展開する会社を設立し、コーチング型マネジメントの普及に注力している。2019年の9月からオランダに移住。

小寺 毅

小寺 毅

株式会社はぐくむ 代表取締役

株式会社はぐくむにて、脱・ヒエラルキー、脱・指示命令コントロール型の組織を目指す方々を対象にした経営コンサルティング事業を展開。支援実績としては、Uber、DeNA、ガイアックスなど。 コーチとしては2006年から活動。現在は企業の社長や幹部を対象に1on1コーチングやチームセッションを実施している。コーチング研修や自主自律型組織を目指す上での各種研修講師も務めている。 書籍『奇跡の経営』で知られ、『ティール』でも触れられているブラジルのセムコ社が、自社の経営スタイルを広めるために運営している「セムコスタイル・インスティチュート」。その組織の中で、日本には数人しかいない公式コンサルタントも務めている。
*参考『中断、さえぎり、自分の話……上司がついやりがちな人の可能性をつぶす12の聴き方』

数字を達成した時に喜んでいたのは僕だけだった

ーSOCが小寺さんによるチームセッションを始めたのは2017年のこと。当時の事業部はどんな状況でしたか?

管:2015年に僕がSOCの事業部長に就任してから約2年が経ったタイミングでした。2年間で業績が4~5倍に伸び、規模拡大にあたって人数も2倍以上に増えていました。リモートワークやクラウドソーシングなど、当時では新しかった働き方をSOCで取り入れて業績が伸びていたので、取材受けも良くメディアにも頻繁に出ていました。社内からも「SOCは勢いのある部署だね」とみられていたと思います。

『離職率0%で売上5倍に。26歳、最年少事業部長が疲弊したチームを完全復活させた方法』

当時の組織運営は、事業部長の僕、副部長の重枝さん、大久保さんの3人で舵をとっていました。基本的にこの3人で事業運営のミーティングを実施して事業の方向性を決めていたので、2人に対しての信頼度合いは他のメンバーとは大きく違いました。僕にとって2人の位置付けは絶対的で、他のメンバーとは分けて考えていましたね。

ー順調にみえるSOCですが、当時はどのような課題感があったのでしょうか。

ちょうど2017年に、若手エース社員が離職する出来事がありました。SOCとしても業績が伸びつつ自由な働き方を取り入れていたので、SOCの社員満足度は高いものだと思っていました。ただ、彼女が退職するタイミングで他のメンバーにもヒアリングしてみると、「事業部の運営方針が3人だけで決められていて、何が話されているのかわからない」「Aと言っていた方針がいきなりBに変わった事だけがおりてきて、自分の意見が反映されているように思えない」「自分がSOCにいる意味を感じられない」といった声が上がってきたんです。

当時はメンバーから不満が出る原因がわかりませんでした。リモートワークもOK。有休の上限も撤廃。僕がSOCの事業部長に就任してから誰一人として給与は一度も下げたことはなく、「こんなに働きやすい環境なのに、どうして辞めたり不満を持たれたりするんだろう?」というのが正直な気持ちでした。

加えて、事業運営を共にしていた重枝さんにも「数字だけを追い求める部署運営なら、近いうちにSOCを離れると思います」と言われました。当時は事業部の数字を伸ばすことばかり考えていたのですが、目標としてた売上を達成した時に喜んでいたのは僕だけ。組織の売上を伸ばそうと取り組んできたことは、実は自分だけのためだったのかもしれないと感じ始めたんです。

メンバーや重枝さんからの反応をきっかけに「このままの組織運営ではダメかもしれない」と考え始めていた時に、当時SOCの中で人事の役割を担っていたメンバーに「面白い人がいますよ」と小寺さんを紹介してもらい、一度お話を聞いてみることを決めました。

小寺 毅

「数字ではない何か」を求めた組織づくりへ

ー小寺さんに初めてお会いした時の印象を聞かせてください。

管:NagatachoGRiDの4Fの会議室前で「背が高い人だな」と思ったのが第一印象です(笑)。お話ししてみて、今までに接してこなかったタイプの方だと感じました。当時の自分は効率良くコミュニケーションを取るタイプでしたが、小寺さんはゆったりとした空気感で「間」を大事にする方。SOCに関する自分の話を真正面から受け取ってもらい、居心地の良さを感じたことを覚えています。

ー初めての打ち合わせでは、どんなことが話されましたか?

小寺:2週間後に開催が決まっていたロングミーティングに、私がファシリテーターとして入りチームセッションを行うことが決まりました。まだ信頼関係が構築できていない中で、お互いの相性が合うかどうか判断する機会を一度作りたいという点は、私もSOCの方々も共通して思っていました。タイミングよく控えていたロングミーティングで、一度自分の場作りを体感してもらった上で、継続して関わらせてもらうかを判断していただくことになりました。

ー小寺さんにファシリテーションをお願いした決め手は何でしたか。

管:それまでのロングミーティングは「普段のミーティングの延長線上のもの」という意識で実施していました。ミーティングの中身も、普段の戦略をブラッシュアップするために密なコミュニケーションをとることばかり。緊急ではないが重要なことを話す時間というよりは、普段のミーティングよりも時間が長いだけという感覚でした。

小寺さんの言葉で強く覚えているのは、チームセッションではチーム内の信頼関係の土壌を整えることにも時間を使うということ。今までミーティングのテーマは、基本的にチームのビジョンや戦略にしていた僕にとっては大きな発見でした。SOC内での不満の声を受けて組織づくりを考え直していたのもあり、小寺さんの言葉にどこか期待感を抱いたんです。「数字ではない何かを大切にした組織づくり」を進めていくために、一度小寺さんに場作りをお願いしてみようと思い、ファシリテーションをお願いすることに決めました。

小寺 毅

用意していたシナリオを手放すことから始めた

ーチームセッション当日を迎えるまでにどんな準備をしたのでしょうか。

小寺:依頼を受けて、チームセッションの実施の仕方について管さんとやりとりを始めたのですが、程なくしてミーティングのタイムラインとスクリプトをお送りいただきました。話す内容が細かく記載されていて、どの内容も筋が通っている。「これを上司に言われたらNoと言える余地はない」という内容だったことを覚えています。凄腕のマネージャーさんであることが一瞬で伝わる資料だったので、率直に「すごい!」と思いました。

管:当初は経営陣が考えたミッション・ビジョン・バリューをSOCのメンバーに対して1日かけて浸透させることを目的としていました。内容も事前に経営陣で考えた上で、外部のコピーライターの方に依頼してカッコいい言葉に仕上げてもらっていました。ミッションをつくった背景や、メンバーに感じて欲しいことまで細かく準備して、みんなでディスカッションしてメンバーに同意してもらうシナリオまで事前に組み立てていました。「このビジョンどうかな?」と相談するというより、「これに納得してね」と思っていましたね。

当時の僕は、SOCのメンバーは事業の方針にそこまで興味がないだろう、ミッション・ビジョン・バリューは難しくて意見が出てこないだろうと思っていました。とはいえ、せっかく時間をいただくのだから、ミーティングの主催者である僕が目的をきちんと明確にして準備をして、ミッション・ビジョン・バリューが浸透しきる時間にする必要がある。だから「納得してもらう」という方針でミーティングを設計することに悪気は全くありませんでした。

ー管さんの資料には、どのようにコメントしたのでしょうか。

小寺:ご共有いただいた資料は、ビジネスパーソンとしての管さんの実力を感じるものでした。ただ、管さん自身がこれまでとは違った組織づくりを模索していきたいとの意向だったので、当初の計画通りにミーティングを行うのは勿体ないと思ったんです。パフォーマンスだけに重きを置くのではなく、SOCのメンバーがクリエイティビティを存分に発揮するための関係性を作るためにも、まずはSOC内に余白を作る必要があると感じました。まずは管さん自身が何かを手放したり委ねたりすることに慣れていただきたいと思い、「ご用意いただたタイムテーブルやミッション・ビジョン・バリューは一旦白紙にしていただけますか?」とお伝えしました。

ーお金と時間を費やした資料が一瞬で白紙になる。不安は感じなかったのでしょうか。

管:タイムスケジュールも話す内容も、外部のコピーライターの方にお金をお支払いして作成したミッション・ビジョン・バリューも白紙になった。チームセッション前から不安を感じたのは確かですが、それ以上に得るものがあると信じて受け入れました。

小寺:白紙にすることをOKと言っていただけたので、ミーティングの準備の段階から手放すことにトライできました。管さん自身が今までとは違った組織運営をしていく気持ちがあったからこそ、できたことだと思っています。

管 大輔

こんなにも楽しそうなメンバーの表情は初めて見た

ーそんな中、迎えたチームセッション当日。どんな場作りを意識されましたか。

小寺:チームセッション当日は、場にいる一人一人に話す時間があり、いろんな人の組み合わせで話してもらうことを意識していました。これまでのSOCの状況を聞く中で、ミーティングで話す人が限定的で、聞いている時間が長いメンバーの方が多いと想定していたんです。まずはどんな人でも話しやすいテーマから始まり、場が温まってきたタイミングで事業について各々が感じていることをシェアしてもらう。とにかく聞いている時間よりも自分が意見を出している時間が増える場作りを心がけました。

管:今までのミーティングと大きく違った点は、メンバー間の分断がなかったことだと思っています。今までは「経営陣とそれ以外のメンバー」「話す人とそれを聞く人」と明確に線引きされていました。ミーティングのファシリテーションを小寺さんにお願いしたことで、経営陣も一人の参加者としてミーティングの場にいることができました。メンバー全員がフラットな関係性になった上で話すことができたと思っています。

ーチームセッションの場で、お二人は何を感じていましたか?

管:「誰にもコントロールされていない場所は、こんなにも話しやすくて楽しいんだ」と思いました。自分が場をファシリテーションしてしまうと、「この方向に持っていきたい」という気持ちが出てしまい、ミーティングの場をコントロールしてしまうことがあったと思います。小寺さんの場づくりを体感して、今までの自分のミーティングでの振る舞いを少し反省しました。メンバーのことを全然信じられていなかったなと…。

それまでのミーティングでは議論には入らずに、「みんなで話してね」と全体を俯瞰して見ていることがほとんどでした。ただ、この時はファシリテーションを小寺さんにお願いしたことで、一人の参加者として話すこともでき、僕自身も楽しかったですし、周りのメンバーが楽しく話している姿を見て嬉しくなりました。

加えて、「メンバーは事業に対して意見を持っていない」というのは僕の思い込みだと気づきました。自分がファシリテーションをしないだけで、メンバーからこんなにもたくさんに意見が出るのかと。「メンバーに委ねていくとはこういうことか」と最初のチームセッションで強く感じましたね。

小寺:私はSOCというチームがエネルギッシュで、前向きなチームだと感じました。コントロールを手放していったことで、今までとは違ったコミュニケーションをメンバーの方々に体感していただき、メンバーそれぞれのエネルギーがチーム内に現れ始めたと考えていました。SOCには自主自律的な方向性で組織を作るための素養があると確信できたのが初回のミーティングのハイライトですね。

管さん自身も一人の参加者としてミーティングの場にいていただいたことで、ビジネスパーソンではなく「人間としての管さん」をミーティングの場にいた人たちが感じられたことも大きなポイントだと思っています。役割の仮面を外して人間らしさが溢れた先に、一人一人が生き生きとしてくる。そこから自主自律的なチーム作りが始まっていくと考えています。ミーティングやその後の飲み会を通じて、管さんをはじめSOCのメンバーの人間らしさを1日を通じて感じることができました。

管:結論が見えないテーマを設定することでメンバーからも多種多様なアイディアが出てきたので、「結論が決まっていない議論は、こんなにも楽しいのか」と思いました。ファシリテーションをお願いして、タイムラインも話す内容もすべて白紙にして本当によかったです。お金を払ってまでファシリテーションのプロに依頼したことで、自分の中でも踏ん切りがついてコントロールを手放すことができました。自分だけでは、間違いなくあの場は作れなかったです。

おわりに

初回のチームセッションを経て、手放したり委ねたりすることを体感し始めたSOC。普段の業務に戻り、いざ実際にアクションを起こしていく際に、様々な難しさを感じ始めます。その中で事業部長・管さんと、事業副部長・重枝さんとの間では激烈な議論が繰り広げられたようです。SOCがいくつもの葛藤を経て、自主自律的な組織へと変革していく様子をお伺いしていきます。

インタビュー ライティング 宇田川寛和

小寺毅×ガイアックス 対話型組織の経営論

小寺毅×ガイアックス 対話型組織の経営論

株式会社はぐくむ代表取締役の小寺毅さんが、
【コーチング / 自律的組織 / リーダーシップ】 などについて語り合います。

\#20『そのオフサイトミーティング、イケてますか?』/
チームセッションをより良いものにし、コミュニケーションの質を高めるためのポイントをお話しいただきました。
https://youtu.be/cJDuyXqpnq8

編集後記
お金と費用をかけて準備したものを白紙にして手放したことには、インタビューをした私自身も驚きました。管さん自身が初回のチームセッションから手放すことにトライしたことが強く伝わってきています。次回以降、SOCがどのように葛藤し変化していったのか伺うことが楽しみです。

自主自立型組織物語〜ソーシャルメディアマーケティング事業部〜
1. 対話による自主自律型組織へ – すべての始まりはあのチームセッション
2. “本音を話せる土壌”が組織にもたらした、深い相互理解という宝物
3. 「仕事だけの関係性」では自律型組織は育まれない〜森のリトリートが起こした組織変容とは〜
4. 緊迫感の漂う”本音”のフィードバック。激烈な会話がもたらした「自由と秩序」の共存
5. リーダー交代でも揺るがない。対話を通じて育まれた自律性 ~計画からの逆算ではなく、人をベースに組織を作る〜
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