こんにちは!Gaiax Bardsの千葉憲子です。
ソーシャルビジネス経営者合宿「こころざし」のティール組織に関するセッションに、当社代表執行役社長 の上田さんが登壇の機会をいただきました。こちらのセッションの様子を、全3回に亘りご紹介させていただきます。
第1回テーマはズバリ、「ティール組織とは?」。
600ページにものぼる本をのエッセンスを、昔当社のインターンだった嘉村さんが、とても簡潔にお話されています!これを読めば5分でティール組織がわかる!かも。
2019年7月27日、新公益連盟様が主催するソーシャルビジネス経営者合宿「こころざし」が開催されました。毎年夏に行われるこの合宿では、参加者のみなさんが経営者だからこその悩みを共有し、新公連コミュニティ内外の関係構築、社会課題事業が生まれる場、そして「コレクティブ・インパクト」の構想が生まれる場となっています。
こちらの合宿でガイアックスの上田が登壇の機会をいただきました、ティール組織に関するセッションの様子を、新公益連盟様のご厚意によりご紹介させていただきます。
宮城 治男 NPO法人ETIC. 代表理事
早大在学中の1993年、学生起業家支援の全国ネットワーク組織として創設。
若い世代が自ら社会に働きかけ、仕事を生み出していく起業家型リーダーの育成に取り組み、1500名以上の起業家を支援。97年より中小・ベンチャー企業やNPOに学生が参画する長期実践型インターンシッププログラムを事業化。
2001年ETIC.ソーシャルベンチャーセンターを設立し、社会起業家育成のための支援をスタート。日本初の社会起業ビジネスプランコンテストSTYLE、社会起業塾イニシアティブ等を手がける。
04年からは、地域における人材育成支援のチャレンジ・コミュニティ・プロジェクトを開始。現在全国70地域に広がる。
11年から震災復興支援に注力し、右腕プログラムでは東北のプロジェクトリーダーのもとに250名のスタッフを送り込み、コミュニティ再生、産業復興等の支援に取り組む。
宮城 「ティール組織」という書籍が、世界中でベストセラーになっています。特に日本は世界で最も売れている国なのですが、それには理由があるのではないかと思っています。
そこで今回は本書籍の解説を担当された嘉村さんと、実際にティール組織のような個人が活躍する企業を経営されているガイアックスの上田さんをお招きし、事例をベースに「これからの新しい組織・強い組織の在り方」について掘り下げていきたいと思います。
そもそも「ティール組織」とは?
宮城 日本でこのティール組織を語ると言ったらこの方以外にいらっしゃいません!まず、第一任者の嘉村さんに「ティール組織」とは?というお話をいただきたいと思います。
嘉村 嘉村賢州です。実はほぼ20年前に、ガイアックスでインターンしていた時期があり、今回対談で上田さんとご一緒できるとは、すごいご縁があるなと思っています!では、600ページの本の内容を簡単にご説明したいと思います。
嘉村 賢州 場づくりの専門集団NPO法人場とつながりラボhome’s vi 代表理事
東京工業大学リーダーシップ教育院 特任准教授、「ティール組織(英治出版)」解説者
集団から大規模組織にいたるまで、人が集うときに生まれる対立・しがらみを化学反応に変えるための知恵を研究・実践。研究領域は紛争解決の技術、心理学、脳科学、先住民の教えなど多岐にわたり、国内外問わず研究を続けている。実践現場は、まちづくりや教育などの非営利分野や、営利組織における組織開発やイノベーション支援など、分野を問わず展開し、ファシリテーターとして年に100回以上のワークショップを行っている。2015年に1年間、仕事を休み世界を旅する。その中で新しい組織論の概念「ティール組織」と出会い、日本で組織や社会の進化をテーマに実践型の学びのコミュニティ「オグラボ(ORG LAB)」を設立、現在に至る。
嘉村 ティール組織は、元々ベルギー人のフレデリック・ラルーさんという人が提唱した理論です。彼は元マッキンゼーのコンサルタントで、その後独立して社長向けにコーチングをやっていたのですが、その時にある違和感を覚えます。それは「社長がことごとく幸せそうじゃない。」というものでした。みなさんすごくビジョナリーで、情熱的で、仲間を大事にしている方がほとんどなのに、いつのまにか”べき論”を振りかざすようになり、何か恐れを隠しているようだ。っと。反面、従業員の側から見てもほとんどの従業員がやりがいをもって働けていない。「社長も従業員もともに幸せじゃない、この経済社会ってどうなってるんだ。」というのが元々覚えた違和感であり、スタートラインだったんです。
彼がいろんな文献を漁っていくと、どうも様々な分野や時代で「メタファー(隠喩)」というものが、あると気づきます。例えば、こういう勉強会に集まってくる時に、「新しい知識をインプットする」って言いますよね?「インプット」っていう言葉は機械に対して使われる言葉で、こういう言い回しをするということは、機械のメタファーが人間社会に応用されているというわけです。その様な遍歴の中で、最新のテーマに共通するメタファーが「生命体」だったんですね。
そして、組織の中にも「生命体のような組織」があるのかもしれない、という仮説が生まれます。そこでラルーさんは経営者の仲間に「Extraordinary – 変わった経営をしてる組織を教えて欲しい。」と聞いて回ります。その結果、世界中に今までの常識とは全く違うやり方で経営をしていて、社員がすごく生き生きと輝いていて、お客さんや地域にすごく愛されていて、しかも給料が既存の組織よりも時によっては高い、という組織が複数見つかりました。各社、お互いの存在も知らなければ、一緒のところから学んでいるわけでもなく、たまたまたどり着いたその今のスタイルが極めて似ている。その共通点を書いたのが「ティール組織」です。
本には主に二つのことしか書かれていません。一つは歴史について。もう一つは三つの特徴についてです。
ティール組織の歴史 〜5段階の組織形態〜
嘉村 ティール組織では、時代とともに進化する組織形態を、5段階の色に例えています。
●力による支配、原始的な組織「レッド」
レッドの組織は一番原始的な組織で、簡単に言うと「言うことを聞かなかったら殴るぞ、殺すぞ。」という世界観、脅して人を動かせる組織です。これは短期的に物事を動かすことができ、一番単純で一番古い組織形態です。
●厳格なヒエラルキーが存在し、長期的視点をもったの組織「アンバー(こはく色)」
アンバーの組織では、上意下達で、指示命令系統ができ、業務プロセスを明確にします。階級的ヒエラルキーに基づく役割分担があり、多人数を統率することが可能です。
ただ競争相手がいない時代は良かったのですが、いち早く成長しないと負けてしまうという時代になると、多角的マネージメントが必要になります。そこで生まれたのが、オレンジの組織です。
●成長スピードや生産性、実力主義が求められる組織「オレンジ」
オレンジの組織では、時間当たりの生産量を測る時代になってきます。いろんなデータが集積され、それにより様々な経営論、組織論が発明されます。その中でも最大の発明が、「実力主義・能力主義」です。これにより、「頑張れば頑張るほど、上に行ける」という仕組みにより、労働者は競い合い、それにより飛躍的に生産性が高まっていきます。
ただ、オレンジにも弊害がありました。競争に負けた人は、モチベーションを失ってしまします。また、上層部がトップダウンで経営している時は良かったのですが、現場からボトムアップで意見が上がる様になった時、オレンジは承認プロセスがとても多いため伝言ゲームとなり、なかなか変化をキャッチできないということが発生しました。何よりオレンジは「機械」のパラダイムなので、人をパーツで見がちです。スキルで採用して、スキルで部署へ配属するため、本人の意見は考慮されません。人生の大半を過ごす職場で、本当にそれで幸せなのか。という虚無感に陥ってくる人が出てきました。
●多様性を尊重する組織「グリーン」
そこで現れたのが、グリーンの組織です。グリーンの組織では、従業員をキャストやメンバー、パートナーと呼び、お互いをニックネームで呼び合ったりします。一緒に働く仲間、家族だ。という様に捉えます。アイデアがあった時、階層構造に承認プロセスを流すのではなく、話し合いで決めるという価値観を持ち、合宿や対話、議論が多く、これらによりメンバーの組織へのコミットメントが高まっていくというのが特徴です。
ただグリーンには、二つ矛盾があります。一つ目は、多様な価値観を大切にするため、「船頭多くして船山に登る」現象が起こるんです。議論に時間を費やしても、結局何も決まらない。何も進まない。ということがあります。 二つ目は、とはいえ緩く階層構造が残っているため、日毎から経営的に情報に触れ、判断している社長やリーダーにとって、メンバーが切磋琢磨して考えたアイディアが緩く見える。そしてせっかくの結論を社長やリーダーが「ちゃぶ台返し」してしまうのです。
●これからの時代における生命体型の組織「ティール」
そして、新たに生まれたのが、ティールの組織です。既に上下関係は完全に手放して、一人一人が自由に意思決定できるのに、信頼をベースにつながっている。そして集団としてのインパクトも残している。まさに、生命体のような組織です。
ティール組織の特徴 〜3つのブレイクスルー(突破口)〜
嘉村 では、「ティール組織」にはどんな特徴があるのかを、三つお話ししたいと思います。
●セルフマネジメント(自主経営)
一つ目は、「自主経営」です。これは、ヒエラルキーの意識を手放し、一人一人が意思決定できるフラットに近い組織構造を持つことです。自分を認識して自分でコントロールできる人が多いという意味ではありません。実は自然界は、ほとんどそうなんですね。例えば渡り鳥の群は、遠距離を飛ぶ時に先頭に飛ぶ鳥はいますが、次から次へと先頭が入れ替わりながら飛んでいきます。そこにヒエラルキーはありません。
また、ティール組織では、意思決定の方法がその他の組織とは大きく違うと言われています。レッド〜グリーンの組織の意思決定の方法は、「上司に承認をもらうか」、「会議にかけるか」のおおよそ二つです。しかし、ティール組織では、この二つはほとんど使われていません。
代わりに使われているのが「助言プロセス」というものです。助言プロセスとは、全ての物事について、全員が自身で決める権利があり、誰かに承認をもらう必要もない。ただその前に、専門性の高い人や、自分の意思決定に影響を受けそうな人にアドバイスを求め、アドバイスが帰ってきたら真摯に配慮しなければいけない。というものです。これを実現するためには、経営情報が完全に透明化していないと絶対に叶いません。
●ホールネス(全体性)
二つ目は、「全体性」です。これは、一人一人の心の鎧を解き、安心安全な職場をり作り出すことです。多くの組織では、せっかく人間として生まれてきたことの素晴らしさが、全く使われていないんじゃないか。とラルーさんは言っています。
例えば、オフィスに電子レンジはあるがキッチンがないというところは多くありませんか?明らかに職場というのは、効率的に物事を処理する場所になっているのです。また、例えば感情を出して仕事をすることは、タブーとされていませんか?実は感情というのは、その人がその人らしく働けていないセンサーです。本来はそこを探検していくとその人のパフォーマンスが最も発揮できることが眠っているかもしれないのに、多くの組織ではそこを我慢しないといけないという、心を閉じてしまった状態になってしまっています。
●エボリューショナリー・パーパス(存在目的)
三つ目は、「存在目的」です。ティール組織では、3年〜5年の中長期期計画を作っている組織がほとんどありません。多くの組織は、メンバー全員がその瞬間その瞬間に耳を澄まして、どんどん新しいことにチャレンジして、事業内容や組織形態を柔軟に変えています。これは決して未来を見据えていないということではなく、別の言い方をすると、中長期計画をがっちり固めてから行動するのではなく、20年先を見ているからこそ、今に集中しているいるのです。
この三つが全部揃っているという組織はまだ世界的に見ても少ないのですが、概ねこの三つの特徴を備えています。
宮城 ありがとうございます。僕はこの本が分厚いと聞いて、これはさすがに売れないんじゃないかと思ってました(笑)。でも7万部も売れちゃったんですよね。しかも世界で日本が一番売れてるらしいと!何にもキャッチーなこと書いてないじゃないにも関わらず、こんなに売れているというのは、ある意味潜在的に日本の社会が求めていたスタイルで、変化の激しい時代差し掛かり、それを求める人が増えたからなんじゃないかなと思いました。