昨今では、海外のみならず国内でもシェアリングエコノミー事業が急激に拡大してきました。CMや各種メディアで取り上げられる機会も増え、シェアリングエコノミーに関心を持つ人が増えてきたように感じます。
この記事を書いているガイアックスは、自らシェアリングエコノミーのプラットフォーマーとして事業を行うとともに、プラットフォーマー向けに支援をするサービスを提供しています。また、仲間であるシェアリングエコノミーのプラットフォーム企業とともに、シェアリングエコノミー協会の設立や運営を行っています。
そんなガイアックスが、本記事ではシェアリングエコノミーの概要からメリット・デメリットまで詳しく解説していきます。
- シェアリングエコノミーについて詳しく知りたい
- 提供者・利用者の立場からメリットやデメリットを教えて欲しい
- 実際にシェアリングエコノミーにはどのようなサービスがあるのか気になる
このような内容に関して知れる記事となっています。
なお、「シェアリングエコノミー」についてまだ言葉の意味がわからないという方は、「シェアリングエコノミーとは?その意味から伸びている背景、事例についてまとめました」もあわせてご覧ください。
シェアリングエコノミーが注目を浴びている背景
シェアリングエコノミーとは、消費者同士でサービスを提供し合う新たな形式の経済活動を指します。
従来までは、企業から消費者に向けてサービスを提供するBtoCや企業から企業にサービスを提供するBtoBのビジネスモデルが一般的でした。しかし、シェアリングエコノミーの登場によって、消費者間(CtoC)で気軽に取引できるようになったのです。
シェアリングエコノミーは、「モノ・場所(スペース)・スキル・時間」などのあらゆるサービスを個人間で共有するというイメージになります。具体的には、自宅にゲストを宿泊させたり、車を共同所有したりなど、現代ではインターネットを通じて日常的にシェアリングエコノミーが行われています。
シェアリングエコノミーが注目を浴びている背景には、主に2つの理由が考えられます。
- 価値観の変化
- インターネットの普及
1950年代の戦後における経済復興の時代では、人の幸福と所有物の間には相関関係がありました。モノが不足している時代背景もあり、「所有」に対する欲求が強く、モノを多く所有している人ほど幸福であるといった価値観が主流だったのです。
一方で、戦後に比べて現代では、多くのモノや情報であふれているため「所有」に対する欲望が薄れてきました。「モノを所有する幸福」よりも、人とのつながりやストレスフリーな暮らしなど「心の豊かさ」を重視する価値観へと変化したことが、シェアリングエコノミーが注目を浴びる要因になったと考えられるでしょう。
また、インターネットの普及によって、個人間でもあらゆる取引が低コストかつ迅速に行えるようになったことも背景として挙げられます。時間や場所に縛られることなく、手元のスマホで手軽にサービスが利用できることから、多くの人が利用するようになりました。
資本主義とシェアリングエコノミーの関係について気になる方は、「LEADER INSIGHT – シェアリングエコノミー」からも詳細をご覧いただけます。
シェアリングエコノミーのメリット
シェアリングエコノミーのメリットは、主に下記の3つが挙げられます。
- 個人が所有する資産をサービスとして提供できる
- 新たな消費が促進され経済効果が高まる
- 利用者は格安で使用でき、提供者は初期費用がほぼかからない
それぞれのメリットを詳しく解説します。
個人が所有する資産をサービスとして提供できる
シェアリングエコノミーのメリットとして、所有物に新たな価値を付与できる点が挙げられます。
使用頻度の少ないモノ(自動車や部屋など)を必要としている人にシェアすることで、資産としての新たな価値を付与できるでしょう。また、モノだけでなく自分の時間やスキルなどの無形資産を有効活用できる点もシェアリングエコノミーの大きな特徴です。逆にサービス利用者は、必要なスキルを必要な量だけ購入し、利用することができます。
このように、シェアリングエコノミーを利用すれば、今まで活用しきれなかった資産に新たな価値を見出し、サービスとして提供できるでしょう。
新たな消費が促進され経済効果が高まる
シェアリングエコノミーを利用する人が増えれば、更なる消費が促進されるため、経済効果の向上が期待できます。
実際にカーシェアや民泊などのシェアサービスが普及したことで、従来よりも消費活動が活発になったとの声も上がっています。
金銭面でのハードルが高く利用しづらかったサービスでも、シェアという形でならコストを抑えつつ気軽に楽しめるでしょう。サービスを利用する人が増えれば、消費活動が活発になり経済発展につながります。
格安で使用でき、初期費用もほぼかからない
シェアリングエコノミーの特徴として、資産としての新たな価値を付与できるという点が挙げられます。
所有しているけど最近使っていない車や部屋などを商品としてシェアすることで、不要なモノでも資産としての新たな価値を付けることが可能です。
もちろん、モノに限らず自分の暇な時間や生かしきれていない資格やスキルを、必要としている人にシェアすることで新たな価値が生まれ、対価として新たな収入を得ることもできます。
シェアリングエコノミーのデメリット
続いて、シェアリングエコノミーのデメリットについて、利用者と提供者の両側面から解説します。
シェアリングエコノミーの利用者のデメリット
シェアリングエコノミーを利用する立場のデメリットは、主に下記の5つが考えられます。
- 提供者の信頼性が少ない
- トラブル発生時に責任を問われる可能性がある
- 提供者によってサービスの質が異なる
- 赤の他人と一緒にサービスを使うことへの不安
- 法的にグレーゾーンのサービスがある
これらのデメリットを事前に把握しておくことで、実際にシェアリングエコノミーを利用する際にギャップが生まれにくくなります。
それでは、各デメリットについて詳しく解説していきます。
提供者の信頼性が少ない
シェアリングエコノミーでは、個人の所有物を気軽にシェアできるメリットはありますが、一方で提供者の信頼性が少ない点がデメリットとして挙げられます。
企業や事業者とは違って個人同士のやり取りが基本となるため、情報が開示されていないことが多いです。実際に利用する際は、「必要な情報が開示されているか」「評価数は適切かどうか」を確認して、信頼できると判断した場合のみ利用するといいでしょう。
トラブル発生時に責任を問われる可能性がある
シェアリングエコノミーでは、盗難や物損などのリスクがあり、トラブルが発生した際に責任の所在が曖昧になる場合があります。
シェアリングエコノミーの強みは、個人でも手軽にサービスを提供できることです。しかし、手軽さゆえにトラブルが発生した際の対応が明確化されておらず、提供者と利用者との間で争いになる可能性も十分に考えられます。
例えば、提供者から借りたモノを使用中に壊してしまった場合は、利用者に責任が問われるでしょう。一方で、借りたモノが最初から壊れていた場合、利用者がそれを証明する手段がないと利用者側の責任にされてしまう可能性もあるのです。
シェアリングエコノミーでは、個人同士の取引がメインとなるため、お互いの「信頼関係」に依存しがちですが、利用する際はきちんと責任の所在も確認するようにしましょう。
提供者によってサービスの質が異なる
シェアリングエコノミーでは、企業や事業者がサービスを提供しているわけではないため、提供者によってはサービスの質が低い可能性があります。
事前に口コミや評判を確認するなどの対策はできますが、毎回同じクオリティのサービスが提供できるとは限らないため注意が必要です。特に、Uberなどの相乗りで移動できるサービスを利用する際は、運転手の経験値や技術がそのまま事故に直結する可能性も考えられます。
シェアリングエコノミーを利用する際は、提供者によってサービスの質が異なることを前提に、あらかじめ入念に情報を確認しておくといいでしょう。
赤の他人と一緒にサービスを使うことへの不安
シェアリングエコノミーでは、赤の他人と一緒にサービスを使うことに抵抗を感じる人も少なくありません。
提供者の情報は事前に確認できますが、実際に会ってみないとなかなかイメージしにくいですよね。特に、女性の方は相手がどのような人かわからないまま会うのは不安に感じるのではないでしょうか。
法的にグレーゾーンのサービスがある
実はシェアリングエコノミーの中には、法的にグレーゾーンのサービスが存在します。
例えば、シェアリングエコノミーの王道である民泊や個人自動車の活用なども、以前は法律に違反するのではないかとの議論がなされていました。理由としては、宿泊料を受けて人を宿泊させたり、料金を徴収して自家用車で他人を送迎したりする際は、専用の免許が必要とされていたからです。
現在では一部法律が改正されたため上記のサービスは利用可能ですが、シェアリングエコノミーの中にはグレーゾーンで法整備が追いついていないサービスもあるので、利用する際は細心の注意が必要です。
シェアリングエコノミーの提供者のデメリット
シェアリングエコノミーを提供する立場のデメリットは、主に下記の3つが考えられます。
- 利用者によってサービス利用のマナーが異なる
- 利用者が事故を起こせば精神的ダメージになる
- 既存のサービスからクレームを言われる可能性がある
それぞれのデメリットを詳しく解説していきます。
利用者によってサービス利用のマナーが異なる
シェアリングエコノミーの利用者に限ったことではありませんが、提供する際は利用者のマナーやモラルは考慮しておく必要があります。
シェアリングエコノミーでは、個人同士のやり取りになるため、利用者のマナーの悪さが目立ちやすい傾向にあるでしょう。実際に、民泊の現場では禁煙部屋での喫煙や、ゴミ捨てのマナーの悪さ、備品の窃盗など、さまざまな問題が発生しています。
シェアリングエコノミーは、双方の「信頼関係」が大前提です。長い目で見れば、サイトの中で評価制度がより確立されるかもしれません。
しかし、現状ではマナーが悪かったり、アカウントを作成し直す人もいるかもしれません。
利用者が事故を起こせば精神的ダメージになる
提供者側のデメリットとして、万が一利用者が事故を起こした場合に、精神的なダメージを受ける点が挙げられます。
例えば、もしあなたが車を貸し出すサービスを提供していたとして、利用者が大きな事故を起こしてしまったら、自分は悪くなくても多少の罪悪感は残るはずです。
既存のサービスからクレームを言われる可能性がある
シェアリングエコノミーは既存のサービスと競合する場合が多く、クレームを受ける可能性があります。
具体的には、「民泊×ホテル業界」「Uber×タクシー業界」などが挙げられるでしょう。
シェアリングエコノミーの台頭によって、既存サービスの利益が減少することが懸念されているため、自分が提供者側になることでトラブルに巻き込まれる危険性も考えられます。
安全にシェアリングエコノミーを利用するポイント
ここからは、シェアリングエコノミーを安全に利用するために大切な3つのポイントをご紹介します。
提供者と利用者の情報を確認しておく
難しいところではありますが、できる範囲でシェアリングエコノミーを利用する際は、事前に相手の情報を確認しておくことが大切です。
特に、ユーザーからの口コミや評価はきちんとチェックしておくといいでしょう。評価が低い場合やコメントの内容が悪い場合は、利用を控えることで未然にトラブルを回避できます。
また、マイナンバーカードの読み取りによる公的個人認証を用いた本人確認が実現できるツールを利用するのも解決策の一つになるでしょう。
TRUSTDOCKでは、eKYC身分証アプリにて、マイナンバーカードをスマートフォンで読み取り、公的個人認証を用いることで本人確認を完了する、フルデジタルの本人確認手法を提供しています。これにより、パソコンやカードリーダーがなくても、スマホ1台で公的個人認証を利用することが可能です。
(*1) eKYCとは、『electronic Know Your Customer』の略です。もともと「KYC」という言葉自体は銀行口座開設などで必要になる本人確認手続きの総称として使われており、その言葉に「electronic」が付くことによって、「電子(オンライン)での本人確認」という意味になります。詳しくは、「公的個人認証を用いたeKYC「ワ」について」をご覧ください。
また、このeKYCについては、株式会社タイミーの小川嶺代表、日本経済新聞社の村山恵一氏、eKYCの専門機関である株式会社TRUSTDOCKの千葉孝浩代表を迎え弊社代表上田をファシリテーターにシェアサミット2020にて議論がもたれました。
「次世代日本 「信用評価」の未来 ー SHARE SUMMIT2020 Co-Society ガイアックスCEO 上田祐司 登壇レポート Vol.2」より、お話しいただいたセッションの様子をご覧いただけます。
サービス利用開始前に保険に入っておく
シェアリングエコノミーを利用する際は、念の為に保険に加入するという方法もあります。
総務省「社会課題解決のための新たなICTサービス・技術への人々の意識に関する調査研究」(平成27年)によると、海外・国内のシェアリングエコノミー型サービスを利用したくないと回答した人の過半数は、「事故やトラブル時の対応に不安があるから」という理由でした。
こうした背景から、シェアリングエコノミー分野では、提供者・利用者ともに安心して取引できるよう、保険の見直しが行われています。
三井住友海上が提供している、シェアリングビジネスに関わるさまざまな賠償を補償する専用保険「シェアエコプロテクター」もその一つです。
ガイアックスの出資先であり、インターネットモニタリング、ネットいじめ対策、ソーシャルアプリのカスタマーサポート事業等を展開するアディッシュ株式会社は、三井住友海上と協業し、万一事故が発生した際に、365日スマートフォン等から事故受付を完結できるシステムを構築しています。詳しくは、「シェアエコプロテクターについて」をご覧ください。
怪しいと思ったサービスは利用しない
シェアリングエコノミーの安全性に関して「法律的に問題ないのか否か」について語られることが多いですが、「サービスの提供者が信頼できる人物なのかどうか」も大切な要素と言えるでしょう。
シェアリングエコノミーの領域では、法律的にグレーとされているサービスや怪しい提供者が混在していることがあります。そこで、少しでも怪しいと感じたサービスは利用しないようにしましょう。
また、可視化が困難な「安全性」に関して、ユーザーからの口コミや評価に加えて「認証マーク」も参考にすることをおすすめします。
認証マークとは、シェアリングエコノミー協会が設定した自主ルールに適合していることを認められたサービスに付与されるマークです。審査基準として、「登録事項」「利用規約」「サービスの質の誤解を減じる事前措置」「サービスの事後評価」「相談窓口及びトラブル防止」「情報セキュリティ」の6項目が設けられています。詳しくは、「シェアリングエコノミー認証マークがついにスタートした」をご覧ください。
シェアリングエコノミーのサービス事例
最後に、ガイアックスから発足したシェアリングエコノミーのサービス事例をご紹介します。本記事で紹介するサービス事例は、主に下記の3つです。
- notteco
- aini
- Nagatacho GRiD
notteco
nottecoとは、日本最大の相乗りマッチングサービスです。
同じ目的地、同じ趣味の人の車とマッチングして相乗りすることで、楽しい時間や新しい出会いを提供しています。また、ガソリン代や高速代などの実費を搭乗者とワリカンできるため、コスト削減につながります。
詳しくは、「notteco 公式サイト」をご覧ください。
aini
ainiは、「人と人をつなぎ、夢中で満たす」をミッションに、好きなことをテーマにした体験が集まるプラットフォームです。オンライン・オフラインで参加できる体験がシェアされています。
体験の内容だけでなく、出会いそのものが価値になり、コミュニティの形成に発展するようなサービスを目指します。
詳しくは、「aini(アイニ)」をご覧ください。
Nagatacho GRiD
ガイアックスでは、東京都永田町にてシェアオフィス「Nagatacho GRiD」を運営しています。
Nagatacho GRiDでは、「空間」をシェアしており、席単位の月額支払いだけで個室や固定席をオフィスとして利用できます。月6万円からで固定席を利用できるので、ITスタートアップなどにおすすめです。
詳しくは、「Nagatacho GRiD 公式サイト」をご覧ください。
今回はシェアリングエコノミーのサービス事例として3点ご紹介しました。
より詳しい事例が気になる方は「シェアリングエコノミーの例まとめ【事業パターンごとに紹介】」も合わせてご覧ください。
ガイアックスのスタートアップカフェ
シェアリングエコノミーでは、個人同士の直接的なつながりが生まれ、助け合いの輪が広がります。シェアリングエコノミーを利用することで、利用者のコスト削減や、提供者の資産を有効活用できる点だけでなく、「人と人のつながり」が生まれるという点は、シェアリングエコノミーの大きな魅力なのではないでしょうか。
これまでは、社会に必要なサービスがあった際には、資本を集めて法人をつくり、従業員を雇用し、プロモーションをかけて認知を獲得し、サービス提供と対価を得るといった形の企業活動がそれを満たしていました。しかし、本来は困っていることがあれば、周りにいる人々が手を差し伸べてくれるというのが、自然だったりもします。
シェアリングエコノミーを推進していくことで、愛情や感情がこもった形でサービスを受けることができ、同時に誰もが、自由に自分らしいサービスを提供する形で社会に貢献することができます。
人と人をつなげる事業で社会に大きなインパクトを与えるスタートアップを共創するガイアックスのスタートアップスタジオでは、ビジネスアイディアの相談を実施しています。オンラインで事業相談を実施し、優れた事業案には200万円の出資を行っています。
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