今回インタビューしたのは株式会社TRUSTDOCK(トラストドック)代表取締役CEOの千葉孝浩(ちば たかひろ)さん。
現在は経営者としてビジネスの世界にいる千葉さんですが、大学卒業後は個人でデザインの仕事などを請け負いながら漫画家として約4年間活動されています。自分の可能性を信じてチャレンジをし続けてきている千葉さんに、レジリエンスのヒントをいただきました!
千葉 孝浩
株式会社ガイアックスでR&D「シェアリングエコノミー×ブロックチェーン」でのデジタルID研究の結果を基に、日本初のe-KYC/本人確認API「TRUSTDOCK」を事業展開、そして公的個人認証とeKYCに両対応したデジタル身分証アプリと、各種法規制に対応したKYC業務のAPIインフラを提供するKYCの専門機関として独立。フィンテックやシェアサービスのeKYCをはじめ、行政手続きや公営ギャンブルなど、あらゆる業界業種のKYCを、24時間365日運用しているクラウド型KYCサービス。さらには本人確認だけでなく、銀行口座確認や、法人在籍確認、マイナンバー取得など、社会のデジタル化に必要なプロセスも全て提供し、デジタル・ガバメント構築を民間から支援している。経産省のオンラインでの身元確認の研究会での委員や、金融庁主催イベントにて、デジタルIDでの登壇など、KYC・デジタルアイデンティティ分野での登壇・講演活動多数。
自分自身を引き上げるルーティンを持ち、信じ込むこと
ー プレッシャーやストレスが多い中でもチャレンジし続けるために、習慣にしていることはありますか?
まず、場数を踏むことを重視しています。
かつて、子供の頃の私は、人前に出ると緊張して手足が震えるほどのあがり症だったんですよ。人前に出ることが苦手で、でも克服したくて…。これは場数を踏むしかないと思い、中学生の時から意図的に部活動の部長や委員長など人前に立つ役割に立候補するようになりました。そうやって場数を踏む経験を積み重ねてきたおかげで、今では大舞台のピッチや講演でも本当に緊張しなくなりましたね。
あと、小説や漫画を出版社に持ち込んだ経験がある方には共感いただけると思いますが、あの手の持ち込みって、編集者の方に厳しいフィードバックをいただきます。するとなんだか、作品じゃなくて自分が否定されている気分になってしまうんですよね(笑)
そうやって落ち込んだ時に、「絶対大丈夫だ、いける!」といつも自分に言い聞かせていました。自分で自分を褒めたり励ましたりしている内に、自分の中に2人の私がいる感覚が培われて(笑) 人前に立っている時は、アクターの自分と、袖から見守るディレクター兼プロデューサーの自分がいるような感覚なんです。この感覚でいるとそんなに緊張しないですよ。人生が壮大な1つの漫画だとしたら、作者の私と登場人物の私がいるような。そう捉えた方が楽しめますね。
当時はWEB漫画なんてなかったし、漫画家をやっていた時は自分以外に褒めてくれる人がいないし、就職もしないで漫画を描いていて大丈夫なのだろうかという状況の中、自分以外に自分のことを信じる人がいなかった。起業家が投資家にピッチするよりも、漫画家が編集者に持ち込んでフィードバックを受ける方がしんどいので、鍛えられますよ。皆さんも是非、小説や漫画を描いて持ち込むことをオススメします(笑)
プロのアーティストやアスリートの世界は、どう足掻いても勝てないほど、残酷なまでに、才能が影響する世界です。それに比べて、ビジネスの世界での起業は、メソッドもフレームワークもあって、万人にチャンスがある優しい世界です。
皆さんも投資家への出資ピッチは、何回断られても諦めないでください。事実、TRUSTDOCKがガイアックスからカーブアウトする時には、100人にお会いして、投資してくれたのはわずか6人です。少しは勇気が出るお話ではないでしょうか。
ー 確かに心が鍛えられそうですね…
あとは、TRUSTDOCK社として独立してから意識している習慣は、ルーティンを作ることです。私はハードなミーティングやタフな業務でネガティブな気持ちになった時は、いつも帰りにアイスクリームなどの甘いものとコーヒーを買って一息つくんです。その後に、自分の中のMP(メンタルポイント)が復活するという自己暗示をかけています。「回復する行為をしたのだから、回復したぞ」と。そうやって暗示をかけ続けているので、甘いものやコーヒーを摂取したら、自動的に回復するという暗示が作動するようになっています。基本的にはメンタルが病むようなことはないですね。病みそうになると回復魔法をかけています(笑)
だから、何でもいいから自分なりの回復のルーティンを作ることが大切だと思っています。よく寝てよく食べる、映画を見る、お風呂にゆっくり入る、腕立て伏せする等です。方法は何でもよくて、ネガティブな気持ちになったり落ち込んだりした時に「こうすると回復する」と決めることが重要で、それをルーティン化して信じ込むことがポイントです。
私の場合は甘いものとコーヒーをルーティンにしたせいで太っちゃったので、今年は他の方法にしようかなと考えています(笑)
ー 千葉さんは過去のインタビューの中でも「レジリエンス」について触れられていましたよね
そうですね。人を採用する時にも「仕事などで落ち込んだ時にモチベーションを管理したり回復させるルーティンはありますか?」という質問はしています。
仕事は10あれば9は辛いことで、楽しいことは1くらいなことも多いです。私は代表なので、インタビューや取材を受けたりしていて、一見華やかに見られることもありますが、そういった表に出る仕事は100ある仕事の内の1くらいですからね。その他のことをいかに楽しくやるかが大切で、自分を回復させるルーティンがあれば、何かあった時に自己解決できるのでオススメです。
基本的に起きたことというのは変わらないですよね。世界は変わっていなくて、時間は等しく平等に過ぎていくわけで、何が起きてもそれを自分自身がどう受け止めるかという内面の問題なのだと捉えています。
私も全てにおいて完璧にできているわけではありませんが、心の持ち様で物事の見え方はガラッと変わる経験をたくさんしてきています。
調子の悪い時でも打率2割。プロフェッショナルの条件は「ボトムの高さ」
ー 「あの時はさすがにやばかった」という経験はありますか?
TRUSTDOCKの事業を開始した後に、子供の結膜炎がうつって片目が見えなくなったことがあります。それと同じ時期に、ガイアックスの運動会で肉離れになって片足が動かなくなりました(笑)
当時は菊池さん(現株式会社TRUSTDOCK取締役COO)が産休でいなくて、実質、事業部が私一人しかいなくて。1人しかいないのに、その私が片目片足が使えなくて、日々どうやってビジネスをしたらいいのかと…。あの時は物理的にピンチで、さすがに落ち込みましたね。
フィジカルが調子悪い時は、メンタルも不調になるんですよね。心の問題の半分は体の問題から引きずられるので、フィジカルを鍛えることも大事だと思います。
ー 体から心が病んでいくこともある…
私にとってのプロフェッショナルの条件は、スコアの高さではないんですよね。例えばプロ野球選手でクリーンナップ(3〜5番の打順)を打っている方は、調子が悪くても打率が2割はあるんですよ。調子がいいと3割くらいで、イチロークラスの選手でも打率4割が限界ですよね。つまりは、10本中3本打って調子がいいと言われ、10本中2本だと調子が悪いと言われるんですけど、その差ってわずか1本ですよね。つまり、プロフェッショナルはボトムが高いんです。
私はよく「モチベーションで仕事をしてはいけない」と自分にも言い聞かせています。プロフェッショナルはモチベーションが低くても打率2割何分をキープできる人物です。このボトムの品質が担保されているのがプロフェッショナルの条件だと思っていて、アップサイドは、絶好調だったらホームランを打てるかもしれませんが、仕事はマラソンです。絶不調でネガティブな時ですら、アウトプットのボトムラインが、一定水準を満たすことが担保されていること。そこがまず目指すべきラインだと常日頃から意識するようにしています。もっともっと、ボトムラインを上げれるようにこれからも頑張ります!
ー ルーティンを作って回復までの時間を短縮していくことも、ボトムを上げることに繋がりますね。ありがとうございました!
今回は、漫画家として仕事やご自身と向き合い続けてきた千葉さんならではの習慣をお聞きできました。ルーティンを作ってそれを信じ込むことは一人でもできることなので、何をしましょうね?自分を元気にさせるルーティンを考えるのって、なんだかワクワクします!