今回インタビューしたのは、株式会社アドレスCTOの中島京亮さん。
大学3年生の時にガイアックスでインターンをしていた中島さん。
当時は営業のお仕事を担当していたそうです。そこから株式会社ニコリーを共同創業し、取締役CTOになったのにはどのような背景や想いがあったのでしょうか?CTOの役割や、CTOに求められる能力についてもお聞きしました。
中島京亮
1988年生まれ。慶應大学経済学部在学中に株式会社ガイアックスのインターン生としてグループウェアの法人営業を担当。その後IT業界・プログラミングに関心を持ち独学でプログラミングを学ぶ。2012年3月に株式会社ニコリー(旧株式会社ドウゲンザッカーバーグ)を共同創業、取締役CTOに就任。スマホアプリやWeb開発を中心に開発チームを統括。2021年1月よりメンバー・サービスの想いに共感し株式会社アドレスのCTOに就任。社内システムの開発や開発チームのマネジメントを担当。技術で組織・事業をリードする事を目標に日々業務に没頭している。
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営業職か技術職か。シリコンバレーへの訪問が転機になった
ー まず、中島さんのこれまでのキャリアについて教えてください。
2010年頃、当時大学3年生だった僕はガイアックスで長期インターンをしていました。
そこで、ガイアックスの子会社である株式会社ソーシャルグループウェアで法人向けのグループウェアの営業を担当していました。そして、大学卒業後は内定先を辞退して、当時のインターンのメンバーで株式会社ニコリー(旧株式会社ドウゲンザッカーバーグ)を立ち上げます。
最初はCTOとは名乗っていなかったのですが、社内では一番技術に知見のある人というポジションで自社製品開発に携わっていました。他にも、採用や事業設計、製品開発からマネジメントまで、様々な領域を手探りの状態から関わっていました。
最初はCTOと名乗ってはいませんでしたが、AWS(Amazon Web Services)のCTOイベントなどが盛り上がってきた時に、参加して学びたいという想いからCTOと名乗るようになりました。
その後、新型コロナウィルスが流行り出した2020年6月頃から様々な事業でピボットを繰り返しましたが、最終的には会社を畳む決断に至りました。
そして2021年1月からは株式会社アドレスにご縁をいただいて、そこでCTOとして働いています。
ー 中島さんはインターンをしていく中で技術職に興味を持ち、独学で勉強し始めたそうですね。何かきっかけがあったのでしょうか?
ガイアックスと関わるようになってから、IT業界のスピード感や面白さに魅了されて、この業界で働きたいなと考えるようになりました。最初は営業職を目指していたんですが、就職活動を始める少し前に訪問したシリコンバレーでの経験が、プログラミングを本気で勉強しようと思う直接的なきっかけになりました。
SVJPという、日本人をシリコンバレーの企業に勤めさせることを支援している団体に参加させてもらい、Facebookやtwitterを始めとした様々な企業に訪問させていただきました。Facebookは当時50人程度の規模でしたが、人事担当者も含めてメンバー全員が技術知識を持っているとお聞きしていたんです。そこから、IT業界でやっていくには、ある程度エンジニアリングを学んでいないと生きていけないんだと思い知らされました。
技術知識を学びたいと思いつつ、営業職をやっていきたい。そういった思いもしばらくはあったのですが、インターン中にお客さんから逆に僕がオフィス製品の営業を受けたことが転機になり、考えが変わりました。
まず、その人の営業力や対話力やスキル。それらが素晴らしくて、自分との差を感じて、営業の領域で僕が大成するのは難しいんじゃないかなと思うようになっていったんです。
僕自身も大学が経済学部で文系ですし、営業職と技術職のどちらにするか悩みましたが、技術職の方が向いていると思い、そこから本気で技術者を目指すようになりました。
いつかしたいと思っていた起業。仲間も環境も揃ったなら「今やらないと」
ー 内定先を辞退してまで、そのタイミングで会社を立ち上げようと思った理由は何だったのでしょうか?
ガイアックスでの経験が僕にとっては大きかったですね。
インターンをしている中で、ガイアックスからカーブアウトしたり、新しい事業を始められる先輩方を間近で見ていたので、そのエネルギーに感化されて「自分も会社をやりたいな」という気持ちが募っていきました。
いつかできたらいいなと思っていたのですが、運よくインターンの同期で同じ志を持てるメンバーと出会えたので、皆で内定先を辞退して会社を立ち上げることになりました。
ー 不安はなかったんですか?
実はそれほど不安は感じていませんでした。
不安よりも、自分たちがやりたいことができる環境が整っていることに対し、「じゃあ今やらないと」という期待感の方が大きかったです。
起業する前に集まったメンバーでアプリを作ってみたり、色々とアクティブに動いていると周りの人たちが助けてくれて。ガイアックスの先輩方や、当時コネクションのあったVOYAGE GROUPのCTOの方に定期的にアドバイスをいただきながら、自分たちの事業を改善する機会を作ることができました。
プログラミングに関しても、まず内定先で経験を積んでからチャレンジする方がいいのではないかと悩んだこともあるのですが、実際に自分でチャレンジしながら学んでいく方がスキルアップするんじゃないかという思いがあったので、当初多少はあった不安も徐々に消えていきました。
ー 中島さんは、会社を立ち上げて、結果としてCTOになっていますよね。CTOになるには他にどんなパターンがありそうですか?
周りの方とお話していても、僕のパターンは稀な方だと思います。
特に学生上がりとなると、創業CTOは1〜2割という印象です。
それ以外の大半は、上場企業でエンジニアとして勤めていて、会社からカーブアウトしたり、出会った仲間と創業してCTOになるパターンが8割という印象があります。
CTOは事業や組織を常に意識している
ー 具体的に、CTOの役割とはどんなものですか?
事業のフェーズによっても色々と違うとは思いますが、技術的な知識を持っていることが一番大事だと思っています。
その上で、経営層とちゃんとコミュニケーションが取れたり、企業で出てくる様々な課題に対して、技術的な知見を持った上で対処をしていくのがCTOとしての役割ではないのかなと思っています。
これまでに色々なCTOの方とお会いしてきて、CTOには大きく分けて2つのタイプがあるのだと思わされました。
1つは、本当に技術力に長けていて、技術で人を引っ張るタイプの人。
もう1つは、技術知見を応用して、経営力やマネジメントなど他の分野で力を発揮できるタイプ。
技術がずば抜けて高い人がCTOで活躍するパターンは、割合だと1割程度。
例えるならイチローのようなイメージで、若い頃からその領域が大好きで没頭していて、誰よりも努力しているからこそ、ずば抜けて高い技術が身に付いている。そんなタイプです。
僕はそちらのタイプではないので、イチローになる方法を答えるのは難しいんですけれど。あとの9割くらいはどちらかと言うと後者のパターンで、技術者として働きつつ、マネジメントや採用など他の知見をどんどん身につけてCTOになるパターンが多いなと思っています。
ー そうなると、CTOは技術的な知見があることはもちろんのこと、経営的な視点なくしてCTOにはなれないということでしょうか?
CTOになることが目標の1つなのであれば、技術的な知見を高めつつ、事業や経営に対する知識や、業界に対する知識があることも大切になってくると思います。
ガイアックスでインターンをさせてもらったことで得た一番の財産は、インターン生の頃から事業の数字に関する部分に触れられたことだと思っています。
当時は代表の上田さんの元で働かせてもらっていて、経営者がどんな風に事業のことを考えているのかを、常に身近で体感させてもらいました。
その経験があったので、社会人になる前から経営的な視点が自然と養われて、創業してからも知見を得る上でも、とても役立ちました。
エンジニアとして、常に事業を意識して普段の仕事に取り組むことが、本当に大切だと思います。
ー 1つの技術や言語を深めることと、いろんな技術や言語を浅く広く知るのとでは、どちらの方が重要ですか?
どちらも必要だと思うのですが、キャリアを作っていく上で、まずは1つの技術を深く、ある程度の年数を経験されるのがいいかなと思っています。
それがCTOとなった場合、1つの技術しか知らないと、例えば会社の事業に対して必要な正しいものを複数の選択肢から選ぶことができなくなってしまう。
そうなると幅広い知識が必要になってくるはずなので、幅広い知識を得るためにも、まずは軸になるような深い知識が必要かなと思います。
ー 学生から「メンバーの中の一人のエンジニアになるのか、CTOになるのか、どちらを目指すのがいいと思いますか?」と質問されたら何と答えますか?
その人のやりたいことによると思うので、正解はないと思います。
ただ、組織や事業に対する興味が強いのであれば、CTOを目指してみたらいいのではないでしょうか。CTOは常に事業や組織のことを意識しながら、小さなことにも取り組むことが大切だと思っているので、興味がないと正直キツいと思います。
メンバーの人生が豊かになったと感じた時が、一番嬉しい
ー CTOという肩書きだからこそ感じられる喜びはありますか?
僕はマネジメントに興味関心が高いタイプなので、自分が採用したメンバーが活躍してくれたり、その人の人生が豊かになったと感じた時に、嬉しいなと感じますね。
逆も然りで、採用したメンバーがマイナスな理由で転職や退職をした時には落ち込みます。採用した人が技術的な成長を実感した上で、事業に貢献していると感じられる場を作りたいなと思っているので、それがうまくワークした時に一番やりがいや楽しさを感じます。
とはいえ、最初からマネジメントに対する興味関心が高かったわけではなく、最初の頃は他の人に任せていたくらいでした。でも、それだとエンジニアの継続・育成がうまくいかなくなってしまったんですよね。それは事業的にもリスクになりますし、事業がうまくいかなかったり停滞することを経験して、これではまずいと思い、マネジメントに興味を持ち始めました。
ー CTOとなったらコードを書くことから離れていく必要も出くると思いますが、どういう気持ちになりましたか?
僕の場合は、技術を通じて組織をどう作っていくか、事業をどう伸ばしていくかに一番関心が高いので、コードを書く時間が減ることに対しては全く悲しさや寂しさの気持ちはありませんでした。
ただ、社内でも技術理解やスキルが他の人よりも高いという自負があったので、メンバーに委託していくことでクオリティやスピードが落ちていくんじゃないう不安はありました。
そこの踏ん切りがついてからは、不安はなくなりましたね。
エンジニアリングは楽しいモノづくりの場。好きなことを見つけ、没頭してほしい
ー ご自身のキャリアを考えた時に、CTOの先はどのような未来を見据えていますか?
スタートアップが好きですし、「0→1」と「1→100」フェーズが好きなので、CTOという肩書きの有無に関わらず、技術知見を持った人間としてそこのフェーズに関わっていきたいですね。
根本的に、モノづくりが好きな人間なんです。
一番最初に技術を勉強し始めた時に、母からハンドメイドのビーズアクセサリーをECサイトで販売できないかと相談されて。当時はSTORES(ストアーズ)とかもなかった時代なので、自分で1から作ってみたものが、僕の最初の製品でした。
作る工程の中でも「0→1」の部分、どういう仕組みでどう動くかを考えたり作ることが本当に好きなんです。
もう1つは、もう一度自分で会社を立ち上げることに挑戦したい気持ちもありますね。
ー 中島さんの人生において、プログラミングとは?
あくまでも、プログラミングは何かを作るための手段だと思っています。手段でありつつも、いろんな物事を発想する上で、自然と「技術的にはどうなのだろう」と考える力が鍛えられてきました。
僕にとってプログラミングはキャリアの軸になっているものなので、人生においては非常に重要な武器であり、なくてはならないものになっていますね。
ー 最後に、エンジニアになりたいという学生にメッセージをお願いします。
僕はエンジニアリングを楽しいモノづくりの場だと思っているので、とにかく好きなものを作ればいいと思います。きっかけは何でもいいし、どんなものでもいいので、好きなものに没頭してほしいと思っています。
ー ありがとうございました!
インタビュー:西山凌太
ライティング:黒岩麻衣
編集:遠藤桂視子
中島さんは独学でプログラミングを学んでいく中で、挫折しそうになった経験はないとお話されていました。「モノづくりが大好き」と仰るように、まさに没頭されていたのだと思います。とても落ち着いた柔らかい語り口の奥に、渾々と流れる情熱を感じました!