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緊迫感の漂う”本音”のフィードバック。激烈な会話がもたらした「自由と秩序」の共存

最終更新: 2023年9月6日

ライフチャートセッションと森のリトリート合宿を経て、お互いの関係性が利害関係から大切な存在へと変化していったSOC。メンバーの関係性が育まれていったことで、「SOCとしては」という主語で話す人も増え始めました。その一方で、メンバーとの距離感が近くなったからこそ、ポジティブにもネガティブにもお互いに気になることが増えていきます。
関係性の土壌をはぐくんできたSOCの一体感を高めていくために、全員に対して平等に思っていることを伝える「360°フィードバック」の場を設けます。自分が思っていることをそのまま伝えるということは、時に怖さを伴うこと。小寺さんや管さんも今までとは違った心持ちで望んだ360°フィードバックの場での出来事について伺っていきます。

小寺 毅

小寺 毅

株式会社はぐくむ 代表取締役

株式会社はぐくむにて、脱・ヒエラルキー、脱・指示命令コントロール型の組織を目指す方々を対象にした経営コンサルティング事業を展開。支援実績としては、Uber、DeNA、ガイアックスなど。 コーチとしては2006年から活動。現在は企業の社長や幹部を対象に1on1コーチングやチームセッションを実施している。コーチング研修や自主自律型組織を目指す上での各種研修講師も務めている。 書籍『奇跡の経営』で知られ、『ティール』でも触れられているブラジルのセムコ社が、自社の経営スタイルを広めるために運営している「セムコスタイル・インスティチュート」。その組織の中で、日本には数人しかいない公式コンサルタントも務めている。
*ブログ『社内コーチの働きかけが、他律型から自律型へと組織を突き動かす』
*参考『中断、さえぎり、自分の話……上司がついやりがちな人の可能性をつぶす12の聴き方』

管 大輔

管 大輔

ソリューション事業本部責任者

2013年新卒でガイアックスに入社。2015年9月から事業部長を務め、クラウドソーシングの活用、リモートワークの推進など働き方の多様化を積極的に進めた結果、2年間で離職率を40%から0%に、売上が5倍に成長。2019年に本部長就任。2020年に新卒採用支援サービス『オンライン就活』を立ち上げ、事業責任者を兼務。複業ではコーチング事業を展開する会社を設立し、コーチング型マネジメントの普及に注力している。2019年の9月からオランダに移住。

重枝 義樹

重枝 義樹

ソーシャルメディアマーケティング事業責任者

デジタルマーケター。2014年ガイアックス入社。自らも企業のソーシャルメディアマーケティングの戦略コンサルを行いながら、部署のコンサルタント、運用支援チームを統括する。Forbes Japanや雑誌「AERA」等へSNSコンサルタントとして多数寄稿。

第一回 対話による自主自律型組織へ – すべての始まりはあのチームセッション
第二回  “本音を話せる土壌”が組織にもたらした、深い相互理解という宝物
第三回 「仕事だけの関係性」では自律型組織は育まれない〜森のリトリートが起こした組織変容とは〜

詳細は、『ガイアックス × はぐくむの自主自律型組織変革コンサルティング』よりご覧いただけます。

自由が生み出した「クリエイティビティ」と「緩み」

ーライフチャートセッションと森のリトリート合宿を経て、SOC内でどのような変化が起きたのでしょうか。

ソーシャルメディアマーケティング事業部

重枝 これまでのチームセッションを経て、働き方を自分自身で設計するカルチャーが浸透してきたように感じていました。本来、働く上で必要の無い制約が、何かしらの理由でかかってしまうもの。あくまで制度的な制約ではなく、本人の意識の上での制約だと思います。チームセッションを通してメンバーの関係性の土壌が育まれたことで、「本来は制約なんてない」ということにメンバー自身が理性ではなく、無意識レベルで気づき、「こんな方法でやってみてもいいんだ」とクリエイティブに働けるように変化していきました。

制約が外れて成果を出し始めたメンバーがいる一方で、「成果を出さないといけない」というプレッシャーがなくなり、「自由になったから、これくらいでいいか」と気持ちが緩んでいるように感じるメンバーも見受けられました。

 メンバーのパフォーマンスに差が出てきたのは私も感じていたので、小寺さんとの定例ミーティングでも相談していました。小寺さんが仰っていたのは、パフォーマンスに差が出ている状況へのアプローチとして強め・弱めの2種類があり、強めのアプローチをするとインパクトは強いが、ハレーションが起こる可能性も高いとのこと。

ただ、対話を1年近く取り組み関係性の土壌があるSOCであれば、強めのアプローチでもいけるのではと言っていただき、試してみたいとなりました。私も含めてその場にいたメンバーは、強めのアプローチを試すことに賛成しつつも、「小寺さんの言う”強め”ってどんな場になるんだろう」と怖さも感じていました。

小寺 僕としては、どちらのアプローチでも良いと思っていました。ただ、今までのチームセッションの中でメンバー同士が「大切な関係」に変化したと感じたので、チームの中での「激烈な会話」をする土壌は十分にあると思っていました。

その場で印象に残っているのは、新しくセッションの場に参加し始めてくれたメンバーが、「強めのアプローチでやってみたい」と明確な意見を出してくれたことです。どちらのアプローチにするか迷いがある中で、意志をはっきりと表明してくれたメンバーがいたことで、強めのアプローチをする意志決定ができたと思っています。

ー360°フィードバック当日に向けて、どんな準備をしたのでしょうか。

小寺 管さんや重枝さんなどの一部のメンバーとは、場の意図と当日の進め方を事前にすり合わせていきました。今までのチームセッションは自由演技的にその場で起きることを活かすことが多く、事前に細かく内容をすり合わせることはほとんどありませんでした。

ただ、360°フィードバックでは全員にスポットライトが当たるように、決まった時間・進め方で場を回していくことが求められていたので、「全体でやるのか、グループに分かれるのか」「メンバーの組み合わせは何がベストか」を話し合いの中で決めていきました。

そこでタイムラインに加えて、「なぜこの場を開くのか」「この場を通じてどうなっていきたいか」を、360°フィードバックを開催する上での意図や思いも丁寧に分かち合っていきました。

ー場の進め方だけではなく、思いの部分も丁寧にすり合わせていったんですね。

小寺 これまで対話の繰り返しによって関係性の土壌ができているとはいえ、率直にフィードバックを伝え合うことは今まで取り組んでいないこと。加えて、率直にフィードバックをすることは、センシティブな伝え方・受け取り方になる可能性もあります。360°フィードバックの場は、「『ダメなやつ』という評価の烙印を押すためではなく、SOCのより良い未来のためのもの」と共通認識として持っておくことで、フィードバックを伝えやすく、受け取りやすくなっていきます。
本音のフィードバックを伝えることは責任を持つということ

ーいよいよ360°フィードバック当日。どのように進めていきましたか。

小寺 当日は僕の方から、事前にすり合わせた開催の意図を話して、場のセットアップをしていきました。そこから2つのグループに分かれて、片方は重枝さん、もう片方は僕と管さんで回していきました。グループごとにお互いへのフィードバックをしていただき、最後は全体で気づきやコメントしたいことを分かち合い終わっていきました。

ー具体的にどんな形で360°フィードバックを行っていったのでしょうか。

小寺 お互いに対して「ポジティブに思っていること」「もっと頑張って欲しい/ひとこと物申したいこと」の2つの側面でフィードバックを行っていきました。まずは個人の時間をとって一斉に書き出し、スマホのアプリに打ち込んでいく。それを元に個々のターンを始めていきました。どちらの側面のフィードバックが多くなるかは、人によってはっきりと分かれていたのが印象的でしたね。

重枝 まず自己評価を書いてもらった上で他者評価と突き合わせていったのですが、自己評価と他者評価がずれていることが多くありました。自由な雰囲気の中で、本人としては自分なりに考えてベストを尽くしてるつもりが、周りからは「遊んでいるように感じる」「アウトプットがない」と思われていたり。しかも、フィードバックをする側が何も相談していないにも関わらず、その内容が似ていることがありました。ある意味、個々人からのフィードバックというより、「SOCという組織が、あなたをどのようにみているか」というフィードバックになった場だったのかもしれません。

 フィードバックが嬉しくて泣いているメンバーもいました。そういうメンバーは周りから自分が評価されていることを、しっかりと言葉にして伝えてもらえたことに喜びを感じていたんだと思います。

逆に、ネガティブなフィードバックをもらうメンバーもいました。本人も自分のパフォーマンスにネガティブな評価をしていましたが、その本人評価以上にネガティブなフィードバックが周りから返ってきた場面もあり、それはとても張り詰めた時間になりました。

メンバー 一人一人に対して、とにかくフラットにフィードバックがなされる場だったと思っています。

特に印象的だったのは、フィードバックを受け取ったメンバーに対して「何を感じているのか」を言葉にする時間を必ず設けたことです。小寺さんから本人に問いかけがあり、自分の言葉で答えてもらうまで必ず待っていました。小寺さんの立場はあくまで中立的で、フィードバックをもらった人を助けるのではなく、言葉に出す機会を作られていました。曖昧な言語化で終わらすことなく、しっかりと内省をして、言語化する機会をファシリテートしてもらえたらこそ、フィードバックがその後に活きていったと思います。

小寺 周りから受け取ったフィードバックに対して、きちんと味わう時間があることが大切です。言われて痛いことをフィードバックされると、「そんなことはない」と直視することを避けることがあります。また、「はい、フィードバックしましたよ。」で終わってしまえば、投げたはいいものの相手に届かないまま終わってしまいます。

時間をとって、痛いことは痛いできちんと味わい、嬉しいは嬉しいで分かち合う。そうすることで、相手から投げてもらったものを受けとめることができ、二人の間で関係性の橋がかかっていくと思っています。曖昧な言葉で終わらせずに、しっかりと内省し、しっかりと自分の言葉で周りに伝わるまで伝えてもらう、ということをファシリテーターとして大事にしていました。

ーフィードバックを伝える側には、何が起きていたのでしょうか。

小寺 フィードバックは、伝える側もエネルギーが必要です。思っていることはあっても、伝えない方が楽ということもあるでしょう。

しかし、真摯なフィードバックは相手と自分の関係性や、チームの関係性を大きく前進させていく力があります。フィードバックを伝える側も、本気で伝えれば伝えるほど、相手を無視できなくなり、相手との関係性の橋が築かれていくのが人間の性なのではと思います。

SOCの場合は、これまでのセッションを通してお互いが「大切な存在」という関係性がはぐくまれていたからこそ、ポジティブ・ネガティブどちらの側面でも、相手に対して気になることや思うことがたくさん生まれていました。その願いを真摯に伝え合い、そこから生まれる感情や考えを本音で分かち合ったことで、さらに絆が強まったと思います。

重枝 相手と絆を作ろうと試みることは、相手に対して自分も責任を持つということ。その責任を踏まえた上で、間違いなくあの場では本気のフィードバックをしあっていたと思います。

グループでのフィードバック後の全体シェアでも、同じように本気で感じたことを伝え合っていたと思います。予定調和に落とし込むようなシェアをしていたメンバーに対して、私自身も「きれいにまとめようとするな」と伝えたのを覚えています。いい感じにまとめずに、中途半端で終わらせないことが、フィードバックをする上で本当に大事だと思います。

評価をするためのフィードバックではなかった

ー360°フィードバックの場は、SOCにどんな変化をもたらしたのでしょうか。

管 大輔

重枝 SOCという組織に、自由と秩序が共存するようになったと思います。小寺さんのチームセッションによって、SOCメンバー個々の中に自由が生まれたことは大きな変化。自由の中で自走するメンバーもいれば、自由に甘える人も生まれてきました。組織の箍(たが)を締めていたものが緩んで、バラバラになった状態だっだと思います。

とはいえ、個々のメンバーはSOCという組織の中に存在しています。組織の意識とシンクロして動いている人は「自律的に動いている」と言えますが、組織の意識を無視して動いている人は組織にとっては場違いな存在。組織からフィードバックをもらうことで、自分の意志と組織の意識のギャップに気づき、組織の意識にもシンクロして動けるように変化していきました。ギャップを真摯に受けとめたメンバーは「自分には何ができるのか」と探し始めましたし、ギャップを受けとめきれなかったメンバーは自然とSOCという組織から離れていきました。これが出発点となって、それぞれの道の歩み方が分かれていったと思います。

 人によっては受けとめたくないほど厳しいフィードバックをもらっていたので、自己評価と他者評価の解離が大きかったメンバーはギャップを調整できるのかと不安に感じていました。ただ、それを受けとめて調整できたらどのように変わっていくんだろう、という期待も感じていました。

重枝 厳しいフィードバックをしたものの、あくまでSOCとして排除しようと意図があったわけではありませんでした。実際に、フィードバックが終わった後も、解離が大きかったメンバーを助けようと多くのメンバーが動いています。本人にとってフィードバック自体は辛いものでしたが、厳しいフィードバックとその後の周りの助けも含めて、SOCとしてそのメンバーに尽くしていたと思っています。

小寺 「排除しようと思ってフィードバックをしていない」がポイントだと思っています。あくまでフィードバックをするのは、「ダメなやつ」という評価をするためではなく、SOCのより良い未来のため。事前に「なぜフィードバック会を実施するのか」という思いを入念にすり合わせて場に望み、冒頭でも口頭で思いを分かちあってフィードバックをしています。だからこそ、厳しいフィードバックを受け取ってもメンバーが立ち直れる可能性が生まれたと思ってます。

フィードバックをする側にとっても、伝えたからには無関係でいられなくなるもの。だからこそ、フィードバックの後も相手に関与しようとする動きが生まれたのではないでしょうか。

ー自主自律型組織へ変わる過程で、360°フィードバックはどんな意味があったのでしょうか。

小寺 「自己組織化の中における秩序」がキーワードです。個々の意識と組織の意識がシンクロすることで、組織として自律的な動きが可能になると思います。組織を構成するメンバーの間に真摯なフィードバックがなされたことで、SOCが自由と秩序が共存する自己組織化をしていきました。

変容が起きた大きな要因は、意識の制約が取り払われて自由に動くメンバーが多くいたことだと思います。初回のチームセッションから感じていたことですが、「自分の持っている命を輝かせたい」と思って仕事に取り組む人の存在によって、自由を妨げている制約が取り払われていき、個人と組織のシンクロを強める土壌が出来上がっていきました。

ー最後に一言お願いします。

 自由とカオスは紙一重だと思っています。その違いは秩序があるかどうか。自己評価と他者評価のギャップに向き合い自由の中に秩序を生み出していったことが、SOCが自律的な組織に変わった要因。SOC以外で関わっているチームでもフィードバックにトライしたいと思いました。

重枝 個人の意識の制限を外したり、自己評価と他者評価のズレを調整することは、今のSOCでは特別なセッションを設けなくても、日常的に行われています。小寺さんのチームセッションの場を経験したメンバーが引き継いでくれているのではないかと。そのカルチャーは自然発生で生まれたのではなく積み重ねて取り組んだことがあってこそのものなので、その火を絶やさないように継続的に取り組んでいきたいです。

インタビュー・ライティング 宇田川寛和

編集後記
より良い未来を作りたいと思うからこそ、ポジティブ・ネガティブなことがどちらも浮かんでくるもの。「どんなことでも出していい」という場だからこそ、相手に対してネガティブに思っていることも伝え合える関係性が素晴らしいなと思いました。本気で伝え合う、受けとめ合うための関係性の土壌を育んでいたんだと、今までの流れがつながったように感じています。

自主自立型組織物語〜ソーシャルメディアマーケティング事業部〜
1. 対話による自主自律型組織へ – すべての始まりはあのチームセッション
2. “本音を話せる土壌”が組織にもたらした、深い相互理解という宝物
3. 「仕事だけの関係性」では自律型組織は育まれない〜森のリトリートが起こした組織変容とは〜
4. 緊迫感の漂う”本音”のフィードバック。激烈な会話がもたらした「自由と秩序」の共存
5. リーダー交代でも揺るがない。対話を通じて育まれた自律性 ~計画からの逆算ではなく、人をベースに組織を作る〜
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