「起業したい!」と思ったのはいいものの、何から手をつければ良いのかが全く分からない。
そのような方のために毎月、Gaiaxの新規スタートアップ事業であるOtellの立ち上げを流れを全てリアルタイムで曝け出し、解説しています。
第8回である今回の記事では、サービスの独自価値を磨いている様子(9月)を公開します。
リアルタイムでリアルなスタートアップ立ち上げの流れを学び、Otellと共に成長してみませんか?
Otellとは
Otellは、現在(2020年11月〜)株式会社ガイアックスの新規事業として開発中の、「平日長期滞在を希望する人のための宿泊施設予約サイト」です。
- 家だと余計なものが多く、環境的に集中できない
- 家にいると煮詰まるので気分転換、リフレッシュがしたい
- カフェやコワーキングスペースは情報漏洩の観点からあまり使いたくない
という方のために、宿泊施設の部屋をお手頃な価格で月曜〜金曜の4泊5日単位で提供するサービスです。
LP(ランディングページ):https://otell.jp
スタートアップスタジオとは
社会に大きなインパクトを与える事業をアイディアからグロースフェーズまで見送る支援を実施する組織です。
出資だけでなく、事業開発・エンジニアリング・バックオフィスの支援も行うことにより、初めての起業でも、数十回の経験を経てきたスタートアップスタジオメンバーのノウハウの元、事業活動に取り組むことができます。また、アイデアの構想段階から起業後の資金調達とパートナー探しのフェーズまで、イベントなどを通して相談することも可能。ビジネスアイデアの相談をオンラインで実施し、優れた事業案には200万円の出資を行っています。
詳細は以下よりご覧ください。
» Gaiax スタートアップカフェ
2021年9月の進捗
- 泊数の見直し
- 客室の仕事環境情報の改善
- 事業計画を改めて作った
今回インタビューしたのは富士茜音さん
富士 茜音
Otell事業責任者
20卒ガイアックス入社。現在は仕事環境が整ったワーケーションにぴったりのホテル予約サイト『Otell(オーテル)』の事業責任者。ガイアックス代表の上田が解説するYouTube「経営カレッジ」に出演。大学在学中は、インドでボランティア活動や学生団体にて日本人学生向けに海外インターンシップを企画/運営などをしていた。
前回までのあらすじ
- Step1:Otellの事業アイデアは、「ワーケーション」があまり浸透していない現状への問題意識から、ガイアックスメンバー有志でアイデアを出し合って生まれた。
- Step2:アイデアが見つかったらまずはヒアリング。Facebook上などでアンケート調査を行い、ニーズを調べた。
- Step3:LPを作成し、広告を打ち、事前登録者を集めてさらにヒアリング。ターゲットユーザーの抱えている課題と欲しているサービスのイメージを鮮明にした。
- Step4:Otellβ版(MVP)リリースに向けて、会社の法務部と連携し、旅行業取得の準備と利用規約の作成に取り組んだ。
- Step5:β版(MVP)リリース後、Webサイト分析ツールを駆使し、また、ユーザーに目の前(zoomの画面共有)でサービスを利用してもらい、UI UXの悪い箇所を洗い出し、修正した。
- Step6:β版(MVP)のUI UXが改善された段階で、プレスリリースを発表。データや調査結果も記載することでサービスの説得力を高めた。また、それによりユーザー数とホテルからのお問い合わせが大幅に増加した。
- Step7:Otellのビジョンを再確認。
- Step8:KPIを設定しようとしたが、PMF達成前のスタートアップは方針が頻繁に変わるため、長期的な目標はまだ立てられなかったため、必要ないと判断。
- Step9:営業方法を、多く問い合わせる手法から、いくつかの企業を狙い撃ちする手法に変えたことで欲しい契約先としっかりと契約できるようになった。
- Step10:新規ユーザー獲得のため、TwitterとFacebookでワーケーションが当たるキャンペーンを実施し、Otellをより多くの人に知ってもらうことができた。
- Step11 サービスを使わない人の理由を調べ、サービスの欠点を洗い出す。
- Step12 洗い出したサービスの欠点を補い、さらにサービスの特徴を磨くことによって、独自価値をアップデート。
- Step13 サービスのUI・UXを改修し、より多くの人に使いやすいサービスへ。
- Step14 新しい機能(ポケットwifi貸し出し)を仮リリースして需要があるか検証した結果、期待していたほどの需要はないと判明した。
- Step15 独自価値をより尖らせたブランドを作り、検証を開始した。
- Step16 サーベイの実施によって得られたサービスの需要を裏付けるデータ・分析結果をプレスリリースで配信し、様々なメディアで使ってもらえる状態にした。
- Step17 ユーザビリティーヒアリングを実施し、MVP検証を行った。
- Step18 PSF検証を行い、Otellがユーザーに刺さるサービスかを検証した。
- Step19 チームのコミュニケーション方法を新しくした。
- Step20 方針の見直しを行うことで、立てるべき戦略が明確になった。
- Step21 下半期に行う新たな戦略の策定。
- Step22 Otell独自のカオスマップのリリース
泊数の見直し
矢野:先月はOtellの独自のカオスマップのリリースを行いましたが、その後の反響はいかがでしょうか。
富士:カオスマップのリリースによって、Forbesやインターネットウォッチなどに掲載され、SNSなどでもシェアがされました!これにより、Otellという事業がより多くの方に知っていただくことができ、かつ認知されたのでよかったです。
矢野:なるほど。一つのプレスリリースを行ったことによって、SNS等でその情報がシェアされ、最終的に多くの方にサービスを知ってもらえるきっかけになったということですね。次に、今月はどのようなことを行いましたか。
富士:1つは宿泊日数の見直しです。Otellではそもそも「平日の4泊5日」を独自価値とし、全てのお客様にこの日程をデフォルトでご予約いただいております。しかし、過去にOtellを使わない理由についてアンケートをとったところ「スケジュールが合わないから」という理由が最も多く見受けられました。
矢野:4泊5日という縛りがあるから、逆に使いにくいという声があったということですね。そのような声があったから宿泊数の見直しを行ったということでしょうか。
富士:まさにその通りです。そのため、3泊4日などの宿泊日数で検証をすることになりました。今までは、Otellの独自価値は「平日4泊5日」であることでもあるので、まずはこの価値を磨くことが最優先事項としていました。
しかしながら、日数の柔軟性を求める声が多かったこと、またCVをより伸ばしていくことを重視したことから、独自価値を失わないように配慮をしつつ宿泊日数を整え直すことにしました。
矢野:なるほど。一部の人が熱狂するような4泊5日の宿泊サイトという独自価値を磨くことと、CVを上げるために多くのユーザーのニーズに答えることの両方を解決する必要があったということですね。
次回にはその検証結果が数値として出るかもしれないですね!楽しみです。
Step24:客室の仕事環境情報の改善
富士:次に行ったこととして客室の仕事環境情報の改善があげられます。Otellでは宿泊日数に加え、仕事環境が整っていることも独自価値として設定しております。
しかしながら、当時のHPでは全てのホテルにそれらの情報が十分にあるわけではなかったという課題からこの点について取り組むことにしました。
矢野:なるほど。もう1つの独自価値により磨きをかけたということですね。
富士:そうですね。そのため、まずOtellのホテルは仕事環境が整っているということについてより多くの方に知っていただくことが必要だと考えました。そのため仕事環境に関するブログを書いたり、バナーを変えたり、客室のWiFi速度の具体的な数値をHPに記載したりしました。
また、改めてOtellのHPに初めて訪問した方がどんな情報をどの順番で仕入れていくのか、つまりカスタマージャーニーを見直しました。その上で、仕事環境の情報などOtellが伝えたい情報を抜け目なく伝えるUIUXの改善を行いました。
矢野:なるほど仕事環境という独自価値を伝えるためにまずは情報を増やし、その上で伝え方を検討しなおしたということですね。
Step25:事業計画を改めて作った
矢野:他に今月行ったことはありますか。
富士:もう1つ行ったのは事業計画を改めて作り直したということです。
矢野:なるほど。事業計画は事業検証を始めるにあたっても書いたかと思いますが、なぜこのタイミングで改めて作り直したのですか。
富士:そうですね。そもそも、Otellでは開発コストを削減するべく、HPをノーコードツールを用いて作成しています。そのため、本来であれば3ヶ月以上かかる作業が1週間でできたり、3名ほど人員を入れて行う作業も1人で行うことが可能になっています。
そのようなメリットがある一方で、デザイン性の限界、宿泊施設に特化したシステムが入れられない、複数人体制での開発が行いづらいなどさまざまな弊害が生じているという側面もありました。このような弊害を取り除くためにもサイト移行を行いたいと考えていました。しかしながら、サイト移行をするにはエンジニアの複数人体制を整えるなど金銭的コストがかなりかかるため、改めて事業計画を書き、そもそもいつ頃にどれぐらいの売り上げが現状から見て出るのかを確認する必要がありました。
矢野:なるほど。つまり、Otellにより多くの資金を投入し、よりより体験をお客様にしていただくためにもこの段階で事業計画を書き、今後の見通しを立てる必要があったということですね。
富士:そうですね。今回、事業計画を書いたことによって改めてさまざまなことを可視化し、理解することができました。そのうちの1つが、少し楽観的に事業の進展を考えていたということです。思っていたよりチームメンバーや業務委託などの人員を増やすことができないことがわかりました。
また、今まではいつ黒転するかや、いつ粗利が一定まで伸びるよりも、「PSF、PMFするか」ということを優先していたため、事業計画を練り直したことで改めて時間軸を再認識することができました。
矢野:Otellのようにある程度事業検証を行い、その結果ができてきたタイミングで事業計画書を書き直すことによって、事業としてどう進めていくかを考え直すことは重要ですね。
事業計画書を作るとなるとなかなかフォーマットを一から作るのは難しいかと思いますが、その点についてはどうされましたか。
富士:フォーマットに関しては、ガイアックスが公開しているテンプレートを用いて作りました。
矢野:なるほど。ありがとうございます。より多く方にご利用いただくために、独自価値に磨きをかけたり、事業計画を練り直したりなど、事業の骨組みとなる部分を今月は見直しました。次回、これらの動きに対する結果はどうなるのでしょうか。楽しみです!
>>富士さんも使った事業計画書テンプレートはこちら
10月のタスク設定
矢野:最後に10月に取り組むタスクは何ですか?
富士:来月は、以下にある3つに取り組もうかと考えています。
- Otellの認知を広げる動きをエレベーター広告やメディア戦略を通じて加速させたい
- 人気ホテルがわかっていることなどから、ホテル数を増やしていく
- 予約後、宿泊中のカスタマージャーニーを改善していく
それでは来月も引き続き更新を続けていきます。今月立てたKPIを達成することはできるのか!?スタートアップの成長を楽しみにお待ちください!
スタートアップメモ
- ある程度ニーズが明確化してきたタイミングで、独自価値や事業計画など、その事業の根幹部分を再確認し、磨きをかけることが重要
- ユーザーニーズと独自価値を均等に維持しながら事業を進めていくことでより多くの方に利用してもらえるようにする必要がある