「起業したい!」と思ったのはいいものの、何から手をつければ良いのかが全く分からない。
そのような方のために毎月、Gaiaxの新規スタートアップ事業であるOtellの立ち上げを流れを全てリアルタイムで曝け出し、解説しています。
第7回である今回の記事では、「サービスがPSF(Problem Solution Fit)(製品が顧客の課題を解決している状態)しているかを確認しているフェーズ(8月)」を公開します。
リアルタイムでリアルなスタートアップ立ち上げの流れを学び、Otellと共に成長してみませんか?
Otellとは
Otellは、現在(2020年11月〜)株式会社ガイアックスの新規事業として開発中の、「平日長期滞在を希望する人のための宿泊施設予約サイト」です。
- 家だと余計なものが多く、環境的に集中できない
- 家にいると煮詰まるので気分転換、リフレッシュがしたい
- カフェやコワーキングスペースは情報漏洩の観点からあまり使いたくない
という方のために、宿泊施設の部屋をお手頃な価格で月曜〜金曜の4泊5日単位で提供するサービスです。
LP(ランディングページ):https://otell.jp
スタートアップスタジオとは
社会に大きなインパクトを与える事業をアイディアからグロースフェーズまで見送る支援を実施する組織です。
出資だけでなく、事業開発・エンジニアリング・バックオフィスの支援も行うことにより、初めての起業でも、数十回の経験を経てきたスタートアップスタジオメンバーのノウハウの元、事業活動に取り組むことができます。また、アイデアの構想段階から起業後の資金調達とパートナー探しのフェーズまで、イベントなどを通して相談することも可能。ビジネスアイデアの相談をオンラインで実施し、優れた事業案には200万円の出資を行っています。
詳細は以下よりご覧ください。
» Gaiax スタートアップカフェ
2021年8月の進捗
- 方針の見直し
- 新たな戦略の策定
- カオスマップのリリース
今回インタビューしたのは富士茜音さん
富士 茜音
Otell事業責任者
20卒ガイアックス入社。現在は仕事環境が整ったワーケーションにぴったりのホテル予約サイト『Otell(オーテル)』の事業責任者。ガイアックス代表の上田が解説するYouTube「経営カレッジ」に出演。大学在学中は、インドでボランティア活動や学生団体にて日本人学生向けに海外インターンシップを企画/運営などをしていた。
前回までのあらすじ
- Step1:Otellの事業アイデアは、「ワーケーション」があまり浸透していない現状への問題意識から、ガイアックスメンバー有志でアイデアを出し合って生まれた。
- Step2:アイデアが見つかったらまずはヒアリング。Facebook上などでアンケート調査を行い、ニーズを調べた。
- Step3:LPを作成し、広告を打ち、事前登録者を集めてさらにヒアリング。ターゲットユーザーの抱えている課題と欲しているサービスのイメージを鮮明にした。
- Step4:Otellβ版(MVP)リリースに向けて、会社の法務部と連携し、旅行業取得の準備と利用規約の作成に取り組んだ。
- Step5:β版(MVP)リリース後、Webサイト分析ツールを駆使し、また、ユーザーに目の前(zoomの画面共有)でサービスを利用してもらい、UI UXの悪い箇所を洗い出し、修正した。
- Step6:β版(MVP)のUI UXが改善された段階で、プレスリリースを発表。データや調査結果も記載することでサービスの説得力を高めた。また、それによりユーザー数とホテルからのお問い合わせが大幅に増加した。
- Step7:Otellのビジョンを再確認。
- Step8:KPIを設定しようとしたが、PMF達成前のスタートアップは方針が頻繁に変わるため、長期的な目標はまだ立てられなかったため、必要ないと判断。
- Step9:営業方法を、多く問い合わせる手法から、いくつかの企業を狙い撃ちする手法に変えたことで欲しい契約先としっかりと契約できるようになった。
- Step10:新規ユーザー獲得のため、TwitterとFacebookでワーケーションが当たるキャンペーンを実施し、Otellをより多くの人に知ってもらうことができた。
- Step11 サービスを使わない人の理由を調べ、サービスの欠点を洗い出す。
- Step12 洗い出したサービスの欠点を補い、さらにサービスの特徴を磨くことによって、独自価値をアップデート。
- Step13 サービスのUI・UXを改修し、より多くの人に使いやすいサービスへ。
- Step14 新しい機能(ポケットwifi貸し出し)を仮リリースして需要があるか検証した結果、期待していたほどの需要はないと判明した。
- Step15 独自価値をより尖らせたブランドを作り、検証を開始した。
- Step16 サーベイの実施によって得られたサービスの需要を裏付けるデータ・分析結果をプレスリリースで配信し、様々なメディアで使ってもらえる状態にした。
- Step17 ユーザビリティーヒアリングを実施し、MVP検証を行った。
- Step18 PSF検証を行い、Otellがユーザーに刺さるサービスかを検証した。
- Step19 チームのコミュニケーション方法を新しくした。
Step20:方針の見直し
矢野:先月はユーザビリティーヒアリングやサイトの改修などで大忙しだったと思いますが、今月は何を行いましたか。
富士:そうですね。まず1つは戦略の見直しですかね。
いろいろな方からフィードバックをいただく中で、独自の価値をもっと磨く必要がある、サービスの使いやすさを向上させる必要がある、キャンペーンなどで露出をしたい、マネタイズを考えるとターゲットの拡大の必要もある、、とたくさんの検証したいことが出てきたのですが、結果的にどこから選択して手をつけていいのかわからなくなっていました。
そんな中、新たな本に出会い「戦術を洗い出して選択をする前に、現状を分析して方針のシナリオを書くほうが大切だ」と学びました。
今までは「仮説を立てて動いてみること、まずはやってみること」が大切と考えていたのですが、事業が少し形になってくると、方針を決めてどのような施策をとるか具体的なシナリオを描くことが同時に重要なのだと学び、実践することにしました。
その上で、主に3つことを行いました。
1つ目に方針を見直すにあたり、まずはOtellの現状を見直すことにしました。その上で、チームとして何を行い、何を行わないのかの共通認識を取り直し、チーム全体として立てるべき方針を明らかにしました。
2つ目に、方針として「4点※を目指すプロダクト作り」を行うと決めました。その上で以下の4つについて考えました。
※ 4点とは「ファイブ・ウェイ・ポジショニング戦略」の考えを元にしたものであり、各点数は以下のように考えられている。
3点:業界水準(企業が1つの要素によって市場競争にのりだし、消費者に受容される最低水準をクリアしているレベル)
4点:差別化(企業がその要素を使って、自社の商品やサービスを好むよう消費者を説得したいと考え、差別化に成功しているレベル)
5点:市場支配(消費者がよそで買うことを拒絶する、市場を支配できているレベル)
- ターゲットに使ってもらえるプロダクトづくりをする:4点を目指す
- コストを下げることで競合優位を深める
- 広告で大きく拡散して、ニーズの拡大性を検証する
- ターゲットを広げる(チーム、夫婦、toB、30代)
3つ目に、「数値目標を立てない」という方針を立てました。無論、数値目標は重要です。しかし、数値を追い求めるための根拠のあるストーリーを描かず、辻褄合わせをし、今するべきでない施策までもをしてしまう可能性があります。
そのため、PSFを達成するまでは、Otellでは定性目標に対し明確なストーリーを描いて検証を進めることにしました。
Step21:新たな戦略の策定
矢野:今までお話で方針の見直しを行ったいうことがわかりましたが、それ以外に行ったことはありますか。
富士:次に行ったこととして、先ほどお話しした方針を元に、具体的な戦略をチームとして練りました。サービスリリースから半年が経ち、ホテルワーク のノウハウやユーザーの情報が集まったこと。
また、Otellに新たなメンバーが入り、客観的な視点を持ってサービスを見つめることができたということが相まって、より根拠のある施策を作ることができました。
矢野:なるほど。具体的に教えてください。
富士:まず1つ目にペルソナを作り直すことにしました。
今まで検証を行ってきた情報を元により解像度の高いものを作ることができました。そこからユーザーのインサイトを再検討し、どのインサイトにどんな価値を提供するのかを見直し、その上でそれを満たしにいくための施策を検討しました。
2つ目に、より一貫したメッセージ性を出せるようなHPに作り直すことにしました。
今までのHPの改修は検証したいがあると、必要な部分を編集するという運用でしたが、方針ができたことで、どのような目的で、何を伝えるためのHPかということを念頭に改修することにしました。
その上で、カスタマージャーニーマップからユーザーの理想の体験を考え、実際のアクションに落とし込んでいます。
Step22:カオスマップのリリース
矢野:8月の下旬にカオスマップがOtellよりリリースとなりましたが、それについて教えてください。
富士:先日リリースしたカオスマップは事業として主に2つの理由から作成することになりました。まず1つはカオスマップの特性上、あらゆるサイト・ブログ等で転載してもらえ、結果としてOtellの拡散につながると考えたからです。
また、このような調査はOtellがこの市場について見識があるということをユーザーに意識づけ、サービスの信頼にもつながると考えました。
矢野:なるほど。カオスマップのリリースは事業としてそのような明確なメリットがあったのですね。
カオスマップはこちら
9月のタスク設定
矢野:最後に9月に取り組むタスクは何ですか?
富士:来月は、以下にある2つのことに取り組もうかと考えています。
- 広報PRや広告に注力し、磨いたプロダクトを広げていきたい
- 営業の動きとしてホテル数を増やす
スタートアップメモ
- 事業が安定してきたタイミングでペルソナや方針を改めて見つめ直すことが重要
- 数値的目標を策定する際は、その根拠となるストーリーが必要
- マーケティング的に事業領域に関するカオスマップを作成することで事業の知名度向上やその分野に関して博識であるという社会的地位を掴み取ることが大切