「起業したい!」と思ったけれど、何から手をつければ良いのかわからない。
そのような方のために毎月、Gaiaxの新規スタートアップ事業であるOtellの立ち上げの流れをすべてリアルタイムで曝け出し、解説しています。
第5回である今回の記事では、「サービスの独自価値を磨いている様子(6月)」を公開します。
リアルタイムでリアルなスタートアップ立ち上げの流れを学び、Otellと共に成長してみませんか?
なお、若者で起業を考えている方にはスタートアップカフェへの参加もおすすめ。事業アイデアの壁打ちから出資、専門的なメンバー提供まで可能です。
Otellとは
Otellは、現在(2020年11月〜)株式会社ガイアックスの新規事業として開発中の、「平日長期滞在を希望する人のための宿泊施設予約サイト」です。
- 家だと余計なものが多く、環境的に集中できない
- 家にいると煮詰まるので気分転換、リフレッシュがしたい
- カフェやコワーキングスペースは情報漏洩の観点からあまり使いたくない
- そんな方のために、宿泊施設の部屋をお手頃な価格で月曜〜金曜の4泊5日単位で提供するサービスです。
LP(ランディングページ):https://otell.jp
2021年6月の進捗
- モバイルWifiキャンペーン実施
- サイト大幅改修、Otell Select検証開始
- ワーケーションに関するサーベイ結果公開
今回インタビューしたのは富士茜音さん
富士 茜音
Otell事業責任者
20卒ガイアックス入社。現在は仕事環境が整ったワーケーションにぴったりのホテル予約サイト『Otell(オーテル)』の事業責任者。ガイアックス代表の上田が解説するYouTube「経営カレッジ」に出演。大学在学中は、インドでボランティア活動や学生団体にて日本人学生向けに海外インターンシップを企画/運営などをしていた。
前回までのあらすじ:
- Step1:Otellの事業アイディアは、「ワーケーション」があまり浸透していない現状への問題意識から、ガイアックスメンバー有志がアイディアを出し合い生まれた。
- Step2:アイディアが見つかったらまずはヒアリング。Facebook上などでアンケート調査を行い、ニーズを調査。
- Step3:LPを作成し、広告を打ち、事前登録者を集めてさらにヒアリング。ターゲットユーザーの抱えている課題と欲しているサービスのイメージを鮮明化。
- Step4:Otellβ版(MVP)リリースに向けて、会社の法務部と連携。旅行業取得の準備と利用規約の作成に取り組む。
- Step5:β版(MVP)リリース後、Webサイト分析ツールを駆使。また、ユーザーに目の前(zoomの画面共有)でサービスを利用してもらい、UI UXの悪い箇所を洗い出し、修正を実施。
- Step6:β版(MVP)のUI UXが改善された段階で、プレスリリースを発表。データや調査結果も記載することでサービスの説得力を向上。また、それによりユーザー数とホテルからのお問い合わせが大幅に増加。
- Step7:Otellのビジョンを再確認。
- Step8:KPIを設定しようとしたが、PMF達成前のスタートアップは方針が頻繁に変わるため、長期的な目標はまだ立てられなかったため、必要ないと判断。
- Step9:営業方法を、多く問い合わせる手法から、いくつかの企業を狙い撃ちする手法に変えたことで欲しい契約先としっかりと契約が可能に。
- Step10:新規ユーザー獲得のため、TwitterとFacebookでワーケーションが当たるキャンペーンを実施。Otellの認知拡大に努めた。
- Step11:サービスを使わない人の理由を調べ、サービスの欠点を洗い出す。
- Step12:洗い出したサービスの欠点を補い、さらにサービスの特徴を磨くことによって、独自価値をアップデート。
- Step13:サービスのUI・UXを改修し、より多くの人に使いやすいサービスへ。
Step14:新機能の検証
小菅:今月頭からポケットWifiの無料貸し出しキャンペーンを開始されましたよね。
このキャンペーンはどんな意図で実施したのでしょうか?
富士:今回のキャンペーンの意図は、「ポケットWifiの貸し出しをサービスに含めた場合、需要があるのかどうか?」を検証するためでした。
そのために実際にOtell負担でモバイルWifi無料貸し出しを行い、利用者数と利用者の宿泊ホテルのデータを取ったんですね。
結果、全Otell利用者の1/4がポケットWifiを利用されました。
ポケットWifiを利用する目的もバラバラで、Wifi速度が不安だという人もいれば、屋外で仕事をしたいという人もさまざま。
ニーズはあるけれど、特段大きくはなかったという感触です。
そのため、サービスにデフォルトでモバイルWifiの貸し出しを組み込むのはやめて、Wifiの弱いホテルだけを対象にポケットWiFiを貸し出すことにしました。
Step15:独自価値を魅せる
小菅:6月に「Otell Select」という新ブランドをリリースされたと思うのですが、こちらはどのようなものですか?
富士:Otell Selectでは、Otellに掲載されている働きやすいホテルの中でもさらに厳しい基準をクリアしているホテルのみをセレクトして掲載しています。
もともと働きやすくて人気だったホテルに広めの机やクッション付きのワークチェアを導入してもらって、働きやすさをより追求した部屋になっています。
これは、Webサイトでも一番上に大々的に表示しています。
このOtell Selectの施策には、2つの目的があります。
Otellのコンセプトである「集中と休息」をよりはっきりとユーザーの方々に知ってもらい、体感してもらうというPR視点の目的。そして、仕事に最適化された環境のホテルルームにどれくらいの需要があるのかという検証の目的です。
小菅:Otell Selectをリリースしてから、事業への感触には何か変化がありましたか?
まだリリースしてからあまり時間が経っていないので、Otell Select利用者のフィードバックはいただけていません。
ただ、Otellを利用してくれている方数名にヒアリングした結果、Otell Selectを認知していなかった方や、内容を理解していなかった方が実際は多くいらっしゃたことがわかりました。
次の課題はコンセプトとサービスの内容をユーザーに発信する方法だなと感じています。
今後はよりユーザーにOtell Selectを認知してもらって、使ってもらうため、言葉やデザインを工夫したり、伝える回数を増やしたり、口コミを増やすために紹介キャンペーンを実施しようかと考えています。
Step16:サーベイ結果の公表
小菅:最後に、4月に実施して先日発表したサーベイ結果について教えてください。
ワーケーションに関するサーベイを実施した意味、そしてそれを公表した理由はどのようなものですか?
富士:サーベイを実施した理由は2つあります。
1つ目は、Otellとして、サービス改善のためにユーザーがどのようなワーケーションを求めているのかを調査したかったというのがあります。実際に今、調査結果にもとづいてサービスをアップデートしています。
また、サーベイの結果がOtellの価値を(予想通り)裏付けることになったため、それによってさらなるユーザーの獲得も考えています。
2つ目の理由は、このサーベイを公開することによるメディア露出の獲得です。
サーベイ結果のプレスリリースによって新しいデータを世の中に公表することができれば、その調査結果を転載・引用くださるメディアを獲得することができて、結果それによってサービスの露出も増えるので、それが狙いにありました。
サーベイのプレスリリースはこちら
小菅:なるほど、ユーザーニーズの裏付けとメディア露出を狙っていたんですね。
サーベイをプレスリリースで公開した結果、その反応はいかがでしたか?
富士:まだリリースを出して3日しか経っていないので現時点での結果にはなりますが、すでに多くのメディアの方々にダウンロードいただいています。(ダウンロード数:18)
INTERNET Watchさんや各種新聞社さんに掲載もしていただいているという状態です。
小菅:効果はすぐに現れるんですね。サーベイを実施する時に意識した点は何かありますか?
富士:そうですね。最近だと毎週のようにワーケーションに関する新しい調査が公開されていたので、まだ調査されたことのない切り口を探して、メディアに注目してもらえる内容にするということには気を付けました。
今回の場合、ワーケーションの中でも「仕事メインのワーケーション」と「休暇メインのワーケーション」という新しい分け方でニーズやトレンドの調査を実施しています。
小菅:メディアの注目という視点で、サーベイの実施は他のサービスでも有効な手段になり得ますか?
富士:そうですね、そうなると思います。
サーベイ結果やカオスマップは、一度つくるとさまざまなメディアやブログなどで使ってもらうことができます。それによって自社のサービスの独自価値を発信することができるので、Otell以外のサービスでもやる価値はあると思います。
7月のタスク設定
小菅:7月に取り組むタスクは何ですか?
富士:来月は、以下にある4つのことに取り組もうかと考えています。
- 広告検証
- Otell Selectの部屋数の拡大
- 体験記 / レビューの充実化
- 招待キャンペーンなどの実施
スタートアップメモ
スタートアップにおいては、新しい機能を追加したい際にも一度簡易版をリリースして検証し、ヒアリングの結果に応じてその機能を本格的に実装するか否かを判断する。
独自価値はとにかく尖らせて見せ方を工夫し、顧客に直感的に知ってもらう必要がある。
事業領域に関するサーベイを実施し、その結果を公表することは、スタートアップにおいて有効なマーケティング手法。