「起業したい!」と思ったのはいいものの、何から手をつければ良いのかが全く分からない。
そのような方のために毎月、Gaiaxの新規スタートアップ事業であるOtellの立ち上げを流れを全てリアルタイムで曝け出し、解説しています。
第4回である今回の記事では、サービスの独自価値を検証している様子(5月)を公開します。
リアルタイムでリアルなスタートアップ立ち上げの流れを学び、Otellと共に成長してみませんか?
なお、若者で起業を考えている方にはスタートアップカフェへの参加もおすすめ。事業アイデアの壁打ちから出資、専門的なメンバー提供まで可能です。
Otellとは
Otellは、現在(2020年11月〜)株式会社ガイアックスの新規事業として開発中の、「平日長期滞在を希望する人のための宿泊施設予約サイト」です。
- 家だと余計なものが多く、環境的に集中できない
- 家にいると煮詰まるので気分転換、リフレッシュがしたい
- カフェやコワーキングスペースは情報漏洩の観点からあまり使いたくない
という方のために、宿泊施設の部屋をお手頃な価格で月曜〜金曜の4泊5日単位で提供するサービスです。
LP(ランディングページ):https://otell.jp
2021年5月の進捗
- 先月とったサーベイの集計・分析
- Otellの独自価値検証
- Otell UI・UX改修
今回インタビューしたのは富士茜音さん
富士 茜音
Otell事業責任者
20卒ガイアックス入社。現在は仕事環境が整ったワーケーションにぴったりのホテル予約サイト『Otell(オーテル)』の事業責任者。ガイアックス代表の上田が解説するYouTube「経営カレッジ」に出演。大学在学中は、インドでボランティア活動や学生団体にて日本人学生向けに海外インターンシップを企画/運営などをしていた。
前回までのあらすじ:
- Step1:Otellの事業アイデアは、「ワーケーション」があまり浸透していない現状への問題意識から、ガイアックスメンバー有志でアイデアを出し合って生まれた。
- Step2:アイデアが見つかったらまずはヒアリング。Facebook上などでアンケート調査を行い、ニーズを調べた。
- Step3:LPを作成し、広告を打ち、事前登録者を集めてさらにヒアリング。ターゲットユーザーの抱えている課題と欲しているサービスのイメージを鮮明にした。
- Step4:Otellβ版(MVP)リリースに向けて、会社の法務部と連携し、旅行業取得の準備と利用規約の作成に取り組んだ。
- Step5:β版(MVP)リリース後、Webサイト分析ツールを駆使し、また、ユーザーに目の前(zoomの画面共有)でサービスを利用してもらい、UI UXの悪い箇所を洗い出し、修正した。
- Step6:β版(MVP)のUI UXが改善された段階で、プレスリリースを発表。データや調査結果も記載することでサービスの説得力を高めた。また、それによりユーザー数とホテルからのお問い合わせが大幅に増加した。
- Step7:Otellのビジョンを再確認。
- Step8:KPIを設定しようとしたが、PMF達成前のスタートアップは方針が頻繁に変わるため、長期的な目標はまだ立てられなかったため、必要ないと判断。
- Step9:営業方法を、多く問い合わせる手法から、いくつかの企業を狙い撃ちする手法に変えたことで欲しい契約先としっかりと契約できるようになった。
- Step10:新規ユーザー獲得のため、TwitterとFacebookでワーケーションが当たるキャンペーンを実施し、Otellをより多くの人に知ってもらうことができた。
Step11:サービスを使わない人の理由も調べる
小菅:まずは「Otellを使っていない理由」のアンケート結果がどうだったのか気になります…。
そもそもアンケート自体ユニークな取り組みだなと思ったのですが、このアンケートはどういった意図で実施したのですか?
富士:Otellのサービスを提供し始めて3ヶ月くらい経った時です。
どうしたらより多くの人にOtellを使ってもらえるようになるのかなと悩んでいたタイミングで、ふと「Otellを使っていない人にその理由を聞けたら良いのにな」と思ったことがきっかけでした。
すぐにアンケートをGoogle formで作成して、Otellにユーザー登録してくれている方のメールリストに配信しました。
結果、短期間で74件もの回答が集まっていましたね!
多くの回答をもらえて嬉しかった反面、一つずつ読み進めていくと段々と心が折れそうになりました(笑)
だけれど、一方でアンケートに回答してくれた方々は期待をしてくれているということでもあります。「ここに書かれている課題を解決した時にOtellを使ってくれるかもしれない!」と思って、全てに目を通しました。
最近はいかにOtellの独自価値を作ろうかと、+αの機能のことばかりを考えていましたが、実はまだまだサービスそのものの基本的な部分に課題があるということに気付かされました。例えば周辺施設についての情報が不足していたり、ホテルwifi情報が不足していたり。
そして、それらを全て一つずつ解決していければ、+αの輝かしい特徴がなくとも、Otellは人々のペインを忠実に解決する、独自のサービスになれるのかもしれない…と思いました。
また、ヒアリングはサービス利用者の方に対して今までも数多く実施していました。
ただ、それだけでは自分たちの視点が偏ってしまい、サービス利用者さんの思考をとても楽観的に想像してしまっていた…ということも思い知らされました。
例えば、ユーザーは自宅から片道3時間かけてでもワーケーションに行きたいという認識がなかったこと。食事情報はなくてもサービスは使ってもらえるといった甘い認識。
私達がかなりバイアスのかかった見方をしていた部分がいくつか露わになりました。
MVPの独自価値は特に課題感を強く感じているアーリーアダプター向けに作るべきだと言われていますが、PMFを達成するためには、サービスを利用していない人々の声を聞くことも大事だなと、つくづく思い知らされる結果になりました。
Step12:独自価値を作る
小菅:実際は、いまどのようにしてOtellの独自価値を作ろうとしているのですか?
富士:Otellでは、現在独自価値を作るために2種類のアプローチをしています。
一つ目は先ほどお話しした「Otellを使わない理由」アンケートで露出したサービスの課題を一つずつ解消していくということ。
wifiが不安だという声に対してはポケットwifiの貸し出し制度を整備し、ホテル周辺の飲食店の情報が少なくて困るといった指摘に対しては、各ホテルごとに周辺施設マップを作成し、Otellの予約サイトの中でも情報を見れるようにサイト内を改善しています。
とはいっても、それだけでは他のOTA(宿泊予約サイト)などのサービスとあまり大きな差別化になりません。
二つ目は、部屋を売るのではなく体験を売るということを意識して、部屋そのもののリブランディングに取り組んでいます。
Otellは「集中と休息」がコンセプトのサービスなので、「世界で一番集中できる場所」というコンセプトでワークスペースを開発するThink Lab社と共同で、社外からも専門家を招いてOtell独自の部屋のデザインにいま取り組んでいます。
Step13:サービスのUXの改修
小菅:今月から、OtellサイトのUX改修も行っていますよね。こちらは、どのような状況ですか?
富士:今回のサービス改修の目的は、より多くの人にOtellの価値を知ってもらうことでした。具体的には、掲載ホテルの情報をユーザー登録していなくとも閲覧できるように変更しました。
今まではOtellのコンセプトに強く共感する方にユーザー登録をしていただいて、Otellの方向性を決めたい、そしてメルマガなどで継続的なコミュニケーションを重視したいという背景から、ホテル情報の閲覧にはユーザー登録が必要な仕様にしていました。
けれど、最近はユーザー数が増えてきたということと、ユーザー登録というハードルのせいで登録前の離脱率が高く、多くの人がOtellの世界観を見る前に離れていってしまっていたため、今回の修正に踏み切りました。
6月のタスク設定
小菅:6月に取り組むタスクは何ですか?
富士:来月は主に二つのことに注力したいと思っています。
一つは、今月に引き続き、より「集中と休息」に特化した部屋を作ること。
二つ目は、Otellを使わない理由のアンケートで露わになった課題をサービスに落とし込んでいくことです。
この二つを確実に進めていくことで、Otellの独自価値を固めていきたいと思っています。
スタートアップメモ
- サービスの質を高めるためには「サービスを使ってもらえない理由」を調べることが効果的。
- 独自価値は、新規性の高い機能があること、またはまだ解決されていない身近なペインを的確に解決するサービスであること、もしくはその両方によって確立される。
- サービス開始初期はより多くのユーザーデータを集める必要があるが、ある程度集まり始めたら次はより多くの人にサービスを知ってもらう必要がある。