「起業したい!」と思ったのはいいものの、何から手をつければ良いのかが全く分からない。
そのような方のために毎月、Gaiaxの新規スタートアップ事業であるOtellの立ち上げの流れを全てリアルタイムで曝け出し、解説しています。
第二回である今回の記事では、Otellのβ版(MVP)リリースの事前準備と事後対応、そしてプレスリリース発表のフェーズ(3月)を公開します。
リアルタイムでリアルなスタートアップ立ち上げの流れを学び、Otellと共に成長してみませんか?
Otellとは
Otellは、現在(2020年11月〜)株式会社ガイアックスの新規事業として開発中の、「平日長期滞在を希望する人のためのホテル予約サイト」です。
- 家だと余計なものが多く、環境的に集中できない
- 家にいると煮詰まるので気分転換、リフレッシュがしたい
- カフェやコワーキングスペースは情報漏洩の観点からあまり使いたくない
という方のために、ホテルの部屋をお手頃な価格で月曜〜金曜の4泊5日単位で提供するサービスです。
2021年3月の進捗
|
今回インタビューしたのは富士茜音(ふじ あかね)さん
富士茜音
ガイアックス スタートアップスタジオ
ガイアックス20卒入社。投資先の新規事業立ち上げに参画。現在は自身でワーケーション関連の新規事業「Otell」立ち上げに取り組む。その他、中高生に向けての起業家教育「起業ゼミ」、YouTube「経営カレッジ」、起業家の壁打ちをする「スタートアップカフェ」の運営などを担当している。
前回のあらすじ:
- Step1:Otellの事業アイディアは、菅首相が「ワーケーション」を提唱したことを受け、ガイアックスメンバー有志でアイディアを出し合って生まれた。
- Step2:アイディアが見つかったらまずはヒアリング。Facebook上などでアンケート調査を行い、ニーズを調べた。
- Step3:LPを作成し、広告を打ち、事前登録者を集めてさらにヒアリング。ターゲットユーザーの抱えている課題と欲しているサービスのイメージを鮮明にした。
前回の記事はこちら
Step4:Otell β版(MVP)リリースに向けた準備
小菅:今月はまずOtell β版(MVP)リリースに向けて準備を進めていたと思いますが、準備にはどのようなものがありましたか?
富士:主にβ版サービスの開発、ホテル営業、法律関係の体制整備などがありました。
開発は先月に引き続きノーコード開発ソフトのBubbleを使って行い、リリースしても恥ずかしくないレベルにUIを整え、機能を実装しました。まだまだ今後追加していく機能や改善すべき点はありますが、それらはリリース後 随時アップデートしていきます。
ホテル営業に関しては、リリース時にホテルの選択肢が多くある方が見栄えがよく、ユーザーの満足度も上がるため、急ピッチで進めていました。方法としては主に、条件に合致するホテルをリストアップし、お問い合わせフォームやEメールにてお声がけさせていただき、興味を持っていただけたホテル様に対してはその後、Zoomにて詳細説明と交渉を行うというものでした。
しかし、ホテルのリストアップとお問い合わせにかかる労力の割に、実際にこの方法で掲載を決めてもらうことができたホテルは数件に止まりました。
最後に法律関係の体制整備に関して。Otellは業務内容上、旅行業の申請を行う必要がありました。なので許可の取得こそβ版リリースには間に合いませんでしたが(許可を取得するまではサービス手数料を受け取っていません)、早い段階から旅行業務取扱管理者の資格を持つインターンの園山さんを中心に旅行業取得の準備を進めてきました。現在申請は終わり、許可が降りるのを待っている状態です。
また、ホテルに対して営業をかける際に必須だったOtellの利用規約も自分たちの知識だけでは作るのに苦戦しそうだったため、ガイアックスの法務部を通して、旅行業に特化した弁護士の方に作成を依頼しました。最終的に重要な部分5箇所にマーカーが引かれた、素人にもわかりやすい状態で提出していただき、本当に助かりました。
Step5:Otell β版(MVP)リリース & 改善
小菅:準備が終わり、Otell β版(MVP)をリリースしました。しかし、かなりひっそりとサービス移行をした印象がありました。これには何か理由がありましたか?
富士:はい。今回のβ版リリースは既にいる事前登録者の方々向けに静かに行いました。理由としては、大々的にプレスリリースを打つ前に新サービスの使いやすさを検証し、修正する必要があると思ったからです。
まず、リリース後数日間は毎朝、Google AnalyticsとClarityというWebサイト分析ツールを使用してサービスのヒートマップや画面録画を確認し、UI UXの悪い箇所(ユーザーの離脱率の高い部分)を発見、共有、修正しました。また、実際にユーザーの方とZoomを繋いで画面共有をした状態でサービスを利用してもらい、実際に体験しながらの感想ヒアリングも行いました。
さらに、ホテルの予約の入り方の傾向やインサイト(ホテルページクリック数)などを分析することでユーザーのニーズを割り出しました。例えば、仕事のみを行うリモートワークに適した価格の低いホテルよりも、温泉や自然のあるワーケーション向きのリゾートホテルの需要の方が高いことが分かり、現在もう一つ上位の価格帯を導入することも検討しています。
Step6:プレスリリース発表(3/15)
小菅:遂にプレスリリース(PR TIMES)を発表しましたね!どのような内容で作成したのですか?
富士:内容としては、
- Otellとは
- サービスの背景(ユーザー側の課題)
- サービスの背景(ホテル側の課題)
- 事業責任者のコメント
- 今後の展望
について書きました。
ユーザー側のサービス背景としては、テレワークの拡大により集中力の低下などの課題が生じている在宅勤務者の増加。ホテル側の背景としてはコロナ感染拡大に夜宿泊施設の業績低迷をあげていて、それぞれに関して調査データとβ版サービス利用者の声を取り入れて論じることで説得力を持たせています。
また、ガイアックスSTARTUP STUDIOの繋がりで、下書きの時点でPR TIMES送信先のメディアの方に添削をしてもらうことができ、根拠の弱かったところや差別化の足りなかったところなどを修正しました。
小菅:プレスリリースを発表して、どのような効果がありましたか?
富士:まず、サービスの登録者数がプレスリリース発表から1週間で440人(298%増)増えました。本当はさらに大きな増加を期待していたのですが、発表前と比べると大きな成長です。
予約数に関しては、プレスリリース発表から丸2日間、1件も予約が入らずかなり不安に陥っていました。しかし、その後は少しずつ予約が入り始め、1週間で14件の獲得があり、これも最初の想定をやや下回ってはいたものの 心底安心しました。
今回のプレスリリースによる最大の成果は、ホテルからのお問い合わせの増加でした。今までは Otell側 からEメールによる営業を行っていましたが、このプレスリリース1本でその何倍ものホテルからお声がけをいただくことができました。地道に営業の数を打つよりも、メディアの露出を増やしてホテル側に認知してもらうことの方が効率的なのだと学びました。
プレスリリース:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000417.000003955.html
その他の今月の出来事として、Otellの開発責任者を務め β版(MVP)サービス作成を牽引してきた日野さんが、自分自身の事業を立ち上げるためにチームを離脱することになりました。Otellチームとしては少し寂しくもありますが、日野さんの挑戦を応援しています。
それに伴い、今月から新しくGaiaxディベロップメントチームから大前さんがOtell開発責任者としてチームにジョインしてくれました。これからも新体制で引き続き、魅力的なサービスづくりとワーケーションの普及に全力で取り組んでいきたいと思います。
来月(4月)のタスク設定
小菅:来月取り組むタスクは何ですか?
富士:来月はプレスやキャンペーンなどの広報活動に力を入れて露出を増やし、宿泊施設数を拡大(東京 → 5大都市近郊へ)します。その際、特に予約に繋がるターゲットユーザー層に届けることを意識して方法を考えます(Twitterは若い世代の間で情報が広まったが予約にはあまり繋がらなかった)。
また同時に、サービスのよりホテルワークに特化したUIへの改善やオプションの追加など、顧客体験の向上に努めようと考えています。
それでは来月も引き続き更新を続けていきます。今月立てたKPIを達成することはできるのか!?スタートアップの成長を楽しみにお待ちください!
ライター:小菅勇太郎
編集:廣渡裕介
スタートアップメモ
- 法律関係の体制整備やプレスリリースなどの専門的な作業は、専門家を頼るべき。Gaiax STARTUP STUDIOでは各方面のプロのサポートを無料で受けられる。
- サービスはリリースしてからもユーザーヒアリングとアナリティクスの分析によって改善点を発見し、改善し続けることが重要
- 毎日サービスのKPIを把握・比較し、その動向の原因を突き止め、向上のための施策を打ち続けることが大事