ビジネス用語で頻繁に使われるNPSとは「ネットプロモータースコア」の略で、企業やブランドに対してどれくらいの愛着や信頼があるかを数値化する指標のことです。NPSに重きをおいて成長を続けるスタートアップを例にしてNPSについて詳しく解説していきます。
NPS「ネットプロモータースコア」の意味
ビジネス業界で多く行き交う単語「NPS」とはネットプロモータースコアの略語で、顧客ロイヤルティを数値化する指標のこといいます。NPSを知る上で顧客ロイヤルティは前提知識なので詳しく説明します。
顧客ロイヤルティ
顧客ロイヤルティとは、顧客があるブランドや商品、またはサービスに対して感じる「信頼」や「愛着」のことを指します。 ロイヤルティとはもともと忠誠心を表す「Loyalty」から派生しており、企業に対する信頼や愛着の大きさを表現します。
もう少し深堀りしましょう。顧客ロイヤルティは、大きく「理性」と「感情」に分けられます。
理性は、ユーザーが現実的な要素に対して判断を下すことです。一般的に商品やサービスの価格、性能が対象になります。
一方感情は、「その企業のファンであるか否か」が指標になります。ユーザーが企業のファンになる要素はたくさんあります。例えば、ある高級焼肉店では一度利用すると、2度目の利用の際に前回のデータを活用して好みのメニューを提案してくれます。おもてなしが重要視されるのは顧客の「感情」を獲得するためです。「企業との関係性が良い」「自分のことを理解してくれている」「価値観と合っている」と感じることでロイヤルティが形成されます。
このように顧客ロイヤルティはユーザーの「理性」と「感情」で形成されています。ここで「理性」と「感情」を数値化するために利用されるのがNPSです。
NPSの計算・活用方法
NPSの計算方法は至ってシンプルです。顧客に対して「この会社・サービスを他人に薦めますか?」という質問に対し、0点~10点の11段階で評価してもらいます。
点数は大きく分けると3分割されます。0~6点は「批判者」、7~8点は「中立者」、9~10点を「推奨者」とカテゴライズします。集めたデータの推奨者の割合(%)から、批判者の割合(%)を引いた値がNPSのスコアとなります。
例えば、100人から集めたデータのうち9~10点をつけた「推奨者」が70人で、7~8点をつけた「中立者」が20人、0~6点をつけた「批判者」が10人だった場合、NPSは70(推奨者の割合)-10(批判者の割合)で「NPS60」となります。
アンケート調査で数字をつけてもらうだけなので簡単に行うことができます。
NPSと顧客満足度の違い
NPSは顧客が企業やサービスを気に入り高評価するという点で、「顧客満足度」と意味合いが似ています。
NPSと顧客満足度の違いは、「将来性を見出すかどうか」という点です。厳密にいうと「今後の収益に影響するか」です。
顧客満足度は「満足した。」という結果的なデータであり、NPSは「他人に薦めたい」と未来の行動を点数化します。
このことから、事業の将来性を可視化することができるため多くのスタートアップや新規事業でNPSの指標が重要に取り扱われています。
実際に多くの新規事業に投資をしているガイアックスのスタートアップスタジオでも出資の判断基準にNPSを採用しています。
NPSを活用し、ガイアックスのスタートアップスタジオから出資を受けた後成長を続けているスタートアップをご紹介します。
NPS注力で事業をスケール化【Techpit】
今回は、プログラミング教育サービス「Techpit」を運営されている山田晃平さんにNPSを活用した事業の育て方についてお話を伺います。
山田晃平
大学時代スタートアップベンチャーにてインターン。インターンで派遣としてインドに半年滞在。インド人のエンジニアと働く機会があり、日本がプログラミングの領域で遅れをとっていることに気づく。帰国後、独自でサービスの立ち上げを経験し、ガイアックスに入社。入社3ヶ月後にプログラミング教育サービス「Techpit」の運営を開始。
Techpitが生まれたきっかけ
廣渡:プロフィール欄にあるように、インターン中での気付きがTechpitの誕生に繋がったと思うのですが、具体的な成行きを教えていただけますか?
山田:はい、インドのエンジニア分野の発展を目の当たりにし、日本がこの分野で遅れをとっていることに課題を感じました。そこから自分自身開発のスキルを身につける為にマッチングアプリなどサービスを数個自力で作りました。常にプログラミングの教育に対しての思いは熱く、自分の思いを形にするためにスキルや知識を得るためにガイアックスに入社しました。
廣渡:ガイアックスは起業家コミュニティーが強いですからね。入社後3ヶ月でTechpitの立ち上げに入ったそうですがどういう経緯でしたか?
山田:ガイアックスのスタートアップスタジオで開催しているピッチコンテストに参加して出資の話をいただきました。
廣渡:当時のピッチはどんな内容でしたか?
山田:ピッチ内容は課題感が起点でした。当時、他にもプログラミングが学べるサービスはあったのですが、スキルを得た後に必要になってくる実践ベースのスキルを身につけるサービスを提供したいという思いが強かったです。
廣渡:投資家に自分の感じる課題を共有して解決にむけて動きだすのは素晴らしいことですね。では実際に形にするまでのフェーズを具体的にお聞きしたいです。
NPSを指標にビジネスを作り上げる
山田:事業をスケール化していく際の基準は完全にNPSの数値ベースでした。今でもそうですが、売上のことは後回しで顧客からの支持を数値化したNPSを目標にしています。Techpit創業時は徹底したユーザーヒアリングから始まりました。既存のプログラミング学習サービスを利用している人にアンケートをして世の中の学習者が抱える課題を洗い出しました。
廣渡:その集めたデータと自分のビジネスアイデアが合致して始めて進めていくといった感じですね。
山田:はい、その後教材を販売できるサイトを利用して自分たちで教材の作成をはじめました。同時進行でその教材を使ってくれる人を集めたかったので集客ツールとしてツイッターの運用もはじめました。
廣渡:集客の方法は多種多様ですが、ツイッターは同じ価値観をもった人が集まりやすく且つコミュニティー作りにも長けているので最近活用している人が多いですね。
山田:はい、SNSで発信しつつ興味をもってくれた人を集めて無料のオフライン勉強会を開催しました。そこで自分たちが作った教材をつかって学習してもらい徹底してヒアリングを行い、NPSのデータを集めました。
廣渡:非常に理にかなった進め方ですね。売上が気になるところを抑えてユーザーファーストを貫いているのが分かります。
山田:目先の売上は全く気にしませんでした。本当に良いものが提供できるとLTVの向上につながり、長期的な売上に貢献してくれます。
廣渡:LTV(ライフタイムバリュー)とは顧客が継続的に自社のサービスを購入してくれる環境のことですね。確かに良いサービスがあれば顧客の離脱率も減っていきますね。
山田:はい、現在Techpitでは買い切り講座に加えてサブスクプランも導入しています。ユーザーが長く安定して利用できるサービス提供を心がけています。
NPSベースの大切さまとめ
廣渡:山田さんの経営方針を聞く中でNPSの重要さが分かりました。「顧客の心を掴んで長く利用してもらう。」という考えは非常に貴重ですね。
山田:そうですね、商品やサービスの本質は人々の課題解決なのでそこをぶれずに追い続けることをモットーにしています。NPSを重要視する価値観はガイアックス・スタートアップスタジオの理念とも合致しているので、ガイアックスから出資を受けれたのは本当に良かったです。
廣渡:ガイアックス・スタートアップスタジオでは新規事業立ち上げのプロが経営において大切な事柄をアドバイスしてくれるのでありがたいですよね。
山田:はい、「起業に興味がある」「社会課題やアイデアを聞いてもらいたい」という方はガイアックスのスタートアップスタジオが開催している「STARTUP CAFE」に参加することをおすすめします。アイデアをフィードバックしてもらうことで、一人では思いつくことがなかったアイデアが生まれることがあります。
廣渡:経歴も年齢も関係なく気軽に相談できるのがいいですね。あと、無料ですし笑
それではNPSの重要さから事業の進め方までお話しいただきありがとうございました。今後のTechpitが楽しみです!
山田:こちらこそありがとうございました!