2024年5月15日、ガイアックス、Planet labsは、殿村桂司弁護士とともに、合同会社型と”株式会社型DAO”についての記者発表会を行い、日本初株式会社型DAOによる歴史的建造物への小口投資プロジェクトについての発表を行いました。
DAO制度設計のキーパーソン殿村桂司弁護士
殿村弁護士は、DAO法整備のキーマンで、自⺠党 web3 プロジェクトチームにて合同会社型 DAO の制度設計に携われました。2022年、政治家と企業法務や金融が専門の弁護士を中心にプロジェクトチームが立ち上がり、ブロックチェーン技術を活用したデジタル資産であるNFT(非代替性トークン)に関する提言をし、DAOの法整備に触れられました。その後、2023年秋の自民党主催のDAOのルールメイクを目的としたハッカソンでの内容を踏まえ、2024年1月に『DAOルールメイクに関する提言』をまとめられます。そして、金融庁が4月1日付で内閣府令を改正し、4月25日、合同会社型DAOが設立・運営が可能になりました。(参考:「注目の分散型組織「DAO」 新形態が開く会社の未来」(日本経済新聞、2024年4月7日))
殿村桂司 弁護士
<略歴>M&A・企業組織再編、ライセンスその他の知財関連取引を中心に、企業法務全般に関するアドバイスを提供している。TMT(technology, media and telecoms)業界の案件にも幅広い経験を有しており、TMT業界における買収、合弁その他の戦略的提携のほか、シェアリング・エコノミー、Fintech、IoT、AIなどテクノロジーの発展が生み出す新しい事業分野の案件も数多く取り扱っている。
2004年京都大学法学部卒業。2006年京都大学法科大学院修了。2007年弁護士登録、2014年再登録。2013年 Columbia Law School卒業(LL.M., Harlan Fiske Stone Scholar)。2013年~2014年 Kirkland & Ellis(シカゴ)勤務。第一東京弁護士会所属。著作権法学会会員、日本工業所有権法学会会員。
(出典:https://www.noandt.com/lawyers/keiji_tonomura/ )
合同会社型DAO解禁!ガイアックスが支援する合同会社型DAO
この法改正に対応し、ガイアックスでは、日本初(※1)となるDAO型シェアハウス「Roopt DAO(ループト・ダオ)」を合同会社とすることを決定し4月に発表。
詳細:日本初のDAO型シェアハウス「Roopt DAO」、”合同会社型DAO”の第一号物件を募集開始! 〜空き家活用コミュニティをDAO法人で実現へ~ › 株式会社ガイアックス
また、同4月に、iiU(東京都墨田区、学長 中村伊知哉、情報経営イノベーション専門職大学、http://www.i-u.ac.jp)の在学生・第1期卒業生が主体となり、合同会社型DAOの枠組みを利用した、大学DAO「iU DAO」(https://iu-dao.com/lp、合同会社iU DAO)の設立支援をおこなったことも発表し、合同会社型DAOの活用を進めています。なお、iU DAOは、金商法に対する内閣府令の改正により4月22日より解禁される合同会社型DAO(分散型自律組織)で、日本初(※1)の合同会社型の大学DAOとなります。
※1:日本ブロックチェーン協会 理事およびISO/TC307 国内審議委員の峯荒夢より、当該取り組みの前例がないと確認
詳細:ガイアックス、4月22日解禁の合同会社型DAOで大学初の大学DAO「iU DAO」の設立を支援
2024年5月、株式会社型DAO登場!
そして、2024年5月15日、日本初となる”株式会社型DAO”のプロジェクト発表を、殿村桂司弁護士とともに行い、合同会社型と”株式会社型DAO”についての記者向けの説明を行いました。
以下、記者発表会でのPlanetDAO西村 環希氏と、殿村氏のスピーチをもとに、合同会社型DAO、株式会社型DAOのメリット・デメリットや今後の展望を紹介します。
なお、日本初の株式会社型DAOによる歴史的建造物への小口投資プロジェクトの発足経緯や株式会社型DAOの仕組みを導入した背景は、別記事をご覧ください。
日本初、”株式会社型 DAO”による歴史的建造物への小口投資プロジェクトにかけるファウンダーの想い
目的に応じて、合同会社や株式会社など法形式を選択せよ
ガイアックスの取り組み事例のように、様々なDAOがあるようです。
殿村:DAOというものには法律上の明確な定義はなく、多様な目的があります。上記で紹介のプロジェクトも、空き家の有効活用を目指すものや、出資額以上の収益分配に重きを置くものなど、様々な目的があります。目的に応じて、合同会社や株式会社などの法形式を選んでいただくのが現状です。
合同会社型DAOと株式会社型DAOの違い
合同会社型DAOと株式会社型DAOの違いは何でしょうか。
殿村:いわゆる4月にできるようになったというふうに呼ばれている合同会社型のDAOは、金融商品取引法上の重い規制を受けずにやろうとすると、出資額以上の収益分配をいわゆる非業務執行社員にはできないという制約がかかってきます。他方で合同会社は元々、所有者と経営者が一致しているというのが前提になっているため、DAOと親和性があるというメリットがあります。
一方で株式会社型DAOは、出資に関する制約がなく、分配可能額の範囲内であれば配当が可能です。このため、投資型のDAOには向いているという点があります。しかし、株式会社は従来の組織形態であるため、DAOの本来の目的に合致するかどうかが課題となります。
PlanetDAOが「株式会社型DAO」を選んだ理由
なぜPlanetDAOは、株式会社型DAOを選んだのでしょうか。
西村:なぜ株式会社の法人格を選んだのかというと、二つの理由があります。
一つ目は、投資家に対して出資以上のリターンを提供したかったこと。例えば、100万円の出資に対して、それ以上のリターンを提供することです。二つ目は、地域住民の意思を反映させたかったことです。地域の声を反映することで、持続可能な事業運営が可能となります。
西村:特に1点目について、日本の法律では合法的に実現可能な法人格は株式会社のみでした。こちらが従来の株式会社と私たちのDAOの仕組みを用いたものとの比較図です。基本的な運営状況は変わりません。株主の方々がこの株主総会を開いて、この中で経営の基本的な方針を決めたりとか、取締役の選定を行ったりします。唯一の違いは、取締役会での決定プロセスです。従来の株式会社では、取締役会で具体的な方針や仕事内容がブラックボックス化されることが多いですが、私たちの場合、取締役は定款や規定に従って業務を執行します。
4月22日に発表された合同会社型DAOも検討しましたが、出資額以上の配当が業務執行社員以外には難しいため、法人格として採用しませんでした。業務執行社員になるためには、名前と住所の登記が必要であり、3万円の登録料が発生します。このため、出資者が増えるた
びにコストがかかることが問題でした。
西村:また、業務執行社員権の譲渡は他の業務執行社員間のみで可能なので、権利の二次流通が難しくなります。株式会社では、配当の上限がなく、株主の管理に登記は不要であり、組織内での管理が可能です。また、株式の自由な二次流通が可能です。このため、資金を調達し収益を最大化させる事業のゴールに適した法人格として株式会社を選びました。
現状の合同会社型DAOの限界
PlanetDAOの話を踏まえると、合同会社型DAOの限界があり、株式会社型DAOを発明されました。今後、法整備はどうなるでしょうか。
殿村:現在の合同会社型DAOでは出資額以上の配当は難しいとされている一方で、必要な許認可を取得すれば可能です。しかし、許認可を取得すること自体が高いハードルとなっています。今後、法改正が進めば合同会社型DAOもより使いやすくなる可能性があります。
PlanetDAOでは、合同会社型DAOの業務執行社員の名前と住所の登記が必要で、3万円の登録料が発生する点も課題だったそうです。
殿村:登記の手続きに関しては、合同会社も株式会社も会社法に従った登記手続きを経ないと会社として認められません。登記手続きには一定の費用がかかり、合同会社の方が株式会社よりも少し安いです。登記自体もペーパーレス化が進んでおり、株式会社に関しては代表取締役の住所を詳細に公開しなくても良い方向で法改正が進んでいます。
出資額以上の配当が業務執行社員に限られている点についてはいかがでしょうか。
殿村:合同会社型DAOでも非業務執行社員に対して出資額以上の配当を可能にするためには、許認可が必要です。しかし、これはDAOにとって高いハードルです。今後の法改正で、合同会社型DAOもより使いやすくなる可能性があります。また、合同会社や株式会社以外の法人格や組合など、他の法形式も検討されています。法改正がなくても、実務の工夫で対応できるものもあります。
合同会社型DAOの社員は雇用なのか?
4月に解禁された合同会社型DAOの業務執行社員、非業務執行社員、その他の社員とは、雇用関係や業務委託の関係になるのでしょうか?
殿村:合同会社型DAOの社員は、会社法上の社員であり、雇用関係や業務委託の関係ではありません。ただし、合同会社が労働者を雇用したり、業務を外部に委託することは可能です。一般的なDAOのメンバーがDAOのために行う活動は、通常雇用ではなく、自発的に行われるものであり、それに対して報酬を与える形です。
PlanetDAOの株式会社型DAOでは、プロジェクトの民泊運営などはどのようにされるのですか。業務執行社員、非業務執行社員があるのですか?
西村:株式会社型DAOでは、非業務執行社員や業務執行社員の概念はなく、すべての構成員は株主か従業員です。宿泊施設の運営はプロフェッショナルに任せる予定で、お寺ステイという会社を想定しています。事業の運営自体も、メンテナンスやゲスト対応はPlanet Labsに発注します。
株式会社型DAOの少額小口投資のインセンティブ
株式会社型DAOは、やはり投資へのリターンが特徴なのですね。
西村:はい、金銭的なリターンの魅力は高いと思います。宿泊施設を販売する際、通常はBooking.comやAirbnbなどのOTA(オンライン旅行代理店)を利用しますが、これらのプラットフォームを介すると手数料が発生します。DAOのメンバーが宿泊施設を直接宣伝し、手数料を株主に還元することで金銭的なリターンを提供します。
また、金銭的なリターンだけでなく、地域での体験も株主にとって大きな価値です。昨年、PlanetDAOのローンチ前に興味のある人々を招いてツアーを実施しましたが、地域の人々との交流や体験は非常に価値があるものでした。定期的に地域を訪れてツアーを開催することで、株主にとってのモチベーションとなると考えています。
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