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初めての商売は小学校2年生のゴザ販売 〜ピクスタ株式会社 古俣大介氏インタビュー(後編)〜

最終更新: 2023年6月12日

国内最大級の写真、イラスト、動画などのデジタル素材販売サイト「PIXTA」を運営するピクスタ株式会社の古俣大介さん(代表取締役社長)へのインタビュー後編です。(インタビュー前編はこちら

インターネットでフラットな世界をつくる

2004年の終わり頃から、健康グッズ販売のECサイトを運営する傍ら、新事業について考え続けた古俣さんは、いくつかの案の中からデジタルフォトの仲介業に可能性を感じます。具体的な事業プランをいくつか考えたものの、最初からある程度の規模を狙う事業を兄と2人でやり切れるイメージが持てなかった古俣さんは、久しぶりにガイアックスの上田社長に、思い切って連絡をとることにしました。

起業すると言ってガイアックスを飛び出して数年が経っていたにも関わらず、胸を張って話せる事業が確立できていなかったこともあり、気後れ感がありつつの連絡でした。ところがすぐに、会いましょうと言う返信をもらい、色々と考えていたことを話したところ、やったらいいんちゃう、と背中を押してもらい、オフィスの間借り、法務関連書類やサイト設計のアドバイスなど具体的に協力できることについての提案もあり、トントン拍子に進めることになりました。上田社長は、真剣なアドバイスをくれる一方で、押し付けることは一切しない人です。自分の利益や優先順位を排除して、最終判断を僕に委ねた上で力になってくれる存在が、本当に心強かったです。

もともと、マンガやアニメ、映画、ゲームなどが大好きな子どもで、自分でもイラストを描いたりしていた古俣さん。ECサイトを運営する中で感じていたブロードバンドの普及に加え、高品質なデジタルカメラの流通が一般的になり、高画質な写真がインターネット上に投稿される流れが生まれつつありました。そうした大きな時代の変化を活かしたWebのサービスと自分の原体験を重ねて、アマチュアの写真も含めて扱うストックフォトのマーケットを創りたいと、2006年5月31日に「PIXTA」をリリースしました。社会に対して新しい価値を提案する事業のスタートです。それは、ピクスタの企業理念である「インターネットでフラットな世界をつくる」にも込められています。

インターネットの可能性を最大限活かしたいと考えて思いつくのはプラットフォームサービスでした。不特定多数と不特定多数の間で、必要とされている何かをマッチングさせる、誰かがつくったものとそれを活かせる人を結びつけられることが、インターネットが生み出す価値。世界のどこにいても、どんな立場でも必要なものの流通を生み出せるフラットな世界を、インターネットで実現する会社を創りたいと考えました。そしてその世界で流通させるものは、僕が好きな「個人が生み出すオンリーワン」である、クリエイティブなものから始めようと思って生まれたのが「PIXTA」です。

事業をつくるより会社に雇ってもらう方が難しい

古俣さんが本気で事業家になろうと思ったのは二十歳の頃。初めての海外旅行で親戚が住むイスラエルを訪ねた時のことです。イスラエルで出会う世界は、今まで知っていた世界と異質なことがあまりにも多く、自分が拘っていた世界がいかに狭かったかと、世界が可能性に満ちていることを感じられたそうです。。その旅行に携えてきたのは、孫正義さんの著書。旅の半年前に父からもらったその本をたまたまイスラエルで読み、自分も起業することを決意します。それから10年が経ち、ようやく古俣さん自身の原体験と結びついたピクスタが始まったのです。その間、様々な立ち上げを経験してきた古俣さんにとって、起業とはどういうイメージだったのでしょう。

両親がゼロから事業をつくる様子を子どもの頃から近くで見ているので、その影響は大きいな、と感じています。僕が小学校2年生の時に、父親の会社が倒産しました。母親は当時専業主婦でしたが、おもむろに商売を始めたんです。親戚の一人が卸業者をやっていたので、あまっている在庫をタダ同然でもらい、近所に行商へ来る八百屋の横でゴザを敷き、銀食器の販売を小さく始めました。僕はお客さんにおつりを渡したり、商品の運搬を手伝っていたのが商売の原点です。母はそうして少しずつ顧客と売上を増やし、10年間のうちに店は8店舗まで増えました。僕にとっては、会社に雇ってもらうほうが事業をつくるより難しい。普通の人とは、違う感覚だろうなと思います。何しろスタートが、小学生の頃のゴザ販売なので(笑)。

サイトをリリースしてからも、決して順風満帆だったわけではありません。PIXTAの事業の特性上、クリエイターからたくさんの素材が集まり、成長期に入るまでに約3年かかったと言います。事業がある程度軌道に乗り始めた2010年、新たに2人の役員を迎え、ベンチャーキャピタルであるグロービス・キャピタル・パートナーズからの出資も決まり、いかに低コストで立ち上げるかというフェーズから、いかに最速で事業を成長させるかというフェーズに切り替わりました。固まりつつある成功モデルを形にするためには、必要な投資である採用と広告にコストを惜しまないと決断したのです。
並行して、事業の成長と比例して増え続ける社員全員と、同じ方向を見据えて判断できるようになるために、ピクスタのビジョン・理念・行動指針(PIXTA WAY)を明文化することになりました。

PIXTA WAYを社内の文化として浸透させる

社内の文化として浸透させるため、会議室内にPIXTA WAYのポスターを掲示している他、2ヶ月に1回のペースで日々の行動や仕事がPIXTA WAYと合致しているかどうか全社各チーム毎に振り返っています。そして今のビジョン「2020年までにストックフォトでアジアNO.1となり、グローバルTop5に入る」についてお聞きしました。

PIXTAは、デジタル素材のインターネットマーケットプレイスですから、国境はまったく関係ありません。日本ではこの10年で新しい市場を創り、ナンバーワンになれましたが、アジアはまだこれから立ち上がっていく市場です。年々、デジタルカメラも普及し、各国のビジュアル活用もどんどん増えており、日本と同じように価値を出せる余地があると思っています。国ごとの需要に対して、これまで培ったノウハウを工夫しながらまずは東南アジア、東アジアから展開していきたいと考えています。

今年はPIXTAを始めて10年。これこそ自分が人生をかけられる事業だ、という思いを持って始めたサービスは、今やクリエイターと購入者両方からたくさんの喜びの声が届けられるようになりました。資金繰りが厳しかった時期も、クリエイターの作品から熱量を感じられたからこそ、なんとか続けられる原動力になったと言います。お話を聴きながら、ピクスタの理念の中にもある「フラットな世界」は、古俣さん自身が態度として体現しているように感じました。日本のみならず、アジアのあちこちでもPIXTAの素材を目にする世界を、楽しみにしています。
ピクスタの創業を振り返って、古俣さんがまとめた「ネットベンチャーを8年間やってきて学んだ20のこと」もぜひ読んでみてください。(インタビュー:コーポレートカルチャー室 佐別当/記:たつみまりこ)

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