2024年4月、合同会社型DAOが解禁となりました。そして、5月15日、与党のweb3 プロジェクトチームにて合同会社型DAO の制度設計に携わった殿村桂司弁護士の同席のもと、歴史的建造物の保全・運営を日本初の”株式会社型DAO”で実現するPlanetDAOの記者発表会が行われました。今回PlanetDAOファウンダー西村環希氏に取り組みの概要と想いを伺いました。
西村 環希
株式会社 Planet Labs / PlanetDAO Founder
大学在学時より株式会社ガイアックスにて訪日旅行者向けツアーガイドのプラットフォームの運営やイベントショー事業の責任者を担う。2022年よりクリプトに将来性を感じ、web3特化シェアオフィス「CryptoBase」をオープン。2024年、日本初の株式会社型DAOによる歴史的建造物への小口投資プロジェクト「PlantDAO」を創業。
日本の”非物質的”価値に新たな息吹をもたらす
PlanetDAOファウンダーである西村さんのご経歴を教えていただけますか?
2018年から訪日外国人旅行者を対象に、地域密着型の体験ができるプラットフォームの運営や、芸者イベントショーなどのインバウンド事業を展開していました。コロナ禍により、それらの事業の撤退を余儀なくされましたが、その後、クリプトに興味を持ち、2021年には渋谷でweb3事業者向けコワーキングスペース「CryptoBase」の設立や様々なカンファレンスでの登壇の経験を経て、web3への知見を深めていきました。
web3の中でも特に、ブロックチェーン技術を使ったDAOに特に興味を持っています。国を超えた多彩な個人が集まり同じ目的に向かってプロジェクトを推進する。このDAOが持つポテンシャルと、日本の地域に眠る資産を掛け合わせることで面白いことができるのではないか。これがPlanetDAOの最初のアイデアでした。
不動産、金融資産を扱う観点から法的アドバイスが多く必要だったことから、法的ストラクチャーの作成、地域住民との信頼関係の構築、また宗教法人との話し合いなどの準備期間を経て、今回2024年5月15日に記者の方にお集まりいただき、PlanetDAOの第一号プロジェクトの発表をさせて頂くすることになりました。
PlanetDAO創業に至ったのはどうしてですか。
日本にはお金では買えない非物質的な価値が存在します。
日本の住みやすさ、安全性、福祉は顕著で、子どもが一人で歩ける国は世界でも珍しいです(はじめてのおつかいの動画が世界中で驚かれたように)。そして自然密度の高さ、歴史、文化。各地域ごとに独自の文化があり、「ご当地」キャラクターを生み出すなど、日本特有の現象だと言われていて。
このような自然や歴史、文化は10年や20年で作れるものではなく、お金では買えません。千年以上の時間をかけてゆっくりと形成されるものです。
このような自然や文化、歴史は経済的観点だけで判断すれば、価値を見出すことは難しく、例えば建物を壊して駐車場にする、森を切り開いて工場を建てる―。これらは日本全国で見られてきた現象です。PlanetDAOで関わったとある地域でも、若い世代から「管理が大変なのであれば、地域の寺を撤去したほうがよいのではないか」という声もあるそうだ、という話を聞きました。
今、世界中の3千万人以上の旅行者を魅了しているのは、日本が提供するサービス、自然、歴史、文化です。これらを時代に合わせて保全していく仕組みが必要で、PlanetDAOを作っています。
PlanetDAOはどのような物件を扱っているのですか?
私たちが扱う物件は「歴史的建造物」と言われている建物です。
このような建造物は新築の家のようにどんどん建てられるものではないため、時代が進むにつれてなくなっていきます。また、歴史的建造物は公共性が高いものが多いため、一個人や会社が購入することは難しいです。そのような物件をDAOの特性を使って、多彩な個人の集まりで保有し運営するのがPlanetDAOです。
現在、日本全国で空き家が900万戸あると言われています。空き家の数は、全体の家の13%を占め、そのうち10%が歴史的建造物に当たるとも言われています。
日本全国でのデータが見つからなかったのですが、以下が金沢市における歴史的建造物の減少の数です。一都市のみで年間150件もの建物が失われています。
今まで歴史的建造物は、税金によって維持されていましたが、今後は税収減により国や地方自治体での維持・保存が難しくなります。寄付やボランティア活動では限界があります。私たちは長期的に建物の運用ができるよう新たなビジネスを生み出し、利益を出します。
追い風となっているのは、外国人による日本空き家購入ブーム。購入した空き家をDIYしている様子をSNSで紹介するインフルエンサーもいます。
このブームの裏側の課題としては、物件を購入する人たちは移住ではなく、別荘として利用したり、使わない間は宿泊施設として運用する人たちが大半を占めています。観光地や景勝地に近いエリアでは、地域住民とのトラブルが発生するケースも見られます。日本人でさえ、難しいなか、外国人が良い物件に出会い、購入・運用するにはハードルが高いのが現状です。
歴史的建造物の保全をDAOで実現する
PlanetDAOについて、教えてください。
PlanetDAOは、国内外の多様な仲間たち、地域住民、専門家と協力して、歴史的建造物を保全しながら、さらに活用する仕組みを提供します。
地域だけでは維持が困難で、利用されないまま失われてしまう可能性のある日本全国の歴史的建造物を救うことをミッションとしています。公共性の高い寺院のような物件をDAOで運用し、必要なリノベーションフィーの資金調達を実施し、地域のハブとなる宿泊施設として活用します。
第一弾の舞台は、世界有数の旅行サイト「Lonely Planet」で2位にランクインした熊野古道がある那智勝浦にある色川(いろかわ)地区。現在は、市町村合併により公式な地名としては存在しませんが、地元の人々は今でも自らを「色川の人間」と称しています。
現在、約300人がこの地区に居住しており、その60%以上が都心からの移住者。この地域の住民は年々増加しており、変化に対して開かれた姿勢を持つことから、DAOなどの新しい技術や概念も受け入れやすい環境があることもこの土地の魅力です。
色川村にある楞厳寺(りょうごんじ)を、PlanetDAOで最初の物件に選びました。楞厳寺本堂とその本堂までの道の石段及び石垣は2021年に国の登録有形文化財として登録されました。しかしながら、先代住職の逝去に伴い、檀家数が4名にまで減少して、現在は財政面でも運営を担う人材面でも不足しており、地域だけではその保全が困難な状況に陥っています。
どのように歴史的文化財を維持・運営していくのでしょうか。PlanetDAOのビジネスモデルについて、教えていただけますか。
株式会社PlanetDAO001が物件を所有し、出資を集めます。出資者には株式会社PlanetDAO001の株を購入していただきます。リノベーションフィーの投資を回収するために出てくる物件の利益を出資者に配当することが可能になります。株は議決権も付くので、物件所有会社の事業の方向性を議論、決議することもできます。
物件のメンテナンスや宿泊施設の運営などの管理運営は株式会社Planet Labsなどの第三者の会社が行いますので、出資者が物件の管理運営をすることはありません。
特徴的なものとして、PlanetDAO001の株は、議決権のみの株を地域住民や専門家にお渡しします。その理由は、対象物件に対して地域住民の声を反映させるためです。
私たちは「コレクティブパーパス (共通の目的)」を掲げています。物件の公共性の高いものであればあるほど、地域住民の声を反映することが大事だと考えています。例えば、色川の事例でご説明すると、登録有形文化財の称号を保持し続けること、楞厳寺の一部エリアは地域住民が利用できること、PlanetDAO001が所有する楞厳寺の所有権を第三者に売却・譲渡する場合は地域住民の承認を得ることが挙げられます。
また、宿泊施設から出る利益を投資家への配当へ回しています。旅行者向けに宿泊施設を提供する場合、OTA(Online Travel Agent)で販売することが多いですが手数料(20%-25%)が発生する為、DAOメンバーが知人友人に紹介したりマーケティングをすることで手数料分が利益として入ってくるインセンティブが働きます。
DAOの特性である「みんなで投資したお金(トレジャリー)を増やす」という点と「多彩な人々(国籍、職種、性別、年齢を超えた構成)によって運営される」という点が活かされるビジネスモデルになっています。
今後の展望について教えていただけますか?
まずは第一ロケーションでの資金調達を5月15日ー6月28日で実施します。2025年春にはリノベーションを終わらせ、宿泊事業を開始させたいと考えています。2025年内に追加10件の資金調達を見ています。また、必要免許の取得後、ブロックチェーン上のトークンとして販売し、投資家の方々がより気軽に投資できる仕組み作りを計画しております。
募集開始から2週間経ちましたが、今のところの反応はいかがですか?
私の大学生の時からの友人が海外の人たちに日本文化を紹介するYouTubeのチャンネルを運営していて、普段PRなどはしないそうなのですが、PlanetDAOのことはぜひ紹介させてほしい、と言ってくれて出演させてもらいました。
I Spent ¥1,000,000 On This… How About You?
日本語、英語どちらもウェブサイトはあるのですが、現状、4/5以上の投資が海外からになっています。
現在、私は実際に投資を行った人々へのインタビューを実施しています。オーストラリアやアメリカの方々からは、先住民文化をもっと保護すべきだったとの意見を聞くことが多いです。また、パレスチナ系アメリカ移民の二世の方と話をした際には、戦争で建造物は失われたかもしれないが、文化は伝承できるとの考えを聞きました。多くの方からは、PlanetDAOを日本で成功させ、他国にも拡げてほしいという期待を寄せられています。
日本初、株式会社型DAOを採択
日本初である、株式会社型DAOを選択した理由を教えていただけますか?
一番の論点となったのは、DAOの中心である、出資に対する権利を発行する会社をどの法人格にするかでした。
長島・大野・常松法律事務所の殿村弁護士、小泉弁護士に仕組みづくりにご協力いただき、資金を調達し、収益を分配するのに適した法人格だったことから、株式会社をリーガルラッパーとしての採択に踏み切りました。別記事にまとめておりますが、自民党Web3プロジェクト・リーダーである殿村弁護士と作成し、記者会見での発表も行いました。
PlanetDAOに投資したい人はどうすれば良いでしょうか?
資金調達は2024年6月末まで行っております。商品に関して詳しく知りたい方は資料を公式ウェブサイトからダウンロードできます。また、説明会を毎週実施しておりますので、詳細はPlanetDAO公式サイトをご覧ください。
あわせて、公式X(旧Twitter)とニュースレターで情報発信しておりますのでご登録いただけますと幸いです。
投資家の皆さまにはオンラインコミュニティへ参加いただき、日常の会話や最新情報の共有はもちろんのこと、事業方針に対する投票も行います。さらに、年に一度は色川で投資家の集いを開催し、地元住民と協力して石積み技術で階段を作ったり、棚田での作業を行ったりする予定です(もちろん、楞厳寺への宿泊も!)。多国籍で多様なバックグラウンドを持つ投資家コミュニティが形成されるため、とてもおもしろい活動になると思います。皆さまのご参加もお待ちしております。
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