ガイアックスの経営会議では、「未来会議」という時間を3ヶ月に1度とっています。
2024年初回の未来会議で扱ったのは、経営会議メンバーが思い描く「つくりたい未来の社会」について。
今回は、あえて主語をガイアックスにするのではなく、メンバー個々人を主語に「それぞれがつくりたい未来の社会」について語り合った内容をお届けします。
後編では、以下の話をご紹介します。
・“幸せ”を自己定義する「人」と「チーム」の重要性
・混沌とした未来で、事業を営む者に問われる倫理観
・ポスト資本主義を体現する会社のロールモデルへ
・「理想を語りながら商売をする重要性」の再認識
※経営会議の発言内容は基本的にすべて文字起こしし社内に公開されています(ガイアックス・フラットカルチャー:議事録公開 )。ただし、秘密保持契約の該当事項や、インサイダーとなりうる可能性のある事項については記載・公開しておりません。
前編はこちらからご覧いただけます
プロフィール
荒井 智子
コーポレートカルチャー推進室責任者
2013年4月に新卒入社。2年間法人・海外営業、社長室立ち上げなどを経て、2015年に社内起業プロジェクトでケータリング型社員食堂をスタートし、2017年にtiny peace kitchenとして事業化。2022年にブランド&カルチャー推進室(現コーポレートカルチャー推進室)の責任者に就任。ガイアックスにただようカルチャーを言語化することを得意とする。
中村 真奈
株式会社CREAVE代表取締役社長
重枝 義樹
ソーシャルメディアマーケティング事業責任者
野澤 直人
執行役兼取締役・株式会社ベンチャー広報 代表取締役
上田 祐司
代表執行役社長
“幸せ”を自己定義する「人」と「チーム」の重要性
中村:私の実現したい社会は、先ほど話された管さん、荒井さんと似ているなと思いながら聞いていました。
私が事業を通じて実現したい世界観は、クリエイターさんたちの好きや得意が仕事になるなかで、彼らの日常がちょっと楽しくなるきっかけをつくることです。
個人的には、幸せは人が定義するものではなくて、自分が幸せだと思えれば幸せだと思っています。
だからこそ、自分が本当に何がしたいのかとか、ありたい姿であられるのかに納得感を持って生きていける人が増えるというのが、本当の意味で幸せな人を増やすことだなって。
思い描く未来に対して、何かしら価値がある事業に自分は携わっていきたいので、いまの事業は自分のライフミッションにドンピシャで、ありがたいなと思っています。
あと、別の観点で「私は何をしているときが幸せなのか」を考えたときに、「ことに向かっている」人が集まっているチームで価値ある仕事にチャレンジしている状態が幸せだなと、最近感じています。
荒井:「ことに向かう」というのは、自分の軸を持てていると、人からの見え方とかではなく、自分が向かっていることに集中できることなのかなと思ったのですが、そこは関連しますか?
中村:めっちゃ関連すると思います。他者からどう見られているかではなくて、事業として目指している社会や未来に1人ひとりがワクワクして、納得して、それに向かって動いているという状態。
加えて、お互いのやりたいことをメンバーが理解して尊重し合えている状態を保てていると、本当に気持ちよく働けるなと感じます。
ガイアックスはそういうカルチャーだと思うし、自分もそういう組織づくりをしたいと思っていて。
そういう組織であれば、正直どんな事業ドメインでも同じぐらいの熱量で頑張れる気がするんです。
自分が理想とする組織をつくって、価値あるものに対して本質的に向き合っている状態。それが1番のモチベーションだなと、最近考えています。
混沌とした未来で、事業を営む者に問われる倫理観
重枝:中村さんのお話とテイストが違うのですが、僕は直近2~3年ぐらいで世のなかが大きく変わっていくと予想しています。SNSが世のなかを悪くした側面もありますが、本質として起こっているのは「分断」です。
「子どもをタブレットやスマホなどのデバイスに触れさせない方がいい」という議論があったとして、世の中にはデバイスに触れさせる人も触れさせない人もいる。これが「分断」です。
この「分断」が進むなか、情報に対して主体的に動けるリテラシーの高い人とそうではない人たちの間で溝がますます開き、結果として世のなかのコンフリクトも深まっていくと考えています。
このようななか、「事業を営む」というのはどういうことだろう、と。
一発大逆転するようなプロダクトをつくって、社会をガラッと変えることは現実的に期待できないかもしれませんが、事業を営んでいる人は世のなかへの影響力が比較的大きい人たちです。
その人たちの選択の積み重ねが将来の平和や次の新しい社会に微々たるものだとしてもつながるんだと信じながら、時に損をしても勇気ある選択をできるかが、事業を営む一人ひとりに突き付けられると思っています。
荒井:企業としての価値観とか、フィロソフィーに関わるような話を聞けたのがうれしいし、そういう観点を大事にしていけたらいいなと思いました。
峯:高度に効率化されすぎた社会というのは、そろそろ破綻がはじまっているなと感じているところもあります。僕らはインターネットの技術の上に乗っかっている会社だけど、技術を使って何かをするというところも、その技術を正しく使って何かをする集団でありたいなと。
いまのお話の中で共感したポイントとして、「正しくありたいな」というのはまさにその通りだなと思いました。
荒井:「事業をつくる人間は、社会の中では影響力が強い方の人間だ」というのもハッとするし、そういう人たちがどういう倫理感を持って、自分たちの活動をしていくのかは本当に重要で。
取ってつけたような行動指針や目標よりも、そういう本質的に大切にしようとしている倫理感とかの方が大事だと思っているので、ガイアックスとしての共通の正しさとか倫理感みたいなものは話し続けていきたいと思いました。
ポスト資本主義を体現する会社のロールモデルになりたい
荒井:では、次に野澤さん、お願いします。
野澤:僕はポスト資本主義に興味があります。
すでに言われている話だと、『「公益」資本主義』(著者:原丈人)や『社会的共通資本』(著者:宇沢弘文)などの考え方に共感しているのですが、テーマが大きすぎてどこから手をつけていいかわからない。ただ、意外と身近なところに手がかりはあるなと思っていて、その点で僕はガイアックスという会社に大きな可能性を感じています。
ガイアックスは上場企業だけれども、資本主義一辺倒の会社ではないと思うんです。
時価総額、売上、利益の話は、経営会議だけじゃなく、各事業部の中でも議論されつつ、同時に自分のやりたいことや自分や社会の幸せとかの話がたくさん出るし、お金ではない以上の何かの価値を求めてガイアックスに集まってくる優秀な方が大勢いる。これは、やっぱりガイアックスのいいところ。
もしガイアックスがポスト資本主義的な会社のあり方のロールモデルになって、それが世のなかに広がっていったら、すごくいいなと思うんです。
売上や利益はもちろん大事ですが、ESG視点やパーパス経営が結果として企業価値を高めるように、売上利益が唯一の絶対的な価値指標か?というと「それは違う」とガイアックスメンバーの多くがそう思うのではないでしょうか。
まだまだ道半ばではありますが、これからもガイアックスを起点にポスト資本主義的な何かをつくれたらおもしろいなと思っています。もちろん売上利益の足もとを確保しながらですが。結果としてロングスパンでは企業価値を高めることにつながるとみています。
重枝:自分も、宇沢先生の本は度々読んで参考にしています。
荒井:胸が熱くなりますね。ポスト資本主義の本を題材にしたディスカッションをする会とか開催したくなりました。全社総会の場とか、直近の事業の話ではないけれど、そういう会で開催してても面白そうかも。
野澤:事業とはまた違う話をしてみるのも面白いかもしれませんね。
荒井:みなさんの観点とか価値観に触れて、何かが動き出すということは、ガイアックスメンバーがガイアックスコミュニティに属している価値になるのではないかなと。
事業の具体的なフィードバックなどは必要なところで個別にやりつつ、ガイアックスのみんなで時間を同期して分かち合うなら、今日のような時間が大切なのではというヒントをもらった感覚があります。
「理想郷と商売の同一性」の再認識
荒井:それでは、最後に上田さん、お願いします。
上田:先日インドの20年以上続いているエコビレッジに行ってきたのですが、これが結構すごくて、エコビレッジの中ではみんなが信頼しあって助け合いながら生きていて、みんなほぼお金を介さずに幸せに生活しているんです。
そこで生まれ育った人の話を聞いてみると、そのエコビレッジから出て行くのが怖いという話を聞いて、ストレスなく幸せに暮らしている世界観はいいなと感じました。
一方で、サービスを鍛え上げることもいいなと思っていて。
今度小6の娘と1日だけシェアキッチンでピザ屋さんをやるんですが、事前にシェアキッチンに視察に行った際に、彼女が当日の動きや必要品の確認をシミュレーションしていたんですね。
来た客がどうなのかと感じて、どれをどう行動してサービスに落とし込んで……と彼女なりにがんばって考えていたのですが、僕としては、もっともっと鍛え上げるのをやりたいなとも思って。
そこで気づいたのは、やっぱり「人と人がつながって、相手の事情とこちらの事情をミックスさせて最適解を測る」というのが好きなんだなと。
そして、この2つは、違う社会のように見えて同じ世界観だなぁって思っています。
荒井:上田さんのなかにある2つの世界観が如実に表れているお話だったのではないかなと思いました。
前半は、お金を介さないエコビレッジ、資本から離れたある種のユートピアのような世界観。
後半は、どちらかというと、お客さんを満足させるために徹底的にやり込むみたいな、商売の基本みたいなところ。商売人としての上田さんみたいな。
違うようで、根本は同じというのは、とっても上田さんっぽいですね。「人と人がつながって、相手の事情とこちらの事情をミックスさせて最適解を測る」のが好きというのは、ガイアックスの事業だけじゃなくて、組織のあり方にも通じるところなのかなと思いました。ガイアックスのメンバーとガイアックスの関係性もそういう考え方がコアにありますよね。
(編集 ヤマグチタツヤ)