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社内でコーチングを広めることで、更にチームワークあふれる会社へ
〜サイボウズ株式会社・綱嶋航平さん〜

最終更新: 2023年11月10日

時代が大きく変化する今、個々人が自主自律的なあり方に進む上で「コーチング(*1)」が再び注目を浴びていると感じています。その中で、コーチングという仕事だけでなく、普段のコミュニケーションにもコーチング的なアプローチを取り入れていくことの重要性が高まっていると思います。リモートワーク推進など働き方改革が進む中で、社内のコミュニケーションに課題を感じている方々も多いのではないでしょうか。

今回お話を伺ったのは、サイボウズ株式会社の綱嶋航平(つなしま・こうへい)さん。新卒採用チームのリーダーを務めながら、コーチとしても活動されています。今回は、綱嶋さんとコーチングの出会いから、サイボウズ社での社内コーチング講座の導入に向けて動いてきたのか、その経緯と想いをお話いただきます。

*1: コーチングとは、相手の話に耳を傾け質問を重ねることにより、相手の潜在的にある想いや答えを引き出し、目標達成に向け行動変容を促すためのサポートです。

コーチングの学びを還元して、チームワークあふれる会社にしたい

ー綱嶋さんとコーチングの出会いは?

僕が最初にコーチングと出会ったのは、2018年ですね。ガイアックスの管さん(ソリューション事業本部長)とイベントで対談して仲良くなった後に、「ティール組織について少人数で話す集まりがあるんだけど、来ない?」と言われて、渋谷の貸し会議室に行ったんです。そこで、今サイボウズで社内コーチング講座の講師をしていただいている小寺毅さん(株式会社はぐくむ代表取締役)と初めてお会いしました。

小寺さんの自己紹介で覚えているのは、「個人がもっと自分らしくあれる社会を目指して、コーチングや組織コンサルの活動をしている」ということ。当時の僕は小寺さんにすごく共感して、彼の世界観を作っているものの一つがコーチングだということで、興味を持つようになりました。

しばらくして、管さんから「コーチ養成講座をやるんですが、綱嶋さんどうですか?」というお誘いの連絡をいただいたんです。管さんから送られてきたURLを開いたら、講師は「小寺毅さん」と書いてありました。以前小寺さんの世界観に共感した僕は、その場で即決してコーチ養成講座を受けることを決めました。

ちなみに、その時はちょうど新卒3年目で、人事の仕事をしていました。キャリア的にも人事だけではなく、人事と何かを掛け合わせていこうというところで、もともとウェルビーイングや人のエンパワーメントには関心を持っていたんです。それもあって、コーチとして活動したいというよりも、むしろコーチングを学ぶことが会社や自分に仕事にいい影響があるんじゃないかと思い、コーチングを学ぶことを決めました。

ー社内コーチング講座は、どういう経緯で導入に至ったのでしょうか?

2020年の1月にコーチ養成講座の合宿で、講座の同期たちと「何かチャレンジするとしたら?」というテーマで話している時に、「サイボウズでコーチングを広めたらどうか?」と言われたんです。たしかに自分の心に手を当ててみると、自分がコーチングを学んだ先では、大好きなサイボウズのメンバーに還元して、よりチームワークあふれる会社になったらいいなと思っていました。

そこで、最初はサイボウズ社長の青野とランチの予定をいれて、コーチングについて話すことにしました。青野自身は、社長に就任してから5-6年ほどはコーチングを受けていたのですが、当時受けていたコーチングは短い時間でアクションを決めてPDCAを回していくサポートをしてくれる、といったもので、自主自律的な動きを生み出すようなアプローチではなかったと。

それを聞いて、「僕が学んでいるのは、ティール的な自主自律の生き方を大事にしているコーチングです。」と伝えたら、青野も興味を持ってくれたんです。そこで小寺さんとガイアックスの管さんに来社いただき、青野と僕を含めた4人でお話する機会を設けて、自律分散型の組織づくりにおけるコーチングの必要性について議論しましたね。そしたら、小寺さんと管さんが帰られた後のエレベーターで「コーチング面白いね」と青野が言ってくれて、「これはいけるんじゃないか?」と思いました。

ちょうどそのタイミングで、「Cybozu Firestarter」という社内の新規事業立案制度に近しいようなものがあり、コーチング講座でエントリーすることにしたんです。講師は小寺さんだったのもあり、青野には好印象。それもあってスムーズに進み、結果採用されることになりました。思いのほかスムーズに進められた印象です。

ースムーズに進められた要因は何だったのでしょうか?

やはり、社長である青野の共感を得られたことだと思います。サイボウズも日本の拠点だけで約600名ほどの社員がいて、それなりに規模が大きい会社です。だから「コーチングを導入する」となった時に、「何それ?」と思うような人は一定数いるのは仕方がないと思っていました。その中で青野が「コーチングいいね!」と言ってくれたからこそ、「青野さんがいいと言うなら。」とコーチングをよしとする雰囲気が広がったと思っています。

コーチング講座終了後にコーチングの文化を浸透させていく上でも、マネージャーや経営層にも働きかけやすくなる空気感を作れたと思っています。社内の雰囲気を醸成していくために、誰にアプローチをかけながら進めていくかは、重要なポイントだと感じていますね。

ー導入が決まってから社内での反響はいかがですか?

導入が決まってからは社内掲示板にて挙手制で募集をしました。対象が約600名ほどいる中で100名ほどが申し込んでくれました。実際の講座では約50名ほどがコンスタントに受講してくれています。18時~20時の開催のため、育児などの都合で受講が難しいために動画で受講していただいてる方もいます。

サイボウズはチームワークがとても重要視されているカルチャーなので、コーチングとチームワークのつながりを意識して伝えました。直接的な声かけは営業部やマネジメント層でキーパーソンとなるような人だけ。キーパーソンの方々が社内スレッドで「コーチング講座に参加します」と発信してくれたのも、募集がうまく行った要因だと思っています。
実際に講座が開始して、「コーチング難しいです、、、」などの声はいただいていますが、参加者の学びにつながっているような印象を持っていて、初速としては手応えを感じています。

Kohei.Tsunashima
Kohei.Tsunashima

人生の大航海を進む中で、心身を整える「いつもの場所」でありたい

ーコーチングを学び始めて綱嶋さんご自身に起きた変化は?

コーチングを学ぶほど、自分のいろんな側面を知ることができました。例えば、傾聴している時に違うことを考えてたり、自分が話したいのを抑えられずに話してしまったり。そんな自分のエゴに気づかされることがたくさんありました。

僕がコーチングを学んでいる時に、講座の同期とペアコーチングをたくさんする中で、徐々にいろんな自分を客観視できるようになりました。講座中に繰り返し言われたのが、コーチのあり方がコーチングセッションの結末を左右する、ということ。コーチングを学ぶことは、自分のあり方を考えることにつながると思っています。

ー実際にご自身の変化を感じた瞬間はありましたか?

チームメンバーから「綱嶋さん、変わりましたね。」と言われた時ですね。現在は新卒採用チームのリーダーとして、僕以外の7名のメンバーと週一で1on1をしています。そこで「綱嶋さんの聞いてくれる姿勢や、話す間合いが変わった気がします。」と言われたことを覚えています。他にも、1on1後に、「綱嶋さんにコーチングされた、、、すっきりした。」と社内スレッドで書き込んでくれるメンバーがいたりもしました。コーチングを学んだことが、サイボウズでのマネジメントの仕事でも役に立っていると感じています。

ー最初はコーチとして働くとは考えていなかったところから、現在コーチとして個人でも活動しているところに至るまで、どういった気持ちの変化があったのでしょうか?

採用の場面でキャリアに悩む学生と話していく中で、一人の人間として何かできないかと思っていたんです。その選択肢の一つとして、人事としてだけではなくコーチとして関わる選択肢が浮かんできたんです。コーチングを学びながら自分自身と向き合う中で、自分の人生を自分で選択して生きていくことが大事だと常々思うようになりました。「自分は自分で人生を選択できているのか?」と考えた時に、ただコーチングを本業に持ち帰って活かすだけではなく、自分自身がコーチとして誇りを持って生きることを選択したいと思うようになりましたね。そんな自分の心の声に従って、コーチとして活動することを決めました。

ー綱嶋さんがコーチとして大切にしていることは?

一人一人が船に乗って大海原を航海しているからこそ、穏やかな時もあれば嵐の時もあると思うんです。だからこそ、クライアントがそれぞれの航海に進んでいくために、心身を整えるための「いつもの場所」であることを大切にしています。

おそらく僕がコーチング講座を学び始めた時だったら「傾聴を大事にしています。」なんて言っていたと思います。でもそういったものは、あくまでツールでしかない。大事なのはコーチが何を信じているかだと思っています。クライアントがどんな状態だとしても、それに合わせた関わりができるように、僕自身がどうありたいのか問い続けていきたいです。

Kohei.Tsunashima
Kohei.Tsunashima

可能性を秘めた人にコーチングが届いて欲しい

ー社内コーチング講座の後は、どういった展開を考えていますか?

まずは、今回の社内コーチング講座で学んだメンバーが、所属するチームで学びを発揮していくことを期待したいですね。その先には、人事の正式な研修として導入して、特にマネジメント層がコーチング的なアプローチをしていけるサポートをすることもあるかもしれません。それぞれのチームにも、まだ見ぬ可能性を秘めている人たちがたくさんいるはず。そういった人たちにコーチングが届いて欲しいなと思っています。

社内コーチというポジションを作っていくかは、それがサイボウズにとって本当に求められているかじっくり考えていきたいですね。個人的には、独立していろんなチームに対して1on1をしていくことは面白そうだと思っていますが、会社としてコーチングがどう浸透していくかは、コーチング講座を導入したばかりなので、どうなっていくかがまだ見えないですね。

いずれにせよ、サイボウズの文化とコーチングの親和性を強く感じているからこそ、ティール的な自主自律型のマネジメントが浸透していくために動いていこうと思います。

 

インタビュー 荒井智子
ライティング 宇田川寛和

編集後記
コーチングを学びながら、ご自身と向き合い続け変化してきたことがとても伝わってきました。サイボウズ社での取り組みが、多くの会社の力になって欲しいと強く願っています。これからの展望が楽しみです!

荒井 智子
2013年4月にガイアックスに入社し、2年間法人営業・海外営業、社長室立ち上げなどを経て、2015年に「働く人の心と身体を健康にしたい!」と会社に訴え、社内でケータリング型社員食堂をスタートし、2017年にtiny peace kitchenとして事業化。2020年に社内コーチプロジェクトを発足し、2022年にブランド&カルチャー推進室の責任者に就任。
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