高齢化や人口減少、環境問題など国内や海外の様々な課題を社会解決していくために何をするべきか。
それは、「既存の枠組みにとらわれないイノベーティブな人たち」を生み出していくことが解決策の一つではないでしょうか。
そのために、固定概念がなく、多感な中高生から社会やビジネスに触れるきっかけを作ること。そうやって未来を見据えた人を多く育てることが非常に重要な観点の一つだと考えています。
ガイアックスでは、2020年7月から中高生を対象とした「起業ゼミ」を実施し、過去2年間で起業ゼミを実施してきた学校の数は10校以上にものぼります。この起業ゼミは、出資判断も伴う実践的な起業家教育プログラムです。中高生から起業やビジネスに触れる機会を設けることで、「起業家」を含めた幅広い進路選択が視野に入るきっかけにもつながり、生徒の事業アイデアを正式に出資対象にすることで、熱意ある学生と事業を共創する機会ともなっています。
桐朋・海城・武蔵中高との「都内男子校合同 起業ゼミ」1日目終了しました!
2日目(来週)までに、リーンキャンパスを書き、10人以上を目標にヒアリングを実施してもらいます。楽しみです!https://t.co/PwnFrhKZGd https://t.co/5yw9pTUJKK pic.twitter.com/YpmL8eiyHh
— 田中 嶺吾 (@reigotanaka) August 11, 2021
今回は、経済産業省「第11回キャリア教育アワード中小企業の部」で「起業ゼミ」が奨励賞を受賞したことに合わせ、起業ゼミを担当している田中嶺吾さんと、田中さんの上長である流拓巳さんによる対談形式で、起業ゼミに込められた想いをご紹介していきます。
田中 嶺吾
管理本部
2000年生まれ。2019年創業1年目のスタートアップに入社。ECアパレル事業や採用支援事業の立ち上げに参画。2020年10月にガイアックスへ入社。ポテンシャル採用や事業部・投資先の採用支援に携わった後、「ガイアックス起業ゼミ」を担当。
流 拓巳
管理本部長
2017年新卒入社。就活を経てガイアックスの内定承諾をした後、内定者インターンとして、半年間 新規事業のマーケティングを未経験で担当。さらに半年間、同事業の関西拠点立ち上げのため単身大阪に移り拠点の統括。新卒入社後は、1年目に新卒採用担当、2年目に新卒採用マネージャーに就任、3年目に人事支援チームの立ち上げ及びマネージャー就任。4年目に労務マネージャーを兼任、その他経営会議に参画など。この度2021年1月(4年目)から人事総務部長に就任。
起業ゼミとは?
起業ゼミでは、ガイアックスのスタートアップスタジオのメンバーが、スタートアップを創出するために必要なステップをレクチャーし、生徒は実際に事業アイデアを考え仮説検証を行います。
プログラム最終日には各生徒がピッチを行い、将来性のあるビジネスアイデアにはガイアックスから出資判断を実施。実際に、ドルトン東京学園で実施した起業ゼミでは、当時中学2年生の堀内文翔さんが200万円の起業賞を獲得し、現在も一緒に事業の立ち上げを行なっています。
2020年7月にドルトン東京学園での取り組みから始まり、これまでに都立千早高校、島根県立隠岐島前高校、山形県立米沢東高校といった学校とコラボレーションをしてゼミを実施しています。
≫ガイアックススタートアップスタジオ「起業ゼミ」の詳細はこちら
スーパーJチャンネルでガイアックスの起業ゼミで生まれた堀内さんのプロダクトが放送されてます!! pic.twitter.com/vDo2mNi6c8
— takahashi hayato (@tkhs_hyt) September 21, 2021
人と向き合う仕事を探し、ガイアックスと出会う
流 まず、田中さんを初めて知る読者の方のために、自己紹介をお願いします。
田中 2020年10月にガイアックスに入社して、業務委託として働いています。入社後はポテンシャル採用(ビジネス職)や各事業部・投資先の採用支援に携わった後、現在は人事支援部でエンジニアのポテンシャル採用を担当しながら、スタートアップスタジオで起業ゼミのプロジェクトを担当をしています。
流 田中さんはもともと人事の仕事をしたいと言っていたよね。それはどうして?
田中 ガイアックスに入社する前は別のベンチャーで働いていたんですけど、仕事している中で、人に向き合う仕事ってとても面白いと感じていたんです。
人と向き合うことに自分の適性があると思ったし、周りもそれを認めてくれていました。
でも、当時働いていたのは創業初期のスタートアップだったので、いわゆる人事の仕事は多くありませんでした。社内のイベントや飲み会の調整をしたり、アルバイトの面接もしていましたが、もっと人事に特化した仕事をするためには別の環境しかないだろうと思って。
WantedlyやYOUTRUSTで人事系の仕事を探した結果、ガイアックスに出会いました。
流 ガイアックスに入社した決め手は何だったんですか?
田中 1つは、会社のカルチャーが面白いと思ったからです。上場してからある程度時間が経っているためか、独特のカルチャーが醸成されているなって。
例えば、これまでに僕が経験した会社だと、情報をオープンにするカルチャーが全くありませんでした。社長しか知らない情報があったりしたのに、ガイアックスは情報をオープンにしていて面白いですよね。
もう1つのきっかけは、オンライン就活のイベントに参加したことです。実は前職で似たような事業をやっていて、勉強のために参加しました(笑)。僕が参加したのは、管さんや流さんが登壇している回だったんですよ。オンライン就活の世界観がとても素敵で、共感しました。
流 聴いてくれていたんですね(笑)。
高い目標を掲げ、視座を上げる仕事に取り組む日々
流 ガイアックスでは、インターンだと月に一回、社員は3ヶ月に一回、ただの評価面談ではなく「どんな仕事をしていきたいか?」をすり合わせる時間をとって、それを元に業務内容や報酬を決める仕組みがあるよね。
最初、僕とどんな話をしたか覚えていますか?
田中 最初に話したのは、「自分がインターン終了時にどんな状態になっていたいか」を言語化してすり合わせましたね。
前職では1on1もなく、一週間を通して上司と会話がないこともあったので、ガイアックスでは自分自身のライフプランに一緒に向き合ってくださるメンターの方がいること自体が驚きでした。
流 インターン終了時にどうなっていたいかと聞かれて、すぐに答えられましたか?
田中 すぐには言葉が出てこなかったです。
ただ、当時は人事の仕事がしたいという想いだけは明確だったので、「上場企業のCHRO(最高人事責任者)を任せられるような状態になる」という、高い目標を設定しました(笑)。
流 そうそう。高い目標を掲げるのはいいと思った。実際にはどんなことを考えて仕事していましたか?
田中 経営戦略や採用など、より上のレイヤーのことに頭を使ったり関わったりできるようになりたいなと考えていました。
ただ単に採用に関する知識をつけるだけではなく、ガイアックスの経営戦略やスタートアップスタジオの組織のあり方についてもインプットしたり、自ら考えたりしていました。
流さんにも自分が目指す姿を伝えていたので、採用のブランディングのガイドラインを作らせてもらったり、ガイアックスの経営人材会議(*1)に参加させてもらいましたね。
(*1)経営会議の中でも、特に人事領域についてディスカッションする3ヶ月に一度の会議。
流 当初田中さんが関わっていたのは、新卒採用であるポテンシャル採用でしたね。
その中でも、ガイアックスは世の中の課題解決に取り組んでいけるような、事業を作っていけるような人が採用ターゲットなので、抽象度が高くて難しい。なんとなくみんなの中での共通認識はあるけど、そこをきちんと言語化するような仕事に携わってもらいました。
経営会議にいるメンバーは役員や部長なんですけど、3ヶ月に一度の経営人材会議に、入社して間もない田中さんも参加していました。
それは田中さんにとってどんな意味のある仕事になりましたか?
田中 経営会議に参加することで、自然と経営目線で採用のことを考えるようになります。
自分の視座や視点を上げるという意味で非常に貴重な経験でした。
高校生の頃から抱いていた教育に対する想い
流 田中さんは高校生の頃から教育業界の課題解決に興味を持っていたそうですね。
それって結構早いなと思ったんですけど、何かきっかけがあったんですか?
田中 一番のきっかけは、高校3年生の夏にNPO法人SOMAで短期インターンをしたことです。SOMAは、僕の高校のOBである瀬戸さんが代表を務めていて、高知県土佐町で教育系の事業をやっています。
流 インターンをしてみてどんなことが印象的でした?
田中 都会にはない豊かさを感じました。
食べ物も美味しいしですし、土佐町は食べ物がそこら辺に生えてくるので、「なんだ、生きていけるじゃん!」と思ったことが印象的です。
それまでは、いい大学に入って大企業に入って、お金を稼いで貯蓄をしないと生きていけないと思っていました。
流 確かに、東京にいるとモノが発生する現場って見ないですもんね。
魚も切り身で売っているし、野菜も袋に入って並んでいるし。そもそも、どうして教育に興味があったんですか?
田中 シンプルに、子どもが好きというのはありますね。
僕が小学生の頃、母が育児施設のような場所で働いていたので、夏休みの自由研究で赤ちゃんと遊んでレポートにしたこともありました。
それと、僕は高齢者の方が豊かな生活を送れる社会よりも、子どもたちが豊かな生活を送れる社会を実現することの方が、自分の取り組むべきことだと考えているんです。
流 実際の現場を見て、教育に関して何か感じることはありましたか?
田中 そこでの教育のあり方が、意図された世界に引き込むような教育のやり方ではなく、むしろ引き出すような教育だと感じました。
例えば進学校だと、教室には机が並べられていて、放課後は自習してください、という感じだと思います。一方で、SOMAには事務所兼フリースペースのような場所があって、子どもたちが放課後に集まれるような環境が用意されていました。
そこには机も椅子もなくて、遊んでもいいし、勉強してもいい。また、子どもたち以外にも様々な人が出入りできるようになっていて、観光に来た外国人の方が中の様子を見ていくこともあるし、高齢者の方がSOMAのスタッフにパソコンの使い方を聞きにくることもありました。
用途が決まっていないスペースで、子どもたちがいろんな世界と出会える接点が整えられているという点で大きな違いがあると感じました。
流 そこでの経験が、その後の田中さんにどんな影響を与えたんですか?
田中 まず、自分自身がいろんな世界との接点を持つことが大事だと思うようになりました。世界というのは、考え方や人や価値体系や思想などを一括りにして「世界」と言っているんですけど。
SOMAでの経験を通して、自分自身がもっといろんな世界を見ていく必要があると思い、大学生時代にはマレーシアの民族と一緒に暮らしてみたこともあります。
田中さんが狩猟採集民「プナン」と過ごした経験について、詳しくはこちらの記事をご覧ください。
≫生きることをもっと“楽”に、新たな世界との出会いを創造する
以前は、自分自身が「こうしなければいけない」というような、1つの価値体系の中で息苦しさを感じていました。でも、いろんな人や世界と出会うことでそこから解放された経験があるんです。
SOMAで出会った子どもたちの、のびのびと学んだり遊んだりしている姿を見て、意図された世界に引き込むような教育のやり方ではなく、引き出すような教育ができないかなと考えるようになりました。
起業ゼミを通して、新たな世界と出会ってほしい
流 当初はポテンシャル採用を担当していたところから、どんな流れで仕事内容が変わっていきましたか?
田中 最初はポテンシャル採用の中でも、ブランドのガイドラインを作ったり、座談会や短期インターンのプロジェクトを担当することが多かったです。そこから徐々に、ガイアックスの投資先の採用支援にも携わるようになっていきました。
流 ガイアックスの中で、仕事が変わっていく時ってどんな要因があるんですか?
田中 まず、本人の意思によるものが多いです。あとは、他のメンバーの参画によるものとか。
僕はもともとCHROになりたいという思いがあったので、(ポテンシャル採用は一般的にも特殊な採用形態のため)ガイアックス以外でも通用するような採用の力をつけたいと考えるようになりました。
そこで、別の会社の様々な職種や年代の採用に携わりたいと思い、投資先の採用支援をさせてもらうようになりました。
流 そして最終的に辿り着いたのが、スタートアップスタジオの起業ゼミの仕事と、エンジニア職のポテンシャル採用の仕事なんですね。
これらの仕事は田中さんにとってどんな意味があるんですか?
田中 採用の仕事では、ガイアックスの思想やカルチャーを候補者の方に伝えて、人と会社をつなぎます。これは、ガイアックスという1つの世界と人をつなぐ仕事だと捉えています。
起業ゼミは、起業という、学校教育で教わる価値体系とは別の場所に存在しているような世界を子どもたちに伝える仕事だと思っています。
僕は自分の使命を「新たな“世界”との出会いを創造する」こととしているので、子どもたちが起業という世界と出会う接点を作り出すことで、自分のやりたいことを実現できている感じています。
流 起業ゼミは、田中さんがお話ししていた「引き込むような教育」とどんな違いがあるんですか?
田中 僕が起業ゼミでやっていることは、あくまでも、出会いを作り出す環境を整えることなんです。起業ゼミに参加したとしても、起業をするかしないか、キャリアをどう歩むかは人それぞれだと思っています。
流 今後の展望はありますか?
田中 今後は、起業ゼミをより多くの子どもたちに届けていきたいと思っています。そのためには、サステイナブルに運営する方法を考えないといけません。
その方法が起業ゼミを事業化することなのか、別の組織に移すことなのか、あるいは別の方法なのか。その辺りを検証しています。
いずれにせよ、起業ゼミは子どもたちの目線で考えることが大事だと思っているので、子どもたちがどう感じるか、どんな経験を得られるかということは常に考えていますね。
流 最後に、現在の田中さんから、未来の田中さんに対してメッセージをお願いします。
田中 僕の人生は、人に支えられてきた人生だと思っています。
目の前のことに集中すると、同時に複数のことを考えるのが苦手なので、実は支えてくれている周りの人たちに対する感謝を忘れずにいておいて欲しいですね(笑)。
≫ガイアックススタートアップスタジオ「起業ゼミ」の詳細はこちら
ライティング 黒岩麻衣
編集 遠藤桂視子
本文では割愛しましたが、田中さんが座右の銘にしている言葉が素敵なのでご紹介します。
「からっぽのうつわのなかに、いのちを注ぐこと。 それが、生きるということ」
これは「十歳のきみへ―九十五歳のわたしから(冨山房インターナショナル)」という本の中に書かれている言葉です。この本を小学校4年生の時に読んだ田中さんは、生きることはいのちを消費することではなく、0から積み上げていくようなことなのだと、考え方が変わったそうです。生きることに真摯に向き合っている田中さんが、これからどんな起業ゼミをつくっていくのか楽しみです!