清水 浩司
人事総務部・人事支援チームマネージャー、社長室マネージャー
1996年7月14日生まれ。日本大学法学部卒。大学1年生の時から当時社員5名のスタートアップだったユーザーライク株式会社でウェブマーケティングや営業など多岐にわたる業務を経験。その後、Weblio株式会社に入社し、学生ながら社員となり新規事業などを担当。2019年10月にガイアックスにインターンとして入り、2020年4月に新卒入社。同年10月に独立し一度退職するも、2021年2月に復帰し人事へ。現在は、経営会議メンバーも務める。
学生時代に起業を経験した清水さんは、2019年10月に「TABICA(現・aini)」にインターン入社し、マーケティング担当として広告運用や新規ホストの獲得、ゲストの集客などに携わったのち、2020年4月に新卒入社しました。その後、一度ガイアックスから独立し、2021年2月に復帰後は人事支援チームにジョイン。2022年4月に人事支援チームマネージャーに就任し、2022年8月には経営会議メンバーに選任されました。この数年は起業ゼミのメンターや起業部の立ち上げ支援など、採用担当の枠を越えて活動の場を広げている清水さんに、インキュベーション領域に取り組む理由やスタートアップのゼロイチで重要なこと、今後のビジョンについてお聞きしました。
「起業は誰にでもできる」。事業のゼロイチを支援し、地域経済から日本を盛り上げる
ーーまずは、清水さんの現在のお仕事について教えていただけますか?
ガイアックスの人事支援チームの責任者として、主にポテンシャル採用(新卒採用)を担当しながら、起業に挑戦する人を増やすために幅広く活動しています。
ガイアックスが運営する中高生向けの起業家教育プログラム「起業ゼミ」でメンターを務めるほか、最近では拠点を大阪に移し、関西の大学を中心とした起業部の立ち上げ支援や、京都市にあるオープンイノベーションカフェ「KOIN(Kyoto Open Innovation Network)」で起業や新規事業創出に関わる相談窓口を開く機会もいただいています。
ーーなぜ清水さんは、採用担当の枠を越えてインキュベーション領域に携わっているのでしょうか?
理由は2つあって、1つはスタートアップ創出が地域や日本全体に貢献すると考えているからです。
日本経済の見通しは今後どうなるかわからないと言われますが、岸田内閣がスタートアップ育成5ヵ年計画を打ち出したように、日本の産業復興にもっとも貢献するのがスタートアップの創出だと僕も信じています。とはいえ、そこでいきなり起業の数を増やすと言ったって、勝手に増えないわけで。なので、草の根的な活動ではありますが、起業したい人を支えられる存在になりたいと思っています。
地域貢献の面では、京都のブランド力をもっと海外に発信できたらと考えています。
大学時代にさまざまな国を訪れるなかで、京都には強いブランド力があると実感したのですが、それだけ歴史的な価値やブランド力があるにもかかわらず、借金が8,000億円以上に上るほどの財政難が続いている場所でもあって。そうした状況を放っておけないので、まずは京都市と一緒にスタートアップの文脈から地域を盛り上げていけたらなと思い、京都市のスタートアップ相談窓口のお仕事も「マーケティングや事業検証について、どんなことでも相談してください」という気持ちで全力で臨んでいます。
2つ目の理由は、学生たちが起業の楽しさに触れるきっかけをつくりたいという思いです。
僕は大学時代に起業していますが、1〜2年生の頃には「起業しよう」と考えたことはありませんでした。でも、2〜3年生でインターンを通してビジネスに触れるうちに起業の楽しさを知り、「起業は誰にでもできる」と思うようになって。そういった原体験があるからこそ、自分もきっかけづくりをしたいと考えるようになったのだと思います。
学生時代から幅広くビジネス経験を積み、事業立ち上げを通して学んだ「ユーザー視点」の大切さ
ーー学生時代のインターンではどのような経験をされましたか?
お花の定期便サービス「ブルーミー」を運営する「ユーザーライク株式会社」でインターンをしていたときに、ゼロイチの事業立ち上げを経験しました。
マーケティングや営業などあらゆる業務を担当しましたが、いまほど「スタートアップ」の言葉が知られていなかった2016年当時に、事業立ち上げの大変さやおもしろさを現場で学べたのは大きかったですね。
その後、2017年からはオンライン辞書Weblioを運営する「ウェブリオ株式会社(現GRASグループ株式会社)」へ移りました。
その会社では、まだ学生にもかかわらず社員として働き、SEOライティングや新規事業、経営企画など幅広い業務に携わらせていただいて。代表の辻村さんや創業メンバーの森さんにも目をかけていただき、お二人からいろいろとフィードバックを受けるなかで自ずと経営目線が培われていきました。
ーーその頃の経験が現在のお仕事にも活かされているのですね。
そうですね。特に、ユーザーライクでの経験を通して学んだ、「ユーザー視点の大切さ」は現在に活かされていると思います。
ユーザー視点を知るには、まず1人の熱狂するファンやお客さんを見つけることがスタートになります。この考え方はリーンスタートアップなどで聞く機会も多いですが、僕は実践を通して体感した分、このプロセスが身に染みて重要だと感じていて。
ユーザーライクが「ブルーミー」をはじめた当時は、「お花のサブスクリプションサービス」なんて、概念として存在しなかった時代です。そうしたタイミングのなか、1人の消費者やお花屋さんといったユーザーに向き合い、膨大な時間をかけてヒアリングをしました。
そこから見えてきたのが、店頭に出したお花の約4割を廃棄せざるを得ないというお花屋さんの大きな課題と、「お花を買いに行くのは面倒だけど、部屋にお花があると嬉しい」といったお客さんの強いニーズ。お花屋さんとお客さん、双方の熱狂を起点にして事業を立ち上げたこの経験は「一生に何回あるのだろう」と思うほど胸が熱くなるものでした。
数ヶ月後の損益分岐より、まず自分自身が熱狂しているか
ーーこれまでに多くの起業相談に乗ってきた経験があると思いますが、事業立ち上げの際につまずきやすいのは、どのようなポイントでしょうか?
思い込みだけで見切り発車してしまうパターンだと、失敗しやすいですね。思い込みは大事ですが、見切り発車する前に「これだけは検証しておくといいポイント」があって、そこを押さえるだけでその後の成功確度が大きく変わってきます。キホンのキですが、まずは自身の考える課題に共感を覚えてくれる人が何人いるのか、またそれはお金を払ってでも解決したい課題なのか、この2点がとても大事です。
また、僕が一番危険だなと思うのは、自分の想いが乗っていないのに、「儲かりそう」「流行っているから」という理由だけで事業をはじめてしまうパターンです。
ビジネス経験が豊富な人ならまだしも、僕のように普通の人が起業するためには、少なくとも自分が熱狂していなければユーザーも熱狂してくれないと思うんです。机上でペルソナを考えるよりも、シャッター商店街に足を運んで1人のユーザーに徹底的に話を聞くほうが課題感をリアルに理解でき、自分自身もより事業に熱狂できるんじゃないかなと。
数ヶ月後の損益分岐や儲けよりも、まずは自分自身が熱狂していること。そして、1人のユーザーを見つけ、その人が熱狂するために必要なことを探し、そこから事業を逆算すること。この2点がゼロイチには欠かせません。もしその検証方法がわからない方がいれば、僕が教えに行きますし、なんなら商店街にも一緒に出向きますよ。
ーーヒアリングへ同行も!(笑)。その面倒見のよさはどこからきているのでしょうか?
塾講師のアルバイト経験が大きいのかもしれません。
合格を目指す上で、「どうすれば生徒が自分の力で歩み続けられるか?」を考えて指導していたのですが、成績って週1回の授業だけではなかなか上がらないんですよね。なので、その時間を使って、生徒が自力で1週間勉強するモチベーションを上げる指導をずっと続けていたんです。すると、担当生徒の多くが成績アップを実現できましたし、その指導結果が評価されて約3,000人いる講師のなかから年間13人だけが選ばれる成績優秀講師に選出いただくなど、大きな結果につながったことがあって。いまの自分のスタンスややっていることは、その頃と同じなのかもしれません。
いまご協力させていただいている起業相談においても、一般的な起業相談窓口だと1度相談するだけで終わってしまう人も多いかと思いますが、それだとあまりうまくいくイメージがなくて……。ちゃんとネクストアクションと期限を決めて、実行したら連絡をもらい、経過を見守りながら継続的にアクションをとり続けることがメンターとして大切な姿勢だと考えています。
ーー相手の成長や目標達成に一緒にコミットする姿勢が、現在の起業支援にもつながっているのですね。最後に、今後のビジョンについて聞かせてください。
僕は常に、「1年後にはいまの自分が想像していないことをやっていたい」と思っています。実際、去年の僕は1年後に大阪に住むとは思っていなかったし、関西で仕事をする機会が増えるとも想像していませんでした。
約半年前から京都市での起業支援に携わらせてもらうようになりましたが、相談に来るのは50〜60代の人生経験豊富な人が多く、最初は「自分でいいのだろうか?」という想いもあって。
でも、いざやってみるとアンケートで嬉しい言葉をいただくことも多く、自分のこれまでの経験が誰かの役に立っていると実感しています。
さまざまな人が起業に触れるきっかけを提供するためにも、僕自身がさらにレベルアップして活動の範囲を全国や世界中へ広げていきたいです。
インタビュー:中津花音
ライティング:黒岩麻衣
編集:ヤマグチタツヤ