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地方創生にDAOを導入するメリットを先行事例とともに紹介

最終更新: 2024年6月19日

参加者の主体的な行動がリターンとして還元され、ミッションに共感する人々の意思でプロジェクトを進めていくことができるDAO。2022年以降、自治体でも導入が進んでいます。

事例としては複数自治体の連合である”美しい村DAO”などもあり、地方創生にDAOを取り入れたいと考えるご担当者様もいらっしゃるのではないのでしょうか。

地方創生にDAOを取り入れられれば、人口減少が課題となっている自治体のプロジェクト推進に対する一つの解決策になります。従来の手法とは違う、地方創生の新たな一手を探されている方は、ぜひこのページをお目通しください。

なお、全国の自治体におけるweb3プロジェクトの傾向分析、および具体的な事例についてまとめた「全国自治体のweb×地方創生マップ」も配布しています。ぜひご活用ください。

web3×地方創生MAP

地方創生にDAOを取り入れるメリット

まずは、地方創生にDAOを取り入れるメリットを6つ解説します。具体的には次のとおりです。

  • 自治体の関係人口の増加が期待できる
  • 資金調達先の手段となる
  • 地域連携を図れる
  • 外部人材の調達ができる
  • 事業推進スピードが飛躍的に向上する
  • 地域を知ってもらうきっかけになる

一つずつ解説します。

自治体の関係人口の増加が期待できる

地方創生にDAOを取り入れることができれば、自治体の関係人口の増加が期待できます。DAOでは、オンライン上でトークンやNFTの売買を通して、誰でもデジタル村民などといったメンバーとしてプロジェクトに参加できるためです。

デジタル村民の場合は、村民割と呼ばれるような特典を得られたり、地域資源を活用したNFTの企画に参画できるメリットがあります。

地方創生が必要な地域課題のひとつに、人口の減少が挙げられます。しかし、地方にいきなり人が移住するような施策を打つのは難しいでしょう。

これに対して、オンラインでのデジタル村民という形であれば、プロジェクトに関わるハードルが高くありません。このような入り口でプロジェクトの参加者を増やすことで、新たな企画を立てたり、地域資源の活用につながるでしょう。

資金調達の手段となる

DAOは、プロジェクト推進のための資金調達手段のひとつになります。

従来の地方創生であれば、国や地方自治体に申請をして、交付金をもらうのが一般的な流れです。しかし、DAOではトークンやNFTの売買により資金調達ができるため、行政の窓口とは違った経路で資金が確保できます。

一方で、資金調達の方法としてクラウドファンディングが思い浮かんだ方もおられるかもしれません。DAOはクラファンのリターンとは違い、稼働に応じたトークンの分配を通してメンバーに報酬を与えることができるため、メンバーがより自律的にプロジェクトに関われる利点があります。インセンティブ構造が優れているといえるでしょう。

また、集められた資金は、主催者だけなく、トークン保有者の持分比率に応じた投票で使い道を決められるのも、大きな魅力といえるでしょう。

ちなみに、DAOとクラウドファンディングの違いは「DAOとクラウドファンディングの違いをデメリットにも触れながら解説」でも扱っています。

地域連携を図れる

地域との連携を図れるのも、地方創生DAOの大きなメリットです。

地方創生には、自治体のような行政だけではなく、街おこし隊や地域団体、地域住民などとの関わりを持ちながらコミュニティの活性化に貢献することもできます。

DAOを作ることで、地域住民と地域に関心を持っている人をゆるやかに繋げることができるのが魅力です。

外部人材の調達ができる

地方創生DAOでは、外部人材の調達ができるのも魅力的な点です。

外部人材とは、地方創生が必要な地域以外からきた人材を指します。地方創生では、プロジェクトを立ち上げる人物が地域の関係各所と連携を図り、補助金を使いながら地域の再生を図っていくのが一般的です。

しかし、DAOでは、オフラインでの縛りが一切ないため、地方創生に関心があり、より知見のある人たちでも、気軽に参加できます。

そのため、広報に強みのある方や営業が得意な方、コミュニケーションが得意な方など、地方創生DAO運営に役立つスキルをもった人材が集まり、地方創生に大きく貢献するようになるでしょう。

事業推進スピードが飛躍的に向上する

地方創生にDAOを取り入れると、事業推進スピードが飛躍的に向上します。一般的に地方創生事業をする際は、補助金申請に加えて、自治体との連携強化など、多くの時間が必要です。

しかし、DAOでは多様なメンバーが参加し、プロジェクトの立案や資金の使い道もすべてメンバーによる投票で決まります。

DAO組織内で早く意思決定できれば、より早く新たなメンバーを募ったり、複数の自治体を巻き込んだりでき、事業推進スピードも向上するといえるでしょう。

地域を知ってもらうきっかけになる

地域を知ってもらうきっかけになるのも大きなメリットです。

DAOは近年国内においても少しずつ関心が高まっており、地域の抱える課題の解決法として注目されています。

魅力的な地域資源NFTでニュースになるなど企画が盛り上がれば、DAOをきっかけに自治体について知る人々が増えるチャンスにもなるでしょう。

DAO_地方創生

日本における地方創生DAOの事例4選

ここでは、日本における地方創生DAOの事例を4つ解説します。

美しい村DAO

美しい村DAOは、複数の自治体が連携して地方創生を目指すプロジェクトです。鳥取県智頭町と静岡県松崎町が参画しています。

美しい村DAOでは、以下の4つのトークンが用意されています。

  • デジタル村民証NFT
  • 地域資源NFT
  • ガバナンストークン
  • ユーティリティトークン

デジタル村民証NFTを購入すれば、誰でも美しい村DAOのデジタル村民となれます。デジタル村民はコンテンツを企画し、企画された内容はガバナンストークンをもつ村民によって決議されます。

決議の結果をもとに、地域資源NFTが販売され、売上分はデジタル村民に分配されるため、メンバーはお金を得られる仕組みです。

美しい村DAOの仕組み
また、過去に企画された地域資源NFTには、松崎町長とデジタル村民が作ったAIアートもあります。

町長NFT
NFTホルダーが得られる特典は以下のとおりです。

  • 2泊3日での松崎ツアーへの参加権
  • 松崎町名産の栄久ポンカンの入手権
  • 町内施設の割引利用など

なお、このような企画を打っている美しい村DAOの仕組みについては、以下の動画でも解説しています。

みちのくDAO

みちのくDAOは、Web3技術により、地域単位で経済的自立を目指すプロジェクトです。

東北の起業家・事業家と地方行政・地方銀行などがマッチングできる場となることをファーストゴールに掲げています。

最終的には、経済圏の輪を海外まで広げていき、海外投資家を巻き込んだ地域通貨の「経済循環ハブ」を目指しているのが特徴です。

FurusatoDAO

FurusatoDAOは岩手県紫波町が主体となって取り組んでいます。ブロックチェーン技術を活用し、地方創生を目指すプロジェクトです。

具体的な内容は次のとおりです。

  • 地域課題の解決を目的としたDAO設立
  • Web3技術を用いた新たな地域通貨の発行
  • ふるさと納税の返礼としたデジタルアートのNFT化

これらにより、地域の活性化や新たな価値創造が期待されています。

山古志DAO

山古志DAOは、中越地震やコロナ化により、山古志の強みである人との交流が薄れている現状に課題を感じた村民が、地域の過疎化や高齢化などの課題解決を目指すプロジェクト。新潟県山古志村が主体となり、活動しています。

具体的な内容としては、山古志発祥の錦鯉をシンボルにした「NishikigoiNFT」を発行しています。「NishikigoiNFT」は山古志地域の電子住民票でもあるため、大きな注目を集めました。

デジタル村民は一部の予算に対する執行権限をもっており、過去には、山古志住民へのNishikigoiNFT無償配布について投票をしたこともあります。

地方創生DAOの立ち上げ方

次に、地方創生DAOの立ち上げ方を6つのステップに分けて解説します。具体的な立ち上げ方を知り、迷わずにDAOを設計して地方創生が実現できるようにしましょう。

①目的とミッションを明確化する

まずは、目的とミッションを明確にしましょう。地域におけるどのような課題を解決するのか、また達成すべきゴールを設定します。

目的やミッションが明確であれば、ミッションに共感するメンバーが集まりやすくなります。また、メンバー投票時の指針になり、ブレることなくDAO運営を継続できる重要な段階です。

②DAOの仕組みを設計する

次に、DAOの仕組みを設計していきます。具体的には以下の内容です。

  • 資金調達や分配の方法
  • 意思決定の方法
  • 企画・運営の方法
  • 販売するNFTの設計

DAOを立ち上げても設計が不十分で活動が継続できなければ、地域課題の解決は難しいでしょう。DAOが長く存続しつつ、ミッションに共感するメンバーを巻き込み、地域にも貢献できるような不備のない設計が必要です。

③実現に必要なツールを明確にする

ミッションや仕組みの設計ができたら、実現のために必要なツールを明確にしましょう。

DAOではオンラインでのコミュニケーションをはじめ、トークンの管理や投票など多くのツールが求められます。

一般的には、以下のツールが有名です。

ツール名

用途

Discord

オンラインでのコミュニケーション

Snapshot

意思決定のための投票

Opensea

NFTの発行や購入

Metamask

仮想通貨ウォレット

なお、これらのシステムをひとまとめにしたDAOX(ダオエックス)というツールもあります。DAOXを使用すれば、スムーズなDAO構築とコミュニティ運営が可能になるので、DAO組成を検討されている方はぜひ導入を検討してみてください。

④DAOを設計する

使用するツールが決まれば、実際にツールを使ってDAOを構築します。

DiscordやOpenSea、Metamaskなどを使うのもいいですが、ブロックチェーンのプラットフォームを触り慣れていない参加者にとってハードルが高いのも事実です。

そこで、設計にDAOXを活用すれば、NFT販売やウォレットの自動生成に加え、タスク管理や意思決定のための投票、コミュニケーションまで1つのツールで網羅しているので参加者にとっても参加ハードルを下げることができます。

⑤NFT販売・メンバー募集を開始する

DAOの設計までできたら、NFTの販売やメンバーの募集を開始します。

メンバー募集に関しては、プレスリリースを打ったり、SNSアカウントの運用を通して認知を広めることが大切です。

⑥コミュニティを運営し、自律的な組織を目指す

メンバーが集まったら、コミュニティ運営を開始し、徐々に運営からメンバーへ権限移譲を進めましょう。

本来、DAOは中央管理者がおらず、メンバー同士がフラットな関係性のもとで運営されます。立ち上げ当初は、旗振り役となるリーダー的ポジションのメンバーも必要です。

しかし、DAOを長期的に運用していくのであれば、運営をコミュニティメンバーに権限移譲し、自律的に活動が動き続ける状態を作ることが必要です。

地方創生DAO立ち上げにあたっての課題点

次に、地方創生DAO立ち上げにあたっての課題点を3つ解説します。具体的には、次のとおりです。

  • メンバーが流動的になる
  • DAOが法的な存在ではない
  • 高い技術力が求められる

課題部分も理解したうえで、DAO立ち上げをすることが大切です。順番に解説します。

メンバーが流動的になる

1つ目の課題点は、メンバーが流動的になる点です。

DAOは非中央集権で、メンバー間における上下関係がありません。参加も自由であり、インターネット環境さえあれば、いつでもどこからでもメンバーになれます。

一方で、メンバーはいつでもDAOを離脱できるため、株式会社や法人などの従来組織と比べてメンバーが流動的になりやすい傾向があります。

地方創生DAOを立ち上げる際は、加入するメンバーが常に固定ではなく、従来組織よりも早く入れ替わる可能性があることは頭に入れておきましょう。

DAOが法的な存在ではない

地方創生DAO立ち上げにおける課題点の2つ目は、DAOが法的な存在ではない点です。

海外においては、一部の国や地域でDAOが法人格であるとみなされ、法的にも明確に定義された事例があります。たとえば、2023年3月1日にユタ州議会はDAO(分散型自律組織)法を可決し、DAOに対して法人格の地位を承認しました。

しかし、日本においては、まだまだDAOは一般的ではなく、法的な定義も不明瞭な部分が多いです(原稿執筆時で合同会社型DAOの導入準備段階)。
DAOの法整備は未だ発展途上であるため、立ち上げの際には常に最新のニュースや動向をチェックすることが求められます。

なお、サーバーやクレジットカードの登録などの法人手続きの代行サービスである「DAO法人業務代行サービス」もあるので、法人格の用意が難しい場合はご活用ください。

高い技術力が求められる

地方創生DAO立ち上げにあたっての3つ目の課題点は、DAO運営には高い技術力が求められることです。

DAOを立ち上げる際には、以下のツールや技術が必要となります。

  • ブロックチェーン
  • スマートコントラクト
  • ガバナンストークン
  • Metamask
  • Dework
  • Opensea
  • Juicebox

これらのツールを利用したり、専門的な技術を扱うのはハードルが高いといえるでしょう。そのため、地方創生DAOの立ち上げには、入念な準備が必要です。

一方で、先述のDAOXを用いるとこの辺りに悩むことなくDAO導入を開始することができます。

地方創生DAOを成功させるポイント

最後に、地方創生DAOを成功させるためのポイントを3つ紹介します。

  • メンバーが企画に関われるようにする
  • 地域資源を活かしたトークン・NFTを作成する
  • 立ち上げ初期はメンバーを絞る

上記のポイントをおさえて、地方創生DAOの運用を成功させましょう。

メンバーが企画に関われるようにする

地方創生DAOでは、メンバーが積極的に企画へ関われるような設計にしましょう。新たなアイデアが生み出され、地域資源の活用やより周囲を巻き込めるようなNFTの販売など、地域への貢献度が高まる可能性があるためです。

美しい村DAOでは、デジタル村民である有権者が、NFTの売上の使い道以外にも、どのようなNFTを企画すれば、より売上が出るかを考え、投票によって決議します。

地方創生DAOを運営するうえでは、メンバーが主体的に関われるような座組みをつくることが必須といえるでしょう。

地域資源を活かしたトークン・NFTを企画する

地域資源を活かしたトークンやNFTを作成することも重要なポイントです。

美しい村DAOでは、NFT購入者への特典である地域資源のアイデアとして、地域の特産物である水やビールが挙げられています。

一般的なDAOと違い、地域資源を活かしたトークンやNFTを作れると、参加者にとってより魅力的になるでしょう。

立ち上げ初期はメンバーを絞る

立ち上げ初期はメンバーを絞ることも大切です。地方創生に前向きな地方自治体に参画してもらうのがよいでしょう。

DAOに限らず組織運営において、メンバーの間口を広げ過ぎると、方向性がバラバラになってしまい、運営が難しくなるようなリスクも否めません。

そのため、立ち上げ初期はメンバーを絞り、ある程度ルールや運営が安定してくれば、メンバーの拡大を図るのがよいでしょう。

地方創生DAOを立ち上げて地域の活性化を

今回は、地方創生DAOを立ち上げるメリットを具体的な事例を交えつつ解説しました。地方創生にDAOを導入すれば、関係者人口が増えるとともに、外部人材も調達でき、飛躍的なスピードでコミュニティを発展させられます。

一方で、DAO運営にはさまざまなツールや専門的な技術が必要とされるため、運営までには入念な計画と事前準備が必要です。DAO立ち上げにあたってのミッションや課題点を明確にし、効率的なDAO運営を実現しましょう。

なお、全国の自治体におけるweb3プロジェクトの傾向分析、および具体的な事例についてまとめた「全国自治体のweb×地方創生マップ」を配布しています

また、美しい村DAOのような地方創生だけでなく、就活生同士がお互いを評価する三井住友海上のDAO型採用をはじめとしたDAOにおける複数の実績や知見があります。地方創生にDAOを取り入れたいがWeb3技術がよくわからない、効率的にDAO組成されたい事業者の方はDAOコンサルティングまでご相談ください。

DAOの立ち上げを検討している場合は

2024年現在、国内200個を超えてあらゆる領域で導入が進んでいるDAO。立ち上げのコツは初期の構想と参加者のハードルを下げる仕組みにあります。ガイアックスでは、大手企業・自治体をはじめとする豊富つ先進的な支援実績をもとにDAO組成支援を行っています。

ご相談はこちら
上井登志之
DAO事業部にて、企業や自治体におけるDAO立ち上げのコンサル・PMを担当。これまで日本郵船社の社内DAOプロジェクトや三井住友海上火災保険社の「採用DAO」構築に取り組む。採用DAOによる採用活動の透明性や公平性担保はTVなど多数のメディアで紹介された実績あり。参加就活生は「匿名・学歴等不問」「評価の公開」に高い満足を得た。
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