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自分一人で事業を作っている気になるとしたら、それは驕りだよ。- ガイアックス執行役 佐々木喜徳

最終更新: 2023年9月6日

困難なことがあっても、状況に合わせて柔軟に立ち直る「しなやかな強さ」をレジリエンスと呼びます。変化やストレスの多い現代社会にうまく適応し、精神の健康を保ち、どのように回復しているのか?ガイアックスでは、リーダー達のレジリエンスをシリーズでご紹介します。

今回インタビューしたのはガイアックス執行役の佐々木喜徳(ささき よしのり)さん。

佐々木さんはスタートアップスタジオ責任者と技術開発部の本部長を兼任し、2021年4月からは執行役に就任しています。「常にオンラインミーティングをしている」と噂されている佐々木さんですが、どのように心身のバランスを取っているのでしょうか。仕事への向き合い方や、リーダーとして意識していることについてお聞きしました。

佐々木 喜徳

佐々木 喜徳

執行役・スタートアップ事業部責任者

組み込み系ベンチャーやC向けインターネット関連業務の経験を活かし、フリーランスエンジニアとして独立。 その後、フィールドエンジニアリング会社の役員経て2007年にガイアックスに参画。スタートアップスタジオ責任者として起業家への事業開発支援や投資判断を担当。スタートアップスタジオ協会を立ち上げ、スタートアップ挑戦者の裾野を広げる社会活動に取り組んでいる。

佐々木さんの「使命」については、ぜひこちらの記事をご覧ください。

どん底を経験し、事業と自分との関係性が変わった

ー これまでの仕事人生で、「この時はキツかった」というご経験はありますか?

4〜5年前に、自分自身が新規事業のオーナーをしていた時が一番ハードだったと思います。
新規事業って93%は失敗すると言われているくらい、失敗することが当たり前なんですよね。それでも日々「こうしたらうまくいくんじゃないか?」と施策を打って検証することを繰り返すのですが、当時担当していた事業は施策を打てどなかなか響かず、うまくいかずに辛かったという時期がありました。事業を約1年半続けていて、その中でもどん底で辛かったのは1〜2ヶ月間くらいでしたね。結構精神的に参っていて、何にすがればいいのかわからず、マネジメントの参考にしてはいけないと言われているマキャベリの『君主論』を読んでいました(笑)。

ー どん底の時期をどのように乗り越えていったんですか?

一番のどん底は年末年始のタイミングだったんですよね。それで年末年始に何をしたかというと、何もしなかったんですよ。それまでは寝る時間も少なかったですし、起きている時間はずっと事業に関して手も頭も動かし続けている状態でした。それを年末年始の1週間くらいは「やらない」と決めて、ピタッとやめたんです。仕事をせずに、ちゃんとご飯を食べて、ちゃんと寝るようにしました。その生活を1週間くらい続けたら、完全回復しましたね。

どん底の時は、うまくいかない原因の全ての矢印を自分に向けてしまっていたと思います。例えば「何で僕は事業をうまく立ち上げられないんだろう?」「事業に魅力がないのは自分に魅力がないからだ」「自分のせいでメンバーがやる気をなくしてしまっている」というように。
それが年末年始に休んだことで一度リセットされて、自分に向けていた矢印を外側の事実に向けられるようになりました。チームのモチベーションが下がっていたことに対しても、「自分にはリーダーとしての素質がないかもしれない」という自分向きの矢印から、「ちゃんとお客さんの声をみんなに届けられてないのではないか?」「事業としてのマイルストーンを十分に伝えられていないのでは?」という本質的な原因を捉えられるようになりました。

佐々木さん

ー 今でも矢印が自分に向いてしまうことはありますか?

あまりないですね。どん底に落ちた経験から、自分の事業や取り組んでいる物事に自分の感情を乗せすぎないことが大事だと思うようになりました。
経営会議や他部署のメンバーとの雑談において、「スタートアップスタジオは」という主語で「ここができていないんじゃない?」「ここってどうなの?」という質問や議論が巻き起こった時に、スタートアップスタジオと自分を重ね合わせて捉えてしまう危うさがあるんですよね。事業が自分のものであるという感覚が強くなって、あたかも「自分の存在が事業そのものである」という感覚に陥ることがあって…。僕がどん底だった時には、その感覚が強くなりすぎたことで辛くなってしまったのだと思います。
重ね合わせて捉えてしまうことで、質問や意見に対して「僕は(こんなにやっているのに)」という反応になってしまうんです。重要なのは良い仕事をするための議論をすることなのに、自分を守るための言い訳が出てくると冷静な議論ができないですよね。
だから今でも、自分と事業を切り離して考えるようにかなり気をつけています。
事業や組織は僕のものではないし、僕そのものでもないんですよね。

事業はみんなで作るもの。だからこそ「何のためにやっているのか」を意識してほしい

ー リーダーとして、メンバーと関わる中で意識していることはありますか?

いくつかあって、1つは失敗を責めすぎないことです。

うまくいかなかったことに対して、「そうだったの、大変だったね」と、あまり感情を乗せません。何もせずに失敗するのはダメなんですけど、やってみて失敗するのは仕方がないと思っていて、そこを責めてもどうしようもないですし、失敗から学べたこともあるはずなので。できているかは別として、本人が「失敗してもいいからチャレンジするんだ」と思えるように意識的にコミュニケーションをとるようにしています。逆に、ちゃんと考えているかどうかを確認する時には感情を乗せます。考えずにやるということはサボっているということなので。

2つ目は、頑張りすぎて気持ち的にも体力的にも参ってきている雰囲気を感じたら、有休を使ってでもいいから、とにかく美味しいものを食べて好きなことをして、ひたすら寝ろと伝えていますね。

3つ目は、例えばレビューの時間に「これをやっています」「これがうまくいきませんでした」という話が出た時に、本人が目的意識を持てていなさそうな時は「何のためにやっているんだっけ?」「何のためにインターンをしているんだっけ?」とたまに再確認してあげるようにしています。

インターンをやること自体が目的になっていたり、働くこと自体が目的になってしまっている時って、結果的に成果を出せていないことが多いと思うんです。組織って、人が辞めていくことに怖さを感じることがあると思うんですけど、彼らが主体的に「ガイアックスに来て、何のためにインターンをするのか、働くのか、就職をするのかに気づけた。だからガイアックスを離れます」となることは、気づきを与えられたという意味ではすごく良いことだと思うんですよね。逆に、そういうスタンスで接していないといびつな組織になると思っています。

ー ご自身の方が経験値があるという関係性で、あれこれ口出ししたくなりませんか?

作業としては遠回りしているように見えることでも、本人の成長という面では結果的に近道であることがあると思っているんです。本人が仕事への取り組み方を変えたいと思わないと、こちらから何を言っても刺さらないので、「どうしたらもっと良くなりますかね?」と本人たちから出てきた時が伝えるタイミングなのだと思います。

僕が自分自身に矢印を向けていた頃は、メンバーを管理していないと自分が仕事をしていないように感じていました。管理することは目的を達成するための手段の1つだと思うんですけど、手段と目的がちぐはぐになっていたのでしょうね。

今ではその考えを手放せていて、スタジオのメンバーが約20人いる中で、どんな仕事をしているのか僕が把握していないメンバーもたくさんいるんです。管理しようとも思っていませんし、成果さえあげてくれたら時間をどのように使ってもいいと思っています。

佐々木喜徳

 

ー 今日のお話を通して「自分と事業をくっつけすぎない」ということを強く感じました。

昔は「自分=事業」と捉えてしまっていましたが、今は、自分はスタートアップスタジオというものを司るハブみたいなものだと思っています。まず事業があって、事業の目的や成果のために自分ができることをやればいいだけという感覚です。

事業はみんなで作っているものだし、事業の魅力は僕だけではなく色々な人たちが関わることで増していくと思うようになりました。自分一人で事業をコントロールして成功させることは無理なので、「自分=事業だなんて驕りだよ」と今では思っています。感情を乗せすぎないという意味では、事業家は、目的のためにいかにサイコパスになれるかが重要なのかもしれませんね(笑)。

ー と言いつつも、メンバーに対する姿勢には愛を感じました。ありがとうございました!

インタビュー・ライティング:黒岩麻衣

編集後記
インタビュー中には、感情を乗せすぎない「そうだったの、大変だったね」というコメントと、台詞を変えて感情を乗せたバージョンも実演していただきました。感情を乗せたバージョンは、心臓のあたりがぞわぞわしました…。「自分=事業だなんて驕り」という言葉、大事に持ち帰りたいと思います。FacebookTwitterでも情報発信されていますので、気になる方は要チェックです!

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ガイアックスでは新卒・中途採用の他、学生の長期インターンシップを行っています。フルリモートで海外や地方で働くメンバーや、新卒1年目から事業責任者になるメンバーも少なくありません。様々な関わり方ができるガイアックスをのぞいてみませんか。

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佐々木 喜徳
組み込み系ベンチャーやC向けインターネット関連業務の経験を活かし、フリーランスエンジニアとして独立。 その後、フィールドエンジニアリング会社の役員経て2007年にガイアックスに参画。スタートアップスタジオ責任者として起業家への事業開発支援や投資判断を担当。スタートアップスタジオ協会を立ち上げ、スタートアップ挑戦者の裾野を広げる社会活動に取り組んでいる。
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