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アジリティの定義
アジリティとは機敏さ、素早さ、機敏性といった意味です。元々は犬の障害物競争「ドッグ・アジリティ」という名称で使われていましたが、現代では経営やスポーツ領域でも使用され始めました。
■SAQとは? SAQトレーニングという名称は、スピード、アジリティ(敏捷性)、クイックネスの頭文字(下記参照)に由来します。 S=スピード (前方への重心移動の速さ) A=アジリティ (運動時に身体をコントロールする能力) Q=クイックネス (刺激に反応し速く動きだす能力) |
引用:特定非営利活動法人日本SAQ協会
SAQトレーニングは、アメリカのフットボールやバスケットボールのために開発されたもので、ダラス・カウボーイズ(NFL)やヒューストンロケッツ(NBA)などのプロフェッショナルスポーツチームにも採用されたトレーニングメソッドです。
現代ビジネスもスポーツ同様、目まぐるしく状況が変化し柔軟な対応が求められています。そんな状況下の中で高いパフォーマンスを発揮するためにアジリティの能力は現在あらゆる組織内で注目されています。
アジリティがなぜ今着目されるのか
最近アジリティの向上が求められるようになった理由は大きく分けて2つあります。
- 連続的な新しいツールやサービスの創出による状況の著しい変化
- 社会全体の経済の動きがより敏感になった
現代社会では日々画期的なサービスが誕生しています。企業は常にライバルが生まれてくる状況の元、他社と差別化し、付加価値を生み続ける必要があります。
ユニークな付加価値を生む為に各事業では、斬新的なアイデアと実装スピード感を兼ね備えたアジリティ人材が重視されるようになりました。
経済の動きが敏感になったと聞いて真っ先に思い浮かぶのは、2020年の新型コロナウイルスではないでしょうか?
緊急事態宣言の発令により多くの会社が影響を受け、対応策の打ち出しに頭を捻らせた経営者も多いのではないかと思います。その中で俊敏に的確な判断で事業回復させた人は非常にアジリティの高い人と言えます。
想定外の状況で新しい施策を生み出すには従来の常識を打ち破る必要があります。そんな柔軟な思考を持ち、的確な判断をできる人の共通点はどういったものがあるのでしょうか?
ガイアックスが評価するアジリティ人材
ガイアックス・スタートアップスタジオではアジリティの高い起業家候補を高く評価しています。具体的にどんな要素をもつことでアジリティを高めることができるかをまとめました。
ビジョンが明確
アジリティが高い人の共通点として、自分の目指している像を明確にできている人が多いです。なぜなら、方向性が常に見えていることで意思決定がしやすくなるからです。
例えば、ゴールに対してAとBの2つの道があったとして、ゴール像の解像度が高ければ高いほど、より適切な道を選ぶことができます。更には、AとBの道を見て、もっと効果の高い「C」という道を作り出すこともできます。
ビジョンや思想がはっきりしていない状態だと、自分が進むべき道の費用対効果の計算に時間を費やしてしまうため意思決定が遅れてしまいます。
ビジョンや思想を明確にすることでより高いアジリティを発揮することができます。
現状把握能力が高い
アジリティが高い人の特徴として、自分の立ち位置の把握が上手というのも挙げられます。
ゴールへの執着にとらわれず、今成し遂げるべきタスクを理解することが重要です。自分が抱えている課題を把握し、解決へ取り組む速さがアジリティの高さと言えます。
従来のスタイルに固執せずに柔軟な思考を持っている
アジリティが高い人は本質的な課題解決に向けて手段を問いません。世の中に溢れている一般的な方法を無視してユニークで且つ効果の高い方法を考えることができる思考が大切です。
日々新しいツールやソフトウェアが生まれています。ITリテラシーを高めることによって、最も安く・簡単に・早く実装できる方法を思いつくことができます。
アイデアの手札が多い
ITリテラシーの知見を養うことに繋がりますが、対策方法をより早く提示できる人ほど改善が早く進み、事業の成長速度も早くなります。
普段の勉強もそうですが、多くの失敗をすればする程対処法を知ることができるので、何事にも沢山挑戦することが重要です。
これらの資質をもち迅速な勢いで事業を成長させている、ShareRo(シェアロ) 代表の三原さんにアジリティについて詳しくお話を伺います。
三原 尚人
株式会社ガイアックス スタートアップスタジオ
ShareRo代表
大阪出身。東京外国語大学 国際社会学部 英語科 アフリカ地域専攻卒業。南アフリカのヨハネスブルグに1年間留学。学生時代、全く血縁関係のない84歳のおじいちゃんと2年間ルームシェアを行った経験から、良き住まいと良きルームメイトのキュレーションメディア、住まいをシェアする仲間を見つけるShareRo (シェアロ)を事業化。
アジリティを発揮して成果を得た体験談
廣渡: ガイアックス・スタートアップスタジオ内でもアジリティの高さで称賛されている三原さん、本日はよろしくお願い致します。
三原: 自分ではそんなに自覚はないんですけどね。ただ、アジリティに関して失敗を経験して痛感した体験談があるので具体的な話は共有できるかと思います。
廣渡: 体験談を是非深堀りしてお聞きしたいと思います!早速、どんな体験をされたかお聞きしてもいいですか?
三原: はい、結論からいうと「思想から逸脱した機動力」は失敗につながるという話です。
廣渡: アジリティを発揮する際に思想から逸れることが危険ということですか?
三原: はい、僕が個人的にアジリティを発揮できたと思った成果として、自社サービスで必要な部屋を2ヶ月で150件獲得しました。一見、2ヶ月で150件ってすごい数のように感じると思います。
廣渡: そうですね、営業成績はかなり高い方だと思います。
三原: ですが、結果その150件を集めた時に自分の中に感動がなかった。
廣渡: 求めていた成果物ではなかったということでしょうか?
三原: はい、ShareRo(シェアロ)の醍醐味は「普通の1人暮らしでは味わうことができないルームメイトがいるからこその心揺さぶる住体験」なのですが、僕らは「とりあえずサービスを動かす為に2ヶ月間で150件獲得」というKPIを追い続けて、「合理的な判断」に流され営業先を決めて動いていました。数を追うことに集中して成約率の高い効率的な方法を求めて走り続けました。
当初はKPI達成の為に営業先や方法を常に改善し、かなりアジリティの高い状態で仕事をできていると感じていました。実際にそのおかげでKPIを達成することができました。
廣渡: だが蓋を開けて見ると想定していたものとは違った。ということでしょうか?
三原: 本来のアジリティとは「明確にした思想を達成する為に柔軟な動きをすること」であるはずなのに、「KPI達成の為の仕事の速さ」にだけ注力して動いていました。自分が何に感動して、心揺さぶられるのかを予め知って、言語化しておく必要がありました。
廣渡: 自分のビジョンよりも合理的な判断の元作ったKPIを優先にしてしまったということですね。
三原: はい、KPIを達成しても、喜びを感じられなかった結果がそこに出ています。
廣渡: その後の改善もアジリティの高さの見せ所だと思いますが、どういう施策をとったのでしょうか?
三原: はい、まずは自分の思想と全く異なった結果と心が揺れないという事実ををメンバーに共有しました。その後に、数にとらわれないよう、本当に求めるべき物の条件付けをしました。
廣渡: 思想>KPI の優先順位に立ち直ったということですね。この体験を通して特に感じたことはありましたか?
三原: 「ビジョンや思想を言語化することの大切さ」ですかね。これが最初からできていれば、KPIを立てる際にも議論できたでしょうし、何より進行方向の修正をするパラメーターになります。
「自分の思想の実現の為に今この作業をしている」と立ち返ることができれば、毎日質の高いパフォーマンスを発揮することができます。
廣渡: 思想のアウトプットですね!アジリティの高さとビジョンのアウトプットはセットで行うことが大事ということですね。
アジリティを高める為に意識していること
廣渡: 三原さんがアジリティを高めることについて意識していることを教えてほしいです。
三原: はい、僕が事業内の決断基準を見直すポイントは、「しんどい」と思った時点です。仕事をする上でもちろん面倒なことはありますが、ビジョンの下で頭と手を動かすことにモチベーションが上がらないことには、根本的な問題があると思っています。
僕自身はもちろんのこと、チームメンバーのモチベーションを定期的にチェックし、その状態をアウトプットできるようにしています。今はコロナが心配なので控えてますが、僕の家に呼ぶこともよくあります。
廣渡: チームメンバーのモチベーションチェックですね!他にも心がけていることはありますか?
三原: あとは前回の失敗を踏まえてですが、最初の決断に敢えて時間をとるようにしています。したいことを言語化して、スタートアップスタジオ内の人たちにも共有し、より多くの意見を得た上で柔軟に対応していくことを心がけています。
廣渡: スピード感を意識して後先考えずに仕事に取り組んでしまうことがよくあります…思考の俊敏さもアジリティの一つですね。他にはありますか?
三原: 他には思想視点で物事を考えられる人と情報交換することも大切にしています。スタートアップスタジオ内にはそういった思想の方が多いのでいつも助かっています。
廣渡: ガイアックスのスタートアップスタジオは起業家のビジョンを第一にしていますからね!
三原さんが意識していることをまとめると、
- 定期的なモチベーションのチェック
モチベーションが極端に下がっている時はビジョンと結びついていない可能性が高いので、迅速に対応。 - 最初のキックオフには時間をとる
したいことをアウトプットし、多様な意見を得た上で柔軟に対応する。 - 思想思考を持つ人とコミュニケーションをとる
思想>KPI の優先を確立する為に、ビジョンファーストの人とコミュニケーションを積極的にとる
ということですね。
仕事の精度を上げていきたい人はもちろん、起業を考えている人は是非参考にしていただきたいです。
起業を目指している人へのアドバイス
廣渡: それでは最後にこれから事業をつくっていきたいと考えている方に向けてアドバイスをお願いします。
三原: はい、僕がお伝えできる点は大きく分けて3つあります。1つ目は、「つまずいた理由を言語化すること」です。失敗は次に活かせる発見として捉えるべきで、発見として次に活かすには言語化しておくことが大切です。僕自身は、「思想から外れていたことが原因」とつまずきの原因をメンバーに共有できたので方向転換を円滑に進めることができました。
2つ目は、共有意識を高めることです。僕は、共有内容に大きい小さいは関係ないと思っています。今自分がもっているタスクや困っていることを他のメンバーでも見れるように透明化してしておくことが大切です。
チーム内で共有された事項をメンバー同士でフィードバックする癖をつけておくと、意思決定が桁違いに早くなります。情報共有をいつでもしやすい環境を作っていくことをおすすめします。
最後の3つ目は、僕も頑張っていきたいことなのですが、外部に情報発信していくことです。チーム内でのやり取りで満足していると新鮮なアイデアが減っていきます。思想思考を持った人と繋がりを持つことが大切だと話したように、事業部外で客観的な視点を持っている人からの言葉をもらう機会を増やすことが大切です。
廣渡: なるほど、ありがとうございます。ここまでお話をお聞きして、三原さんがどれだけアウトプットを重要視しているかがひしひしと伝わってきました。
アジリティの高い人は思想をベースにしたアウトプットを大切にする
ということを学びました。今回は貴重な体験談からメッセージまでありがとうございました。また機会があればインタビューさせてください。
三原: こちらこそありがとうございました!またよろしくお願い致します!