こんにちは!Gaiax Bardsの中津です。
私たちガイアックスは、“使命で動く” というPhilosophy (経営哲学/企業理念) を持っています。
使命で動くとは、世の中の課題を自分ごととして捉え、ビジョンや問題意識を打ち出し、ムーブメントを生み出すことで社会を巻き込み実現すること。
「使命で動くシリーズ」はそんなガイアックスメンバーの様子を紹介する連載ブログです!
今回インタビューしたのは、TABICA事業部の細川哲星さん。
Gaiaxは、「人と人をつなげる」という理念のもと、社会課題を解決するために様々な事業に取り組んでいます。
その中のひとつのTABICA事業部は、地域の暮らしを体験できる着地型観光サービスTABICA(※現在はainiにリニューアルしました。2021.08月現在)を運営しています。
今回は、TABICA立ち上げ人の細川哲星さんの『使命で動く』に迫りました。
細川哲星
日本全国47都道府県、約7000人のホストが開催する、ユニークな日帰り観光体験が探せるTABICAのFounder。2013年Gaiax入社。総務省地域情報化アドバイザー。内閣官房シェアリングエコノミー伝道師。家を持たない暮らしをするアドレスホッパー。
アドレスホッパーになったら、いたるところが住みかにみえた
中津 2019年4月に、家をなくしてアドレスホッパーになった細川さん。アドレスホッパーとは、どのような暮らし方ですか?
細川 アドレスホッパーとは、住居(Address)を次々と移動する人(hopper)という2つの言葉を組み合わせた造語です。つまり、特定の住居を持たずに移動しながら暮らす人の総称です。移動する生活なので、荷物は最小限。僕は普段使いのリュックに生活に必要なものを詰め、その他の荷物はレンタル倉庫に預けています。
中津 多拠点生活とアドレスホッパーは似た印象を受けますが、どのような違いがあるのでしょうか。
細川 多拠点生活は、指で数える数だけの拠点を持つことを示します。例えば僕が佐賀で仕事をしていたときは、佐賀と東京に家があったので、2拠点生活でした。一方アドレスホッパーは、そもそも拠点(家)を手放したという感覚でしょうか。拠点を複数持ってるという感覚ではなく、いたるところが住みかに見える感覚です。行きたいところに行って、居たいだけいる、というように移動しながら暮らす生活は、僕の肌に合っています。暮らす場所が地球全体に広がったという感覚になることができたのが新鮮です。
中津 移動しながら暮らす感覚が肌に合っているというのは?
細川 実は僕、これまで14回の引越しをしているんです。1年以上同じ部屋に住んだ経験が無くて。(笑) そんな自分にとって拠点が増えることはリスクに感じるため多拠点居住は性に合いませんが、アドレスホッパーは移動しながら暮らすので人と交流することが大好きな自分にも合っています。僕はADDressという月額4万円で日本全国住み放題のサービスを使って暮らしています。ADDressの特徴は、コミュニティが作られていて、拠点ごとにカラーがあることです。他のアドレスホッパー向けサービスは、移動している人たちが宿泊しているという状態なので、いわばゲストハウスの宿泊にある一期一会の出会いです。一方でADDressは、拠点ごとに現地のコミュニティがあり、継続した交流を行うことができることが楽しいです。
自分の人生を形づくってきたのは、人と人のつながりと交流だった
中津 細川さんが、家を持たないことに踏み切ったのはどうしてですか?
細川 人と交流することが好きで、これまで何度もルームシェアをしてきました。けれど、家に人を呼ぶのは効率が悪い。それよりも自分が相手に会いに行きたいと思うようになったことが、アドレスホッパーになることを踏み切った理由です。実際は勢いでしたが(笑)
中津 勢いで踏み切れてしまうほど、細川さんにとって『交流』はキーワードなんですね。
細川 生まれ育った環境にルーツがあります。僕、実家が京都のお寺なんです。山のてっぺんの、100段階段を登った一番上にあって。そこは村中の人が全員知り合いで、お米や野菜を分け合っていて、村が一体となってシェアハウスしているみたいな感覚です。お寺なので、ピンポンも押さずにみんな「こんにちはー!」ってふらっと入って来るんですね。お寺の中に一応家族の部屋はあるもののプライベートな空間はほとんどなく、周囲との垣根がない環境で育ちました。
中学生のとき引っ越したのですが、地域の関わり・人の交流が都会に行くにつれなくなることをすごく寂しく、違和感に感じたことを覚えています。それは大学に入って、大阪で憧れの一人暮らしを始めたときもそうでした。同じマンションに住んでいても挨拶をしない、一緒に暮らしている空間にいる人のことを誰1人知らない。衝撃でした。その後は友達と、7LDKで7人でルームシェアをしました。その部屋には半年で1000人が来ました。いつも玄関が靴でいっぱいでしたね。
中津 1000人!? どうやって人を呼び込んでいたんですか?
細川 「●号室で飲み会やります」とマンションに張り紙を出すと、僕たちの部屋に別の部屋の人や管理人が飲みに来るんです。面白い人に遊びに来て欲しいなと思って、学生団体に部屋を会議室として貸し出していました。シェアハウスは新大阪に構えていたので、行きやすい立地だったんですよね。東京や地方から来る学生が「大阪行くんですけど面白いところありますか?」と大阪の学生に聞くと僕たちのシェアハウスの名前を教えることが増えて、気づけばちょっとした有名なシェアハウスになっていました。
こうした経験もあって、人と人のつながりと交流が自分の人生を豊かにしてきたという思いがめちゃくちゃ強いですね。
人生を豊かにするために、交流できる自分でありたい
中津 14回の引っ越しも、アドレスホッパーも、細川さんが移動するのは人との交流を大切にする姿勢からきているんですね。
細川 はい。それはTABICAを立ち上げた背景でもあります。
TABICAは、日本全国47都道府県にいる約7000人のホストと一緒に、その地域の日常の暮らしを体験することができるサービスです。僕が生まれた村は今、平均年齢65歳以上の過疎地域で、地域のお祭りもほぼなくなって、人の交流も減ってしまいました。人が交流する体験が今後さらに無くなることを真に受けた時に、すごく楽しかったあの日々をまた体験したい、と思ったことがTABICAを立ち上げた背景です。そのためTABICAでは『体験を通じた交流を大切にする』ことを大事にしています。
中津 立ち上げから3年が経ち、現在細川さんはどんなミッションを持っていますか?
細川 僕が今、TABICAで持っているミッションは2つあります。
ひとつは、地方自治体や法人と連携しながら、特定の地域の人の暮らし体験を広げることです。月に2~3回ほど、地方で講演やワークショップを行なっています。立ち上げの背景に僕の地元への想いがあるように、過疎地域、限界集落や人口が2万人未満の市町村でTABICAの体験を増やしながらゲストの集客も増やすという実験を行なっています。都心から距離が離れれば離れるほど、面白い人がいて、面白い文化が残っているので面白いんです。
もうひとつは、TABICAのサービス全体の質を向上させることです。TABICAのサイトにあがる体験は毎日全てに目を通し、ホストが提供する体験が例えば今は100だったとして、それを120や200に上げるためにはどうしたらいいかを考えながらサイトの構成をしたり、体験内容に改善点を提案したり、ホストともコミュニケーションを取りながら社内レポートとして仮説を立て提案するなどをしています。
TABICAには公認ホスト制度という制度があります。これは、ゲストからの満足度も高く積極的に体験提供を頑張ってくれているホストの方へ、TABICAのお墨付きを送る制度です。実はこの制度、公認ホストになりたい人から僕たちの方へ申請してもらっています。認定の判断には、レビュー数値や参加人数などの測定可能な基準から、TABICAのコンセプトの理解度など定性的な基準まであります。公認ホストになった場合はTABICAからも積極的にPRし、ホストと2人3脚でサービスの向上に努めます。
中津 今後、力を入れていきたいことはありますか?
細川 気になる課題は孤独死です。高齢者の単独世帯率が40%と孤独化が進み、たくさん人が暮らしている東京にいても孤独にはなります。その中で、人に働きかける、人の交流を生むサービスや暮らしかたをしていきたいと思っています。
アドレスホッパーになって良かったのは、僕の方から友人やホストさんのところに足を運ぶと、むちゃくちゃ喜んでもらえるんですよね。「わざわざ来てくれて、本当にありがとう。」と。自分が滞在している地域にもっと貢献できないか?という思いが強くなりました。人と人との交流が人生を豊かにするという気持ちをもって、常に交流できる自分でありたいです。
中津 細川さんありがとうございました!