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対談インタビュー『これからの暮らし方〜多拠点生活〜』ADDress佐別当隆志 x Unito近藤佑太朗

最終更新: 2021年9月26日

最近、リモートワークが普及するなど良い側面もある一方で、コロナ鬱の増加など、コロナ禍におけるライフスタイル変化により、心と体の健康を崩す人が後をたちません。
そんななか、田舎へ移住して自然と触れ合う時間を増やす人、二拠点生活をおくる人、ワーケーションをする人なども増え、新しい「暮らし方」や「生き方」について注目が高まっています。
今回は、ガイアックスの投資先でもある多拠点居住を可能にするサービスの代表お二人ADDressの佐別当隆志(さべっとう たかし)さんとUnitoの近藤佑太朗(こんどう ゆうたろう)さんに『これからの暮らし方 〜多拠点生活〜』というテーマでお話を伺いました。

ガイアックスでは、この他にもリモートワークやワーケーションなど、シェアといった考えを軸に、仕事環境が整ったホテル/旅館を平日4泊5日19800円(税込21780円)から予約できるOtell(オーテル)や意志や価値観から気の合うルームメイトを探すマッチングプラットフォームShareRoといった 新しい暮らし方を実現する事業に投資を行っています。

佐別当 隆志
株式会社アドレス 代表取締役社長 

2000年株式会社ガイアックスに入社。広報・事業開発を経て、2016年一般社団法人シェアリングエコノミー協会を設立し事務局長に就任。 2017年内閣官房IT総合戦略室よりシェアリングエコノミー伝道師を拝命。総務省シェアリングエコノミータスクフォース委員就任。2018年、経済産業シェアリングエコノミーにおける経済活動の統計調査による把握に関する研究会委員。月額4万円で全国住み放題のCo-Livingサービスを展開する株式会社アドレスを設立し、代表取締役社長に就任。2019年シェアリングエコノミー協会常任理事に就任。
ADDressについて:https://address.love/

近藤 佑太朗
株式会社Unito 創業者 兼 代表取締役社長

1994年11月生まれ。東京出身。東欧ルーマニア育ち。
幼少期の3年間、父の仕事の都合上、東ヨーロッパのルーマニアで育つ。大学1年次、国際交流を軸に活動する“学生団体 NEIGHBOR”を設立。その後、クロアチア最高峰のビジネススクールZSEMで観光学を勉強。帰国後、国内スタートアップ、Airbnb Japanで修行し、起業。
創業1年半で、国内5拠点(伊豆大島・六本木・代々木上原・成田・雑色)、海外1拠点(Cambodia,SiemReap)でCARAVANシリーズの宿泊施設・ Co-livingを展開。またその内5事業を2019年6月事業譲渡。2020年2月総額1.2億円を調達し、「外泊するほど家賃が安くなるサブスク住居unito」を発表。現在東京を中心に1200室以上の「外泊するほど家賃が安くなるサブスク住居unito」に住めるプラットフォームを展開。
unitoについて: https://unito.life/

お二人にお伺いしたこと

  1. お二人の過去/事業立ち上げについて
  2. これから訪れるであろう「新しい暮らし方」
  3. 思い描く未来を迎えるにあたって

お二人の過去/事業立ち上げについて(定額制多拠点居住サービス) 

—ADDressやunitoという多拠点居住を可能にするサービスを立ち上げるにあたって、そのきっかけになった原体験があったとお伺いしたのですが、お二人にどのような原体験があるのでしょうか?

佐別当: 僕は20年近くガイアックスの社員として働いてきました。大阪から東京へ上京したんですが、そのときにマンションは隣に誰が住んでいるのかわからないし、電車には死んだ魚の目をしたようなサラリーマンだらけという生活を目の当たりにし、憧れの東京に来たのにこの生活感のない人たちの集まりは何なんだろうと強い違和感を覚えたんです。幸い寮生活だったので寂しいことはありませんでしたが。

6〜7年前に品川にシェアハウスを作り、そこに台湾人の妻と10歳の娘と家族で住みながら、シェアメイトと民泊を併設した一軒家で暮らしています。都会で家族型のシェアハウス・民泊をやりつつ、地方でも同じようなことをやりたいと思い始め、2〜3年前に東京から1時間くらいでいけるような軽井沢や箱根、熱海、房総などに物件を探して事業展開し始めました。娘に地方の生活を体験させてあげたいというのもありましたし、自分自身も20年近く東京のインターネットの企業で働いていて、生活スキルがあまりにも低いことに気づいて。料理もできない、車も運転できない、釣りも登山もできない、サーフィンなんてとんでもないというような生き方をしてきたので、地方で生きる力をつけたいとずっと憧れていたんです。

 都心から少し離れるだけで、借りても安いし買っても安い物件がたくさんあります。でも、いざ住むとなると誰も知り合いがいないところでどうしよう、使わないときは誰が管理するんだろう、買って失敗したらどうするんだ・・・というような障壁を目の当たりにしました。当時からワークスタイルは自由で、出社しないでどこで働いてもいいという働き方をさせてもらっていたので、テレワークが進んでいく未来、多拠点生活が広がる未来というのは実感していたので、お金持ちならともかく、一般の会社員が多拠点生活をするのはかなり障壁が高いだろうと想像して、代わりに事業者がやってくれたら便利だろうなと思って始めたのがADDresssというサービスを作ったきっかけ。つまり、最初は自分が使いたくてシェアハウスを作ったというのが動機です。

 —そもそもソーシャルアパートメントとかシェアハウスでみんなで暮らすということはご自身のライフスタイルとしてお持ちだったのでしょうか。

 佐別当: そうですね。恵比寿で40人弱のソーシャルアパートメントを経験しているのですが、そのときの暮らしは非常に豊かでした。大使館で働いている人からマッキンゼーのようなコンサル会社で働いている人、ベンチャーキャピタリスト、起業家、変わった学生など、いろんな人との出会いがありました。当時Twitterでアラブの春が流行り始めていて、そういうSNS的な暮らしがリアルに存在しているのが大型のシェアハウスだと感じました。シェアハウスの規模が大きくなっていったり、シェアハウス同士が繋がっていく世界はリアルなSNSの可能性に近いんじゃないかと。その翌年にAirbnbが世界中の注目を集めるようになり、自分もAirbnbを経験してみて、シェアリングエコノミーのすごさに気づきました。

—近藤さんはルーマニアに住んでいたことがあると伺ったのですが、それがunitoと何か関係していますか?

近藤: 僕が多拠点居住がいいと思ってunitoを作った理由は2つあります。1つは、多拠点生活は人生を豊かにしてくれるということ。僕の中では、多拠点居住とは“地元”を日本中、世界中に10個、50個、100個作る生活スタイルをいいます。僕も3歳から7歳までルーマニアに住み、クロアチアにも留学し、東京で暮らすようになってからも都内を転々としていたので、あちこちに地元と呼べる場所があるのですが、それってすごく幸せなことだと思っているんです。観光地として行くクロアチアと地元として帰るクロアチアは雰囲気が違います。においで懐かしさを感じる、あのときの思い出が蘇ってくるみたいな場所。そういうところがたくさんあればあるほど、人生のグラデーションというか、1回きりの人生の質が上がると思っています。 
unitoを作るに至った原体験としては、若い頃の実体験があります。

当時、桜新町の賃貸ワンルームに住んでいたのですが、月の半分くらいしか帰らないのに家賃8万円。これでは半分の4万円分しか使えていない、お隣さんは毎日帰ってきて8万円なのに非合理だと感じました。これからは一人ひとりに最適化された暮らし方が求められるのに、賃貸マーケットはそうではなく、借り手が契約体系や住む街に合わせる暮らし方で、それはこれからの時代にマッチしないだろうと思い、unitoを作りました。unitoでは家に帰らないこと(外泊すること)を「リレント」と呼んでいるんですが、そのリレント先をいま調査・検証しているところです。

—いまご説明いただいた原体験から、ご自身の中で大切にしたい「豊かな人生の定義」みたいなものはありますか?

近藤: 僕は、“地元”をたくさん増やすことが豊かな人生につながると思っています。「帰りたくなる」場所には、コミュニティと思い出の2つがあるもの。だから、拠点に地元の人をコミュニティリーダーとして置くことがサービスの価値になるだろうと思いました。 

佐別当: 前提として、もはや右肩上がりの経済成長ではなく、資本主義の中でがんばる人ではない人たちが増えているというのがあると思います。お金を稼ぐとか、出世するとか、東京で働くとかイノベーションを起こすとか、マスメディアや本は旧態依然とした成功モデルを紹介しがち。でも、それは大量生産、大量消費の時代の話で、いまは価値観も多様化してきています。LGBTという言葉ができたり、インターネットで物を売買できるようになったりと、ひと昔前は想像もしていなかったような多様性が広がる時代です。そのなかで、すごく楽しそうに生きている人、自分にとって何が幸せかをわかっている人は、いわゆる従来型の成功モデルからは外れている人が多いように思うんです。

2016年1月にシェアリングエコノミー協会を立ち上げて、シェアサービスを全国に広げる活動を始めましたが、シェアサービスを利用したいという人は全国の人口減少している自治体・地域の人たちでした。シェアサービスというのはもともと需要が多いところに供給が足りないという都市型のサービスだったのですが、日本では人口減少が進んで経済成長が成り立たないような地域で生き残るための方法として考えられています。たくさんの相談を受けましたが、そこには東京で成功モデルとして活躍している人ではなく、地域で自分の幸せを見つけて活躍している若い人が多くて、すごくかっこよくて面白くて。「あぁ、もうこういう人、自分にとって何が幸せで、何ができるのか、何をしたいのかがわかって楽しんでやっている人の時代なんだな。」と実感しました。 

近藤: 僕自身は、地方と都市のコミュニティの違いとか、地域の根強いコミュニティに外部の人がどう入るかとか、そういう文脈での答えは出していなくて。どちらかというと、都心の人たちをどのように都心ではないエリアに流していけるのか、という視点に興味があります。

コロナで東京とかNYとか北京とかロンドン、シンガポール、どこも都心から郊外に流れていく現象が世界中で起きていて、都心のパワーが落ちていることの是非が世界中で話題になっていますが、僕が思うのは、大事なのはグラデーションだということ。いろんな物や人が一堂に集まるなど都心には都心の良さがあるので、地方の人は都心に来ればいいし、都心の人は地方に出ればいい。人が都心と地方を行き来しながらそれぞれの良いところを引き出すというような暮らし方、フレックスライフが僕の目指す地域のあり方です。

近藤

これから訪れるであろう「新しい暮らし方」 

—お二人は、いまどんな「暮らしの未来」を思い描いているのでしょうか?

近藤: 僕は都心の暮らし方をもっと柔軟にしたくて、デベロッパーと一緒にマンションを作ったりしています。多拠点居住はまだまだ少なく注目される存在ですが、そういう暮らし方をムーブメントではなく文化にしていくためには、都心での暮らし方を変える必要があります。根っこから暮らし方を変えること、よりバリエーションに富んだ家々を作ることが今後の僕たちの課題かなと思っています。そして、その場合、他国と比べて日本の法規制が追い付いていないことも課題の一つだと感じることもあります。

—以前、佐別当さんは法規制は変えればいいものだとお話しされていましたね。

佐別当: もちろんルールは守るべきものですが、間違った法規制もあります。古い法律で今の時代に合っていないものはあるので、それは変えるべきだと思います。2002年、2003年ごろから社会起業家と呼ばれる人たちと一緒に仕事をしていますが、海外で何百億という事業売上を出して社会的インパクトを与えている社会起業家たちは法律も変えています。

社会を変えようと思ったら法律の壁に必ず当たるので、法律を変えるくらいのことをしないと社会は変わらないんですね。僕らは新しい社会を作ろうとしているわけだから、その障壁になるような法律は変えていくべきだと思います。僕がシェアリングエコノミー協会を作ったのも、団体のほうが政治家や官僚が話を聞いてくれるからです。

都市一極集中型の暮らしは今の時代に合っていません。これからは間違いなくあちこち移動したり、東京に出社して働かなくてもいい、いろんな地域で働いていいという働き方が当たり前になっていくはずなので、そうなると長く住まない家に家賃を払い続けるとか、家具家電を全部自分で揃えるとかは明らかに合わない話になってきます。そういう矛盾に僕らは真っ向勝負で戦うスタンスです。 

近藤: 僕は直営のホテルなどをやっていて、今のところは法律的に問題になることはありませんが、今後の課題として感じているのは住民票でしょうか。選挙の投票入場券など公的な書類が届先なので、主たる居住地に置きなさいというのが法律のルールなんですが、実は宿泊施設においてもいいし、漫画喫茶に置いてもいいんです。僕たちの施設でも住民票が取れます。住民票のあり方は今のままでいいのだろうか、別の方法があるのでは?と思っています。 

佐別当: その点で言うと、ADDressの場合は自宅・実家に住民票があって、ADDressは別荘的に使うという人が6〜7割ですね。オプション料金を払うと、専用個室が持てて、そこには住民票を置くことも可能です。 

思い描く未来を迎えるにあたって

—お二人ともそれぞれあるべき未来をイメージされていると思いますが、思い描く未来を実現させるにあたって、これから「取り組んでいかないといけない」と思われる課題はありますか?

近藤: いま経産省や厚労省などの行政との話し合いで議論の的になっているのが、メイン拠点の定義です。その人がそこを主たる居住地として扱っているかどうかを、何を基準に判断するのか。宿泊客なら旅館やホテルでというけれど、じゃあ月に15日使えばそこが主たる居住地なのかというとそうでもなく、なんとなくの雰囲気で決められてしまっています。明確なルールがないころが将来的には壁になるのではないかと感じています。 

佐別当: 僕は、一番大きな問題は大企業の働き方だと思っています。
いまだに毎日出社しなくてはいけないとか、テレワークだけど自宅でなければだめだとか、会社のルールにしたがって働かなくてはならないのが現状。個人の裁量で働き方を選択できるようになってはいなくて、コロナをきっかけに変わろうとしている企業はあるものの、終業規則や保険などいろいろな部分で、大企業は好きなところで働いていいとはしていません。

テレワークは生産性が高まるとわかった一方で、テレワークはマネジメントも難しく、大企業全体としてはいまだに毎日出社、週に1回は出社など、出社を前提としています。個人レベルで多拠点生活したいという人が増えてきているにもかかわらず、会社がそれを許さないところがまだまだ多いのが現実で、大企業がまず動かないと他の企業も追随しないので、大企業が変わることが大事だと思います。 

ADDressはクラウドファンディングからスタートして2年ほどですが、この1年で会員数が5倍以上に伸びていて、4割が会社員です。多拠点で仕事をすることを認めてくれる会社も増えてはきましたが、ADDressを契約していることがわかって会社に解約しろと言われた会員もいて、まだまだだなと思います。 

—サービスの立ち上げからいまにかけて、「人々の暮らし方」という視点から、さらに実感して、確信を持てたことは何かありますか?

近藤: unitoはもともと多拠点居住をする人たちのメイン居住地として昨年スタートしたのですが、蓋を開けてみて面白いなと思ったのが、ユーザーさんの多くが多拠点居住している人ではなかったこと。月に数日だけ都内で一人暮らしをする、実家以上一人暮らし未満のマーケットが実はかなり大きかったんです。首都圏は都内まで通える範囲だから実家から通っている、都心の一人暮らしに初期費用30万+月8万も出せないから一人暮らしはしていないという人が多く、こういうマーケットがあったんだと気づきました。 
unitoは月4〜5万で借りられて、使わないときは実家に帰ればいいので、実家との二拠点生活みたいな20代〜30代前半のユーザーが多いです。家族は郊外に住んでいて、自分は都心の職場に近いところのunitoに週3で半単身赴任するというように利用している中年層のサラリーマンもいます。

佐別当: 多拠点居住なのに東京のニーズが強いのは僕も感じます。いろんな地域に行きたいと言いながら、東京に会社があるから東京の物件を増やしてほしいと言われます。月額4万円で全国住み放題というコンセプトなのに、4万円で東京に住めるんだと思う若者が増えていて。僕たちは地方の空き家を活用して地方で暮らしてほしいと思っているので東京の物件は多くありません。そこで、Unitoさんとも提携させていただくことで、ユーザーの選択の自由を増やしています。ADDressとunito両方に登録している人には割引もあります。 

近藤: 先日に汐留にunitoで12階建全個室の新拠点がオープンしましたが、そこでもADDressさんと提携しています。これからも一緒に多拠点生活を実現し、豊かな生活をかなえるサポートをしていきたいと思っています。

ADDressやUnitoでは、一緒に働く仲間を募集しています

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遠藤 桂視子
「Booked読まずに参加できる読書会」の企画をガイアックスへ持ち込んだことをきっかけに2020年ガイアックスへ入社。ブランド推進室にて広報・公式メディアの運営やインナーブランディングを経験したのち、ソーシャルメディアマーケティング事業部へ異動。「人と人を繋げ、新しい可能性を作り出し、社会を安心と笑顔で溢れる場に変えること」が得意。その延長でコンテンツの企画や場づくりにさらに携われたらいいなと思います。
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