当社卒業生、当社出資先のスマートロック提供のフォトシンスが10億円の資金調達を行いました。
以下、「THE BRIDGE」から記事を転載しております。
スマートロック「Akerun(アケルン)」および入退室管理のSaaSを提供するフォトシンスは5月8日、グロービス・キャピタル・パートナーズ、大和企業投資、YJキャピタルを引受先とする第三者割当増資の実施を公表した。これに日本政策金融公庫、オリックスからの融資を合わせて調達した資金は総額約10億円で、これまでの累計調達額を15億円としている。
払込日や投資ラウンド、出資比率などの詳細は非公開で、グロービス・キャピタル・パートナーズの湯浅エムレ秀和氏が社外取締役に就任する。
また、同社は法人向けスマートロックのAkerun Proが2016年7月の発売以降、2500社に導入されていることも同時に明かしている。特に個人情報を扱う人材紹介業、金融業、士業といった業種のほか、多拠点を保有する企業やコワーキングスペースなどの採用が進んだ。
同社では調達した資金で現在50名の体制(正社員ベース)を2年後を目処に倍増させる。特に営業やサポートの体制を強化して増加中の引き合い件数の対応にあたり、2020年には1万社の導入を見込む。
個人情報保護法の改正が追い風に
2014年9月の創業以来、度々本誌でも取り上げているフォトシンスが大型調達に成功した。Akerun Proはドアのサムターンに取り付けることで普通の扉をスマートフォンやICカードで施錠・解錠ができるサービスで、クラウドと連動しており鍵の付与や入退室のログ管理が可能になる。初期費用は無料、月額1万5000円で機材やウェブサービスを利用できるレンタルモデルを採用している。
このスマートロックの国内市場をざっと眺めると、ビジネスモデルの本命とされていたAirbnbなどの民泊が規制の関係で不透明な部分も多く、他の事業者も不動産事業社と提携するなどより確実なビジネス向けの展開に向かっている印象がある。
中でもフォトシンスは前述の通り、売り切りではなく月額課金モデルに挑戦している。ビジネスサイドに民泊のような新たな需要の見込める収益モデルがなければどうしても買い切りの製品に目移りしてしまう。
しかし彼らのビジネスは今、絶好調なのだそうだ。
同社代表取締役の河瀬航大氏にその理由を聞いたところ、意外にも昨年改正された個人情報保護法が影響しているらしい。
「個人情報保護法が2017年5月に改正されたことで、ざっくり言うと会員ビジネスやってる人は入退室ログを取りなさい、ということになったんです。しかし既存の入退室システムでは(付随のセキュリティサービスなど含めて)100万円ぐらいの導入費用がかかるんです」
会員の個人情報を取る企業なんて中小含めてごまんとある。河瀬氏の話では、これら全ていわゆる「入退室ログ」を取得する必要があり、導入コストにアドバンテージのあるAkerunへの問い合わせが相次いでいるということなのだそうだ。
さらにその先もある。
入退室のログが取れるということはつまり、「そこで働いていたかどうか」がわかる。ーーそう、長時間労働問題への対応だ。近年社会問題化しているこの課題に対応するために注目が集まり、また、勤怠との連動についても多くリクエストがあるという話だった。
当然、これらがサービス化されれば彼らの月額課金には説得力が増してくることになる。
取材当日、河瀬氏が扉に取り付けるデモを見せてくれたが、取り付けからスマホによる鍵の登録まで数分で完了する手軽さだった。実際にはクラウドサービスの設定や各種オンボーディングに時間はかかるだろうが、扉に工事が必要なものに比較すればハードルは低い。
スマートロックの販売から「入退室ログ」を扱うビジネスへの変貌、それこそがフォトシンスの大型調達の裏にあると感じた。