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DAOの設計を行う手順を9ステップで解説【最初に定めよう】

最終更新: 2024年4月30日

web3時代の組織形態として注目を集めているDAO(分散型自律組織)。既存コミュニティや会社の一部プロジェクトをDAOとして運営し始めるケースが増えています。

そこで本記事では、DAOがどのように設計され、立ち上げられるのかについて解説していきます。既存プロジェクトや新規事業の方向性として、DAOを考えている方は参考にしていただければ幸いです。

なお、大手企業や自治体のDAO組成支援をもとに開発した、DAOの立ち上げから自走までを1ツールで実現できるDAOXのトライアル版を無料公開しています。DAOを最短工数で確実に立ち上げたいご担当者様はぜひご活用ください。

DAOX 資料DL

DAO立ち上げ初期に明確なゴール設計が必要な理由

まず、そもそものDAOについて簡単に説明すると、会社の社長のような特定の意思決定者が存在せずとも、参加者全員の投票を通じて事業やプロジェクトの方向性が自律的に決定される組織形態を指します。(より詳細な説明は「DAOとは」の記事にて)

DAO立ち上げ初期には明確なゴール設計が必要になってきます。なぜなら、立ち上げ初期にDAOの方向性が定まってないと、コミュニティ形成やプロジェクト進行時などといった様々な場面で迷子になる可能性が高いためです。

そもそもDAO自体が新しい概念であり、経験豊富な人は少ないです。また、情報・ロールモデル共に少なく、見切り発車でプロジェクトを進行するのはリスキーといえます。

そのため、DAOを立ち上げる際は明確なゴール設計を最初に立てましょう。DAOではメンバーのモチベーションを最大限引き出し、それを維持し続けることが重要になってきますが、活動方針やインセンティブ設計が十分でないと参加したメンバーは離れかねません。DAO存続に大きく関わってくるため、最初に土台部分をしっかりと形成してあげることが重要になってきます。

逆に、簡単ではありませんが初期に設計さえうまくできれば、既存の会社組織にはない分散型のガバナンス(意思決定の仕組み)で、メンバー全員の主体性や多様性を引き出しやすい強みを引き出せます。

さらに、DAOを通じて地域活性化や新規事業創出などを進めるケースも増えており、様々なステークホルダーを巻き込んだ形で新たな価値を生み出せることが大きな利点といえます。

DAOの設計を行う手順を9ステップで解説

それでは、本記事の本題であるDAOの設計を行う手順について解説していきます。

DAOを構築する流れ

①DAOのミッションを明確にする

まず第一に、DAOを運営するミッションを明確にしましょう。なぜこのDAOが存在して、何を達成するために運営するのかをはっきり定めることが重要です。

掲げるミッションはDAOを運営する道しるべとなり、全ての活動や意思決定の核心となってきます。これは参加者にとってもDAOで活動する指針となり、後々のメンバー主体で自律的に運営される組織形成には欠かせない要素となります。

また、このタイミングでDAOのコンセプトを「ホワイトペーパー」にまとめ始めることがおすすめです。

ホワイトペーパーとは、DAOの目的・活動計画・報酬設計・ロードマップなどをまとめた企画書にあたります。最初から完璧に作り込む必要はありませんが、DAOのビジョンと世界観をわかりやすく提示し、参加を検討する人に魅力を伝える基盤となります。

参考として、「美しい村DAO」のロードマップが公開されているので、参考にしてみてください。

②DAO参加者のペルソナを設定する

次に、DAOがターゲットとする参加者の特性やユーザー像を設定していきましょう。運営するプロジェクトの特性に当てはまるユーザーなのか、掲げるミッションに共感してくれる価値観を持つ方なのか、どのような人をDAOメンバーとして参加させたいかを考える項目となっています。

DAOはメンバー主体でプロジェクトが進行される組織なため、参加するメンバー自体がDAOの今後を大きく左右していきます。メンバー全員が一つになってプロジェクトを運営する組織を目指すために、この段階でDAO参加者のペルソナを設定しましょう。

③DAOメンバーの活動を設定する

DAO参加者のペルソナが定まったら、参加したDAOメンバーがどういった役割を果たし、どのような活動を行なっていくかを設定していきましょう。

例えば、DAOメンバーの活動としてプロジェクトの推進や新規プロジェクトの提案などが考えられます。また、DAO独自のメンバーに対する役割なども割り当てることができるでしょう。

これらの設定が明確であることで、DAOメンバーはプロジェクトに参加する際に戸惑うことは少なくなります。結果として円滑にDAOが運営されるようになるため、DAOメンバーの活動は明確に設定してあげましょう。

④DAOメンバーへのインセンティブ設計を行う

DAOメンバーへの活動を設定すると共に、インセンティブ設計も同時に行っていきましょう。DAOメンバーはタダでプロジェクトに貢献しようとすることは少ないため、活動を継続するための報酬が必要となってきます。

DAOへの貢献に対するインセンティブ設計として、トークンや議決権などの参加者のモチベーションを引き立てる報酬が考えられます。

また、活動に対するインセンティブだけでなく、DAOに参加すること自体にインセンティブを付与するケースも考えましょう。ガバナンスに参加する権利やDAO独自のNFTを付与することで、ユーザーをDAOへ強く惹きつけます。

なお、報酬を現金ではなく独自トークンで支給する場合、トークンの“種類”と“役割”が曖昧なままだと運用時にトラブルの元になりやすいです。たとえば、投票権を持つ「ガバナンストークン」と、コミュニティ内でモノやサービス交換に使う「リワードトークン」を分けるなど、トークン設計とインセンティブをセットで検討するとスムーズです。

  • ガバナンストークン:投票権や意思決定への参加権を付与
  • リワードトークン:貢献度に応じた報酬など

⑤DAOメンバーと運営者の関係性を定める

次に、DAOメンバーと中心で運営するメンバーの関係性を定めていきます。これは純度の高いDAOだと曖昧になってくるのですが、設立初期には一定のリーダーシップ役が必要になるため、ここの部分を定めることは重要になってきます。

なぜなら、DAOメンバーと運営者の関係性を定めてないと、プロジェクトが円滑に回らないためです。DAO立ち上げ初期には主体性を持って行動するメンバーは少ない場合が多く、旗振り役がメンバーを引っ張っていかないと組織としてのまとまりが弱く、意思決定のスピードも遅くなります。

そのため、DAOメンバーと運営者がどのような関係性で、どういった役割を持ち、どの程度の権限を有するのかをここで定めていきましょう。

⑥DAOメンバーの集客手段を考える

明確なミッションを掲げ、DAOメンバーの活動やインセンティブ設計を定めたとしても、DAOに参加するメンバーが集まらなければ意味がありません。そのため、この段階でDAOメンバーを集客する手段について考えていきましょう。

このDAOメンバーの集客手段では、認知部分としてオープンなSNSであるTwitterが有効になってきます。また、その後のクローズドなコミュニティ形成のため、Discordを活用するDAOが多いです。さらに、オフライン・オンライン共にイベントを企画し、参加するメンバーの興味関心を惹く戦略も考えられます。

このように、どのようにしてDAOへ参加するメンバーを集めていくか、また参加したメンバーのエンゲージメントを下げないためにできる施策は何かを考えていきましょう。

⑦DAOを運営するプラットフォームを構築する

DAOの組成に使われる一般的なツール

DAOの企画ができたら、参加者がリモートで分散していてもコミュニケーションや意思決定を民主的に行えるよう、活動のプラットフォームを導入します。

この時、チャットツールを利用するだけでなく、コミュニティの健全度を“投票率”や“発言率”、“リアクション率”などの指標で定期的に測定し、コミュニティの活発度も計測するとよいでしょう。

このとき、すべての機能がまとまったプラットフォーム「DAOX(ダオエックス)」を使えばDAOに必要なチャットや意思決定、資金管理をした上で、各コミュニケーション指標も確認できます。

いずれにせよ、コミュニケーションと資金管理ができる環境を用意した上で、コミュニティのエンゲージメントを可視化し、定期的に改善することがDAO成功のカギとなります。

この辺りのDAO構築に関しては「DAO立ち上げに必要なツールについて」をご覧ください。

⑧DAOメンバーに委譲したい権限を設定する

ここまでを通した段階で、DAOメンバーに委譲したい権限を設定していきましょう。いつまで経ってもリーダーシップ役が組織を引っ張るのではなく、組織を分散的かつ自律的に運営されるフェーズへと移行する際に重要になってきます。

具体的には、権限委譲へ移行するタイミングやそれまでにかかるコスト、プロジェクト進行・提案時のルール決めなどが考えられます。

メンバー全員が提案・投票による意思決定を行い、メンバー主体でプロジェクトが推進される組織の形成には何が必要かを考えていきましょう。

このとき「ホワイトペーパー」に書いたガバナンス設計や投票ルールに沿って、提案内容や実行プロセスをオープン化すると透明性が高まります。投票ツールとしてはSnapshotのようなものが多く用いられますが、分散型の資金管理にはマルチシグウォレット(複数署名形式のウォレット)を導入するなど、ツール面の整備も同時に検討していくとよいでしょう。

⑨DAOが成立した際に生まれる成果物を定める

最後に、上記で設計したDAOが成立した際に生まれる成果物を定めていきましょう。メンバーが中心となって組織が運営されるようになる、真のDAOが成立した際のゴールです。

例えば、既存の会社組織では生み出せない新しい事業アイデアや、多様なメンバーからの視点による意思決定などが考えられます。

抽象的な例を挙げましたが、設計するDAO独自の背景から具体化してゴールを設定していきましょう。

なお、上記の設計ステップを「美しい村DAO」という実例から解説している記事があります。実例から理解を深めたい方は「DAO組成キャンパスを書こう」の記事を参考にしていただければ幸いです。

また、ここまで紹介した手順を全て洗い出すのは難しいと思います。特に、インセンティブ設計の部分は多くの方が躓くはずです。その場合は、本記事を公開しているガイアックスで、意見やアイデアを交換しながらDAOの立ち上げ・設計部分を支援することができます。様々な案を出し合う工程を踏むことは重要になってくると思いますので、興味をお持ちいただいた方は下記よりお問い合わせください。
» ガイアックスDAOコンサルティングサービスへ相談する

DAO型入社式

DAOの設計を行う際の注意点

最後に、DAOの設計を行う際の注意点について共有していきます。

DAOには多様なメンバーが分散的に参加できるという強みがある一方で、以下のような課題が生まれやすい点にも注意が必要です。

参加者のリテラシーに差があることに注意

ブロックチェーンやNFTなどの技術が絡むため、全員が同じ理解度を持つとは限りません。特に地方創生DAOや自治体関連のプロジェクトでは、担当者によってWeb3の知識レベルが大きく異なる場合があります。

DAOは途中から参加するメンバーも多いため、既存メンバーと同じ情報を共有し、スムーズに活動に入ってもらうためのオンボーディングプロセスが欠かせません。

ここが整備できないと、新規参加者がコミュニティの状況についていけず、結果的に早期離脱してしまう可能性が高くなります。

ステークホルダーが多く、調整は複雑になりやすい

地方自治体や企業、地域住民など、多くのステークホルダーが関わる場合、調整に時間や手間がかかります。

DAOは分散型だからこそスピード感のあるプロジェクト運営が期待されますが、意見調整に手間取り、プロジェクトが停滞してしまう可能性もあります。

ある程度初期は運営でディレクションし、徐々に参加メンバーに権限委譲していく形が良いでしょう。

この辺りのDAO立ち上げ初期の運営のコツについては、「DAO立ち上げ初期は”推進役”の存在がキーポイントになります」で詳しくまとめています。

インセンティブ設計に難しさがある

DAO内での行動に対する報酬(インセンティブ)が曖昧だったり、金銭報酬やトークン以外のメリットが見えにくいと、メンバーの意欲が続かずにコミュニティが徐々に弱体化するリスクがあります。

最初の盛り上がりだけでなく、長期的に活動を維持するための魅力を設計することが欠かせません。特に、NFTの発行や補助金に頼りきりだと、一時的な盛り上がりで終わってしまい、長期的なコミュニティ形成にはつながりにくいです。

長期的にメンバーがモチベーションをもてる報酬や権限の設計を行わないと、徐々に参加者が離脱するリスクが高まります。

最初から完璧に設計しなくても良い

先述の通り、本記事で紹介した手順を全て洗い出すのは難しいです。進めていく過程でしか見えてこない部分もあるため、最初から完璧に設計しなくても問題ありません。

そのため、定期的に見返して徐々に良い設計にしていくことがおすすめです。埋めることができそうな部分だけ埋めて、足りない部分は今後埋めていくというスタンスで良いでしょう。ただ、その際は足りない部分は何か、いつまでに埋めるべきかを明確にしておくという注意が必要です。

「合同会社型DAO」の設立・運営に関する注意点

2024年4月より、合同会社の形式でDAOを立ち上げる(いわゆる「合同会社型DAO」)ことが可能になり、実際に複数の事例が出てきています。合同会社型DAOを組成すると、法人格をもって活動できるため「資金調達しやすい」「配当の分配ができる」などのメリットがあります。

しかし。一方で下記のような課題や特徴もあるため、最初から合同会社型DAOを視野に入れる場合は注意が必要です。

銀行口座開設にハードルがある

法人格があるにもかかわらず、DAOという新形態であることやメンバーの実態が不透明なことなどの理由で、銀行口座を作れない(もしくは作るのが難しい)ケースがあります。

いきなり法定通貨でのやりとりが必要なプロジェクトでは、口座開設をはじめとする各種手続きがスムーズにいかないリスクも考慮しましょう。

社員(メンバー)の登記手続き・印鑑証明の工数がかかる

DAOは本来、誰でも参加しやすく、主体的に関わっていける柔軟な枠組みが魅力ですが、合同会社の登記には社員として参画するメンバーの印鑑証明書や代表社員の存在などが求められます。

DAO特有の流動的な参加を想定しづらい面があるため、立ち上げ期には「メンバーが固定されておらず、登記が負担になる」可能性を考慮してください。

“立ち上げ初期”ではなく、“中期以降”に設立する方法も

立ち上げ初期は、DAOのコンセプトやミッション、インセンティブ設計などの土台固めに集中したほうがスムーズです。

実際の運営が軌道に乗り始め、「利益の分配をトークンや法定通貨で行いたい」「法人格を持って契約を結ぶ必要がある」などのニーズが明確化してから、合同会社型DAOとして登記する流れが望ましい場合があります。

このように、最初はウォレット管理やNFT発行にフォーカスした形でDAOをスタートさせ、DAO構築に必要な機能が1つにまとまっているDAOX(ダオエックス)などを活用しつつ、十分に運営してから登記に踏み切るほうが、DAOらしい自律分散型のメリットを損なわずにプロジェクトを推進できるでしょう。

契約関連の書類テンプレートや司法書士との連携が必要

合同会社型DAOは登記時に定款やホワイトペーパー、トークン規定などの整備が求められます。現在は日本DAO協会から標準ガイドライン・テンプレートが公開されており、ガイアックスでも提携司法書士や専門家と連携して支援する体制が整ってきています。
» DAOガイドライン・定款・諸規程テンプレート – 日本DAO協会

とはいえ、まだ事例は少なく、従来の会社設立とは異なるDAO特有の要素を考慮する必要があるため、適切な専門家のサポートを得ることがおすすめです。

特にマネーロンダリング等の観点から、口座開設や暗号通貨の現金化手続きで追加の審査が発生するケースもあるので、「事前にウォレットをマルチシグ化する」「DAOメンバーへのトークン配布基準を明確化する」など、DAOとして必要最低限の自律分散型運用体制を先に整えておくと、スムーズに進めやすくなります。

このような合同会社型DAOについて、実際に立ち上げた現場感を「素人向けのDAO立ち上げベストスキームがあるので聞いてほしい。」にて共有しています。こちらもぜひご確認ください。

DAOを運営する上で押さえておきたい法規制

DAOが発行するトークンが、資金決済法や金融商品取引法の規制対象(暗号資産・有価証券など)に該当する可能性には注意が必要です。特に、資金調達やトークン配布を行う場合は、法的リスクや税務処理を事前に専門家と確認することが必須です。世間では、実際に確認をおろそかにしたことによるトラブルも発生しています。

また、NFTを現実資産と紐付ける場合、金融商品取引法上の扱いや、電子マネー・企業ポイント・仮想通貨の交換ルールなどを整理する必要があります。

DAO立ち上げ時には明確な設計を作成しよう

本記事では、DAO立ち上げ時にどのように設計していくかを9ステップに分けて解説しました。

DAOは既存の会社組織にはない、「メンバーの主体性を引き出す」という観点から注目が集まってきています。最近では「美しい村DAO」や「お魚DAO」のように、地域活性化を目的とした地方創生DAOの事例も増えていました。特に地方創生DAOは、行政や地域住民、企業などステークホルダーが多様であることから、DAOの分散ガバナンスが注目されています。その一方で、補助金頼みで終わってしまうケースや、NFTの発行だけで継続的なコミュニティ形成につながらないケースもあるため、本記事で言及したようなインセンティブ設計や運営方針に注意してみてください。

そのため、DAOの立ち上げを考えている方は、本記事を参考に明確な設計を立てていただければと思います。DAOについて何から始めたらいいかわからない方は、まずはDAOのミッションから埋めてみてはいかがでしょうか。

なお、この記事を公開しているガイアックスでは、DAOの立ち上げを支援しています。日本で初めてのDAO型シェアハウスの運営や複数自治体が連合したDAOをはじめとする実績があり、大手企業や自治体と現在プロジェクトを推進しています。DAOの立ち上げに関して興味をお持ちいただいた方は、下記からお問い合わせいただけますと幸いです。

DAOの立ち上げを検討している場合は

2024年現在、国内200個を超えてあらゆる領域で導入が進んでいるDAO。立ち上げのコツは初期の構想と参加者のハードルを下げる仕組みにあります。ガイアックスでは、大手企業・自治体をはじめとする豊富つ先進的な支援実績をもとにDAO組成支援を行っています。

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上井登志之
DAO事業部にて、企業や自治体におけるDAO立ち上げのコンサル・PMを担当。これまで日本郵船社の社内DAOプロジェクトや三井住友海上火災保険社の「採用DAO」構築に取り組む。採用DAOによる採用活動の透明性や公平性担保はTVなど多数のメディアで紹介された実績あり。参加就活生は「匿名・学歴等不問」「評価の公開」に高い満足を得た。
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