2022年にはweb3・DAO領域での事業を開始し、DAO型組織によるシェアオフィスの運用や既存のNPO組織のDAO化、自治体連合型のDAOなど、多くのDAOの立ち上げの支援を行っています。
今回は、web3事業本部責任者としてガイアックスのweb3・DAO事業を率いる峯 荒夢(みね あらむ)さんに、ガイアックスがDAOに取り組む理由や、DAOがもたらす未来の可能性、DAO事業の今後のビジョンについてお聞きしました。
常に新しい技術と向き合う峯さんの、エンジニアとしての使命に迫った記事もぜひご覧ください。
『ブロックチェーンがもたらす新しい社会のあり方を見据える。』
峯 荒夢
開発部責任者・Chief web3 officer
株式会社ガイアックス web3事業本部責任者 兼 一般社団法人日本ブロックチェーン協会理事。2015年よりブロックチェーンの研究開発を開始。情報サイトBlockchain Bizを運営し、ブロックチェーンに関わる3冊の書籍の出版に携わる。鳥取県智頭町・静岡県松崎町らとの「美しい村DAO」のシステム開発や、早稲田大学・芝浦工業大学などと連携し、スマートシティーへ向けたLiDARネットワークの開発も行う。ブロックチェーンの国際標準を策定するISO / TC307国内審議委員会委員も務める。
ガイアックスは、これからDAOを立ち上げたいと考える組織運営者向けに、コンサルティングを提供しています。日本初のDAO型シェアハウスなど数多くの実績があります。社内でDAO導入を考えていたご担当者様は、DAOコンサルについてをご確認ください。
DAO組成や、弊社での具体事例についてまとめた資料を、
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web3特化型シェアオフィスから自治体連携プロジェクトまで。幅広い知見を活かし、DAOの組成を一気通貫でサポート
まずは峯さんについて教えてください。
現在はweb3事業本部責任者として、ガイアックスのweb3における取り組みの責任者をしています。
ガイアックス以外でも、一般社団法人日本ブロックチェーン協会理事や、ブロックチェーンの国際標準をつくるISO/TC307の審議委員を務めたり、2023年3月までは芝浦工業大学 SIT総合研究所の客員研究員をしていたりと、社内外問わずweb3関連の活動に積極的に関わっています。
web3事業本部ではどのような事業に取り組んでいますか?
現在は、主に2つのことに取り組んでいます。
1つは、DAOの立ち上げや導入に関するコンサルティングです。ここ数年でDAOに関心を持つ人は増えてきましたが、「具体的な活用方法がわからない」という方も少なくありません。
そこで、コンサルティングチームでは課題や要望をヒアリングし、法規制も考慮して解決法を提案したり、企業内でDAOの理解を浸透させるためのセミナーや研修を実施しています。
もう1つは、開発サービスの提供です。DAOを取り入れるにはさまざまなルールをソフトウェアとして動かす必要があるため、チームにはweb3のソフトウェアをつくるエンジニアの部隊がいます。
一般的な受託開発だと発注者が要件定義をしますが、DAOは新しい概念なので要件定義から伴走して開発したり、MVP(=Minimum Viable Product)と呼ばれる必要最小限の製品を実際につくっては検証を重ねて……という方法で進めることもあります。
ガイアックスのweb3事業にはどのような特徴がありますか?
Discordの支援ツールといった部分的なサービスを提供している会社が多く、かつDAOの組成をサポートしている企業が少ないなかで、DAOの組成に関する課題を一気通貫でサポートしているのがガイアックスの特徴です。
チームには、 web3に特化したシェアオフィス「CryptoBase」を設立した西村環希さんや、日本初のDAO型シェアハウス「Roopt神楽坂 DAO」の立ち上げメンバーの廣渡裕介さん、ブロックチェーン上で日本円に連動するプリペイド型のデジタルコインを発行しているJPYC株式会社でCTOを務めていた荒巻陽佑さんも在籍しており、それぞれの知見を活かしたサポートが可能になっています。
また、行政から依頼を受けてDAOに取り組んでいる実例がある点も大きな特徴です。
内閣府の広域連携SDGsモデルとして行政から依頼を受けた日本初の“複数自治体横断型DAO”である「美しい村DAO」では、鳥取県智頭町と静岡県松崎町と連携して取り組みを進めています。
ふるさと納税にNFTを使っている事例はありますが、行政と組んでDAOにまで踏み込んでいる事例はほとんどありません。
ミッション「人と人をつなげる」はまさにDAO。ライスワークとライフワークのバランス変化がもたらす“豊かな生き方”
ここ数年のガイアックスはweb3に注力していますが、どういった理由から取り組みを強めることになったのでしょうか?
ガイアックスが掲げるミッション「人と人をつなげる」を実現する可能性を秘めた新たな領域だから、というのが大きな理由です。
もともとガイアックスは、創業期にあたるweb1.0時代ではコミュニティサイトを、web2.0時代ではソーシャルメディアやシェアリングエコノミー(以下、シェアエコ)をと、時代の最先端の技術を活用して「人と人をつなげる」事業を展開してきました。DAOはこの文脈上にあるもの、特にシェアエコの延長線上になるものとして捉えています。
これまでのシェアエコの世界観では、世のなかで使われずにいる有休資産とその資産を使いたい人がプラットフォームを通じてマッチングすることで、世のなかに余っているリソースを効率的に循環させることが前提となっていました。
ですが、DAOはこの前提と異なり、プラットフォームとなる会社や人を置きません。特定のプロジェクトを実行したい人たちが主体的に集まって物事を推進し、利益もプロジェクトに関わる全員みんなでシェアするという仕組みで成り立っています。
こうした特徴から、僕たちはDAOを「シェアエコの“究極の形”」であると考え、これまでのシェアエコ事業の延長線上にあるものとしてDAO事業を展開するようになりました。
一見するとガイアックスはその時々で全く別のことをしているように見えますが、DAOはこれまで取り組んできたことの地続きにあるものなんです。
創業当初のサービスから続いていた文脈が、現在のDAO事業に行きついているのですね。web1.0から3.0への移り変わりを見てきて、「人と人のつながり」にはどのような変化がありましたか?
ただ情報をスムーズにやり取りできるようになるだけでなく、人の生き方や働き方が変わるようになってきているのではと感じています。
web1.0では情報収集が主な目的でしたが、web2.0では個人が情報発信者になったことでユーザー同士の相互作用が生まれはじめました。そしてweb3.0では、情報の持ち主や情報をシェアすることで、個々人の経済活動につながるようになりはじめています。
どういうことかというと、たとえばレトルトカレーをつくるDAOが立ち上がったときに、スパイスが得意な人や野菜が好きな人、宣伝やデザインが得意な人などが集まってきて、みんなでプロダクトをつくり、得た利益もみんなで分配するのがweb3.0の世界観です。
個人の活動の貢献度によって収入を得ることができる点も大きいのですが、収入を得るために頑張るのではなく「やりたいことが収入につながる」という形が実現できる点が最もインパクトのある部分かなと感じています。
この世界観が普及していくと、人の生活やコミュニケーションはさらにどのように変化するでしょうか?
「食べるために稼ぐ働き方」と「やりたいことをして稼ぐ働き方」のバランスが変わってくると思います。
DAOであれば、これまではボランティアでやっていたことでも、世のなかに貢献した分が収入として返ってくるようにできるので、ここは変化が大きくなるポイントかなと。
とはいえ、DAOで得る収入は「お金を稼ぐこと」が目的ではないため、普通なら時給5000円でしかやらないことを時給1000円でやるようなイメージで、「やりたいことをして稼ぐ」が100%にはならないかなとも考えています。
それでも、お金のためだけに一生懸命働いていた人たちが、やりたいことをする時間が増えるだけでなく、それが収入につながることで精神的に安定し、より豊かさを感じられる未来がくるのではないでしょうか。
また、会社とDAOのどちらで物事を進めていくかの選択も、人のやりたいことの実現可能性に変化をもたらすと考えています。
これまでは新しいプロジェクトを立ち上げてお金を得るには会社をつくるのが一般的な方法でしたが、DAOなら会社をつくる必要がなくなります。
レトルトカレーの例に見たように、人と人がつながりやすくなることで小さな会社と同等のことができるようになるため、これまで実現が難しかった部分が簡単になり、みんなの「やりたいこと」の実現可能性が高まっていくだろうと考えています。
「法律の壁」を変えられる?変化の“最先端”でなければ、見ることができない景色がある
大きなポテンシャルを秘めるDAOですが、実際に社会実装していくにあたって法律面の課題はどのように対応されていくのでしょうか?
新しい概念を社会に実装していく際には、法律の壁にぶつかることが多いのですが、その法律を変えられるチャンスがやってくることがあります。
現在の法律は資本主義に合わせたものなので、DAOと合っていない部分も少なくありません。
ですが、ガイアックスはいくつものDAOをつくってきた経験があり、法律に引っ掛かる部分を実体験をもとに話すことができ改善を提案できる稀有な会社です。8年前にシェアエコ事業へ取り組みはじめたときもそうでしたが、ダイナミックな市場の変化の最前線に立っているからこそ、法律を変えられる機会に立ち会えることもあるので、この点はDAO事業に携わっていて面白いポイントだなと感じます。
今後のビジョンについても聞かせてください
よりよいDAOをつくるノウハウを蓄積するために多くのDAO組成に携わりつつ、法律の問題や世のなかのリテラシー向上にも取り組み、DAOをより多くの人に普及させていきたいです。
現時点では、DAOは一部のアーリーアダプターのためのものになっていますが、アーリーマジョリティ以降の層にも届くものにして行きたいなと考えています。
そのためには情報発信が重要になるはずだと考え、僕たちは2016年から「Blockchain Biz」というサイトでブロックチェーンについて発信してきました。
開始当初はあまりに多くの情報を発信したため「何のためにやっているんですか?」と言われることもありましたが、そういった種が実り始め、やっと時代が追いついてきましたね(笑)。世のなかのリテラシーを高めることも私たちの役目の1つだと考えているので、今後も情報発信には力を入れていきたいです。
発信といえば、web3事業本部にジョインした新卒の山本周雅さんはDAOに関するeBook(電子書籍)を出版されましたよね。
はい、Twitterで発信していた情報をまとめ直してeBookとして出版しました。直近でも、学生エンジニアのメンバーがNFT技術をわかりやすくまとめた書籍『実践NFT開発入門 ブロックチェーン学習ガイド』が出版されたりと、若手メンバーの発信機会も少なくありません。そのほかにも、YouTubeでの発信にも力を入れており、そちらではDAOの基礎知識やDiscordの使い方などについて紹介しています。
DAOをやっているチームだけあって、各メンバーも自律分散型な働き方が目立ちますね。自分の達成したい目的に対してそれぞれが学んだり教えあったりする動きが活発で、新しいものを見つけてきては調べたり実践して、ほかの人も使えるようにドキュメントにして展開していたり。次々に登場する新しい概念にも臆さずにチャレンジする人がとにかく多いです。
DAO的なチームの在り方に、ガイアックスらしさも感じます。
そうですね、僕自身、2015年にブロックチェーンと出会い、「これはすごい技術だぞ」と注目して取り組んできました。時代を先取りし過ぎて結果がついてこなかった時期もあったんですけど、ようやく出番が来たなと思っています。
これまでになかった領域での挑戦なので、簡単にはいかないこともありますが、クライアントさんや一緒に働くチームメンバーたちと試行錯誤しながら、これからも世のなかに新しいものを生み出していきたいです。
インタビュー:ヤマグチタツヤ、樗木亜子
ライティング:黒岩麻衣
編集:ヤマグチタツヤ
web3/DAOの最先端技術でキャリアを築く!
ガイアックスでは新卒・中途採用に加え、学生の長期インターンシップ採用を行っています。業界黎明期から取り組んできたブロックチェーン技術の最新研究・開発ノウハウをもとに、事業を推進しています。時代の最先端にある環境で、キャリアを築きませんか。