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失敗を組織の“共有財産”へ──経営会議メンバー3名に訊く「今年の挑戦と失敗」| 新連載企画「トレジャー・フェイル」

最終更新: 2023年9月6日

私たちガイアックスにとって、失敗は「財産」です。
失敗を歓迎し、そこから得た学びを共有し合うからこそ、さらなる挑戦が生まれていくと信じています。
コアバリュー「失敗を祝福する」から生まれた本連載企画「トレジャー・フェイル」シリーズでは、私たちが大切にする価値観を体現したガイアックスメンバーの“挑戦と失敗と学び“を赤裸々にお届けしていきます!

今回は、ガイアックスの経営会議メンバーである重枝さん・管さん・中津さんにお話を伺いました。聞き手は、ブランド&カルチャー推進室責任者の荒井さんが務めます。

管 大輔

管 大輔

ソリューション事業本部責任者

2013年新卒でガイアックスに入社。2015年9月から事業部長を務め、クラウドソーシングの活用、リモートワークの推進など働き方の多様化を積極的に進めた結果、2年間で離職率を40%から0%に、売上が5倍に成長。2019年に本部長就任。2020年に新卒採用支援サービス『オンライン就活』を立ち上げ、事業責任者を兼務。複業ではコーチング事業を展開する会社を設立し、コーチング型マネジメントの普及に注力している。2019年の9月からオランダに移住。

重枝 義樹

重枝 義樹

ソーシャルメディアマーケティング事業責任者

デジタルマーケター。2014年ガイアックス入社。自らも企業のソーシャルメディアマーケティングの戦略コンサルを行いながら、部署のコンサルタント、運用支援チームを統括する。Forbes Japanや雑誌「AERA」等へSNSコンサルタントとして多数寄稿。

中津 花音

ブランド&カルチャー推進室 マネージャー

2019年にガイアックス新卒入社。新卒採用チームでの内定者インターン、ブランド推進室での採用広報業務に携わった後、新卒採用の新規事業の立ち上げに参画し、事業運営全般に関わる。2022年10月よりブランド&カルチャー推進室に所属。「幸せを自分で創る人で溢れた社会をつくる」というミッション実現のために、ガイアックスの場を活かし、人と人をつなげて新しい社会をつくりたい人。

聞き手:

荒井 智子

コーポレートカルチャー推進室責任者

2013年4月に新卒入社。2年間法人・海外営業、社長室立ち上げなどを経て、2015年に社内起業プロジェクトでケータリング型社員食堂をスタートし、2017年にtiny peace kitchenとして事業化。2022年にブランド&カルチャー推進室(現コーポレートカルチャー推進室)の責任者に就任。ガイアックスにただようカルチャーを言語化することを得意とする。

プレイヤーからマネージャーへ。「想いだけで事業は成せない」を痛感した新卒4年目の1年間

まずは中津さんから、2022年に挑戦したことについて聞かせていただけますか?

中津 「Command″N(新卒の人材紹介業)」の事業責任者として、はじめてチームを率いる立場になったことが1番の挑戦でした。
入社1年目の秋に管さんが事業責任者を務める新規事業チームに飛び込んでから、最初はプレイヤーとして任された仕事に期待通りに応える形で仕事をしていました。
そこから徐々にチームメンバーが増え、インターン生のマネジメントをさせてもらったり、チーム内での自分の役割が少しずつ変化していき、2022年1月からは事業責任者をやらせていただきました。

中津さんにとって、その挑戦はどのような機会になりましたか?

中津 「想いだけで事業は成せない」ということを痛感する機会になりました。
「Command″Nを通して、世のなかにいい事業を生み出す自律した人を増やしたい」という想いで事業に取り組み、私自身のミッションと事業内容もリンクしていたので、毎日やりがいを感じながら仕事をしていました。
しかし、やる気と想いだけでは追いつかない部分があり、葛藤も感じていて……。結果としては、売上を立てる見込みが立たず、同年10月に事業撤退することになりました。

理想のゴールに向かってチームを導く立場として、自分が闇雲に頑張るのではなく、Command″Nが持っているリソースやガイアックスのアセットなど、事業を立ち上げるために使えるものは全て「切り札」だと捉えて使い倒して、アレンジすることが必要だったのだと思います。しかし、私はその部分がどうしても受け身になってしまっていました。

中津花音

事業は撤退しましたが、事業責任者を経験して中津さんは力強くなりましたよね。管さんは、中津さんの挑戦をどのような想いで見守っていましたか?

 事業責任者は、関わるメンバーから信頼される人であることが理想だと思っています。その点で、中津さんは、社員メンバー始め、インターン、業務委託メンバー、顧客、あらゆるステークホルダーから信頼を集めていたので、中津さんに事業責任者を任せることは何の不安もなかったですし、それが自然だと思っていました。

事業責任者になってからの中津さんには、僕が事業責任者の時にやり残したことや中途半端になっていたことも全て巻き取ってくれて、あまりの責任感の強さとコミット度合いに驚きましたね。中津さんのチームビルディング力は素晴らしく、メンバーも非常に幸福度高く働いていたと思います。ビジネスモデルさえうまく設計できれば、事業は伸びたはず。その点で、そもそも僕がうまく事業を立ち上げられなかったこと、中津さんが事業責任者になってから的確な助言ができなかったことに、自分自身の力不足を感じています。中津さんをはじめチームメンバーは日々最善を尽くしてくれていたので、事業戦略の方向性、マネタイズモデルの構築など、PMF(プロダクトマーケットフィット)させる部分にコミットすべきでした。

中津 ビジネスモデルの部分では、王道なモデルを検証しきることにリソースを注ぎきらず、いろいろなモデルを試すことにリソースを使ってしまっていました。
当時はそれがいいと思っていたので後悔はありませんが、もし新規事業に再度挑戦する機会があれば、PDCAのサイクルを1年単位ではなく1〜2ヶ月に凝縮してビジネスモデルの立ち上げを検証するだろうと思います。

「最も達成感のない1年だった」。痛みに目を背けない内省力が“地に足のついた自信”を築いていく

管さんは、2022年どのような挑戦をしましたか?

 新規事業を生み出すための新たなスキームを構築するために「アイディアストック」というプロジェクトを立ち上げたり、中津さんの後を引き継いで中途採用事業をはじめました。
「Command″N」では仕組みづくりにおいて反省点が残ったので、その経験を踏まえ、今度は専門家の力を借りて事業アイディアを検証する方法にチャレンジしています。

一方で、昨年はガイアックスの事業とシナジーが見込める「GENIC LAB」を買収するなど、本部長として大きな一手を打っていたのですが、今年は攻めの一手が打てなかったなとも思っていて……。新規事業は小さなことの積み重ねなので、大きな動きとの両立が難しいと感じていました。

重枝 「GENIC LAB」の案件はかなりうまくいった事例ですよね。とはいえ、これは既存事業とのシナジーや最適な人材がいたこと、ファウンダーの木村さんが素晴らしい方だったことなど、あらゆる条件やタイミングが合っていた珍しいパターンだと思います。

それに、かつてライブドアがやっていたような次々に買収して会社を成長させるモデルは合理的だけど、あまりガイアックスらしくはないのかなと。そういった伸ばし方ではなく、既存事業とハレーションを起こさないことなどを考えて見極めると、条件に合う案件が少ないのは当然だと思います。
今年もいくつか買収検討はしたし、その分お金が無駄になっていないのであれば失敗ではないと僕は感じています。

「大きな視点で仕掛けること」と「着実に事業を立ち上げること」、抽象度の異なるものに同時に挑戦し続けるのはどうしてなのでしょうか?

 挑戦というよりは、本部長の立場で会社全体を俯瞰したときに必要だと思うことを実行しているという感覚です。僕がガイアックスに居続けるのも、全体を見られる立場にいて、必要だと思ったことをやらせてもらえることにやりがいを感じているからなんですよね。

先日コーチングを受けて1年間の振り返りをしたのですが、今年が社会人になってから最も「達成感のない1年」だったと感じていることに気づきました。とはいえ、最も落ち込んでいるかといえばそうではなくて、自分にとっての壁や伸びしろを認識できたし、乗り越えていくための道筋や自分自身のあり方も見えてきたので、結果は出なかったけど前向きに捉えられています。

管大輔

若手メンバーからすると管さんは鉄壁に見えるかもしれませんが、そんな管さんも自身にとっての壁に挑み続けているのですね。

 そうですね。振り返るプロセスはかなり辛くて、「何でこんなことができなかったのだろう?」と思うこともあります。その痛みから目を背けずに、ちゃんと振り返ることで足りなかったものが明確になり、よりよいアウトプットが出せるようになるのだと思います。

僕がソーシャルメディアマーケティング事業部の責任者だったときは、いろいろな幸運が重なって事業が伸びました。自己肯定感は高まりましたが、うまくいった理由がわからないので、「地に足のついた自信」にはなっていませんでしたね。
この1〜2年はうまくいかないことのほうが多くありましたが、1つずつちゃんと振り返ったことで上るべき階段が見え、自分に対する不安が以前に比べてなくなってきました。

重枝 物事がうまく進んでいるとき、理由は考えずにセルフエスティーム(自己肯定感/自尊感情)は高まっていくのだと思います。しかしそれは、結果が出せている自分はOKだけど、そうでない自分には「価値がない」と捉えているわけですよね。するとちょっと状況が悪くなればセルフエスティームは簡単に下がってしまうので、「物事の進み方や結果」と「自分の存在価値」はなるべく切り分けたほうがニュートラルであり続けられるのだと思います。
仕事に対する評価が自分の存在価値とすり替わってしまうことは珍しくありません。だからこそ、コーチングなどを通してブリーフシステムの外側から物事を捉えることが必要になってきますよね。

一方、セルフエフィカシー(自己効力感)は、「自分にはそれを乗り越える能力がある」と自分で信じられるということ。これは現在の自分の状況に関わらずに持つことができるので、より根源的で重要なものだと思います。

中津 うまくいかないときに、きちんと内省して次に活かせるかという「内省力」も問われますよね。落ち込んだりせずに、ニュートラルな状態で「自分には実行する能力がある」と信じる力は、事業を成功に導く人には必要不可欠な要素だと感じています。

失敗と向き合えないと、表面的なセルフエスティームしか得られないから、本当のハードシングスを超えていくのは難しいのかもしれません。結果が出ていなくても、その状態を超えていけると信じて次の挑戦をすることで、自分自身で成長していけるのだと思いました。

「自分が怖くてメンバーが反論できないのでは?」。自身の“弱点”を起点に、リーダーシップをアップデートしていく

重枝さんはこの1年、どのような挑戦や失敗がありましたか?

重枝 自分自身のリーダーシップのあり方をアップデートする必要性を感じ、日々試行錯誤を繰り返していました。
事業責任者として5年先を見据えているからこそ、サービスラインをどのように整えていくか、組織をどのように改変していくかなど課題が数多く見えてきます。変化は自分にとっては当然のことで、このようなビジネスは、前進か後退かの二択しかなく、現状維持は即ち後退を意味します。技術やメディア環境がどんどん進化していくからです。
現状がコンフォートゾーンになっているメンバーもいるなかで、事業や組織を変化・成長させていくことに「いかにメンバーを巻き込んでいくか」が自分にとっての挑戦になっていますね。自分はもともと仲間とわいわいやるタイプではないので。

いくら必要でも、新しいものを組織に実装させるのは簡単ではありません。
まずは約2年前から、「今後こういうサービスを提供していくことが必要」という考え方をチーム内でスピーチしてきました。これはチャレンジ精神のあるメンバーには響きましたが、一方で現状に満足しているメンバーを不安にさせてしまいました。
何回も説明しているのにも関わらず不安の声が上がってきたので、当初は「わかっていない人が悪いのではないか」と決めつけた時期があり、「わからない人はついてこなくていいよ」という話をしてしまった時がありました。
すると途端に、賛同していたメンバーも引いてしまって……。これはまずいと思い、より共感的に伝えたり、上手に巻き込むことを意識したコミュニケーションも並行してトライしてきました。

重枝義樹

「ついて来られる人だけ来ればいい」というハードモードを、もう少しマイルドに方向転換されたのですね。

重枝 ついて来られる人たちが引いている様子を見て、ふと思ったんですよ。
いままで僕の意見に正面切って反対する人は誰もいませんでした。でも冷静に考えてみて、「そもそも怖くて反論できないだけではないのか?」と思ったわけです。
もしかしたら、賛同している人たちも、本当は怖いから反対できないのかもしれない。となると、「ついて来ない人たちはどれだけ怖いんだろう」と思いました。

とはいえ、事業部のためにもメンバーにある程度の危機感を持ってもらうことは必要なので、ショック療法的に生まれ変わってもらうか、もう少し教育的にいくか、両方を考えました。
考えた結果、「どっちでもないな」と思い、ちゃんとみんなで実現可能な形を考えていく方向へとシフトしました。

僕はコンセプトが先に走って、その正しさに自信を持っているので、丁寧にコミュニケーションするという考えが最初からなかったことに気づいたんです。それは周りの人からも指摘を受けていたし、自分の弱点だと思っていたので、自分なりに気をつけていたつもりでした。
でも、何回も説明することが「丁寧なコミュニケーション」ではないのだと、途中で気づくべきでしたね。
そこからは、改めて組織の状態やリソースを見直して、組織が自然と変わっていくような順番を考えていまも実行を続けています。

リーダーとして事業を引っ張っている人たちの挑戦や失敗を聞ける機会は貴重ですね。シェアしていただきありがとうございました!

ライティング:黒岩麻衣
編集:ヤマグチタツヤ

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