成功した起業家の多くは、学業や本業がありながら空いている時間で起業アイデアを練り、事業を形にしてきました。また、”週末起業”から生まれたスタートアップも多く存在していることをご存知でしょうか。実際の事例をふまえつつ、週末起業の方法を解説します。
週末起業とは何か
週末起業とは、本業以外の時間を使い、起業に向けて取り組むことです。副業との違いは、イチ事業の委託先になるか、新しく事業をつくるかの違いだとも言えます。
多くの起業家にとって事業を始めることは、非常にエネルギーがいることです。既に本業がある人や、日中の時間は起業に向けて取り組むことが難しい人も多いかと思います。
しかし、成長しているスタートアップの中には”週末起業”から始まっている事例もあります。今回は週末起業を成功させた起業家や、具体的な事例、特徴などを分析し、事例も踏まえながら解説します。
週末起業のメリット
小さいところから事業のニーズを検証可能
週末起業のメリットの1つ目は、小さく始めて大きくすることができることです。最初は週末副業から始めてみてもいいかもしれません。少ない業務量で、検証したい領域に踏み入れてみる。それがのちに、副業先の業界やクライアントのバーニングニーズを見つけるきっかけになるかもしれません。
本業があるので、生活面では安心
2つ目は、本業の収入が安定している状態で起業に取り組めるという点です。起業する際の最低限の生活を安定させるだけのお金を貯めることができますし、全てのことが不安定になりがちな起業で、資金的な生活基盤が安定している状態を保てるのは非常に重要です。また、起業が上手くいけば事業売却や株式上場などのキャピタルゲインで大きな資本を得る可能性もあります。
その後に役立つ、事業立ち上げ経験が得られる
3つ目は、リスクが少ないという点です。もし起業が上手くいかなかったとしても、元の本業で生活ができます。また、事業を立ち上げた経験は、むしろ良い影響を与えるはずです。そういった挑戦を評価してくれる会社やコミュニティは多いでしょう。また、この失敗をきっかけに社内の新規事業の立ち上げに関わったり、起業するために得たネットワークを経て、次なる起業に向けて動く準備ができるかもしれません。
本業の業界知識や繋がりを活かせる
学生起業の場合は、ゼロから業界知識やネットワークをつくらないといけないので、その分時間と工数がかかってしまいます。社会人が週末起業する場合、起業家自身の業界知識や、現場にいることでしか感じられない課題感をもとに、事業アイデアを生み出すことができるかもしれません。その起業家しか見つけられない強い課題や、事業モデルが見つかる可能性も大いに期待できます。日本の職場環境や働き方の多様化も大きく変わっていることですし、事業を立ち上げたい事業領域を定め、副業から入り業界知識を深めるといった手段もあり得るでしょう。
週末起業のデメリット
本業とのバランス
週末起業のデメリットとしては、本業の仕事に影響が出てくるかもしれません。ユーザーヒアリングをするために平日の日中の時間をあける必要があったり、クライアントとの打ち合わせでどうしても平日の日中の時間を使わざると得ないパターンです。
生活習慣のバランスを崩しやすい
2つ目は、生活習慣のバランスを崩しやすいという点です。多くの場合土日にユーザーヒアリングや、事業壁打ち、起業コミュニティとの交流など、一日のスケジュールがそれで埋まってしまう場合も多いでしょう。つまり、それ以外の細かなタスクは本業の仕事を終えてから、平日の夜にやることになるでしょう。そうなると、起業家の生活リズム、生活習慣のバランスを崩すことに繋がります。体調を崩しては元も子もありませんので、自分自身の体調と向き合って事業を進めてください。
週末起業の進め方
起業の目的を決める
まずは、起業の目的を定めましょう。スタートアップとして大きく調達をして世界を変えるような大きな企業をつくるのか。自分が興味のある、手の届きそうな領域からスタートして、最初はスモールビジネスから始めてみる。目的によって、違った起業のパターンがあると思います。最初の動きを決めるためにも、この起業で何を目指すのかを明確にして取り組むのが良いのではないでしょうか。
リーンキャンパスを作成する
目的が決まれば、最初の事業アイデアの構想をまとめるために、リーンキャンパスを作成することをおすすめします。このリーンキャンパスというものは、その事業が誰のどんな課題を解決して、顧客は誰で、その解決策は何と設定するかなど、起業アイデアを考える上で基礎となるドキュメントです。スタジオキャンバスというガイアックスが出しているリーンキャンバスをカスタマイズしたテンプレートがあるので、もしよければ使ってみてください。
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各項目の課題、解決策、顧客、独自の価値をブラッシュアップする
リーンキャンバスの各項目を徹底的に自問自答してください。ある程度固まったらそれを基に、事業壁打ちでいるところを探して相談してみることや、創業チームで議論することをおすすめします。
ユーザーヒアリングをする
その事業アイデアで解決したい課題を抱えている想定顧客に行動や代替手段などの仮説を立て、その仮説が合っているのかを確認してください。ここで大事なのが、事実と仮説を切り分けて考えることです。想定顧客が行動していた事実を明らかにすること、それを基にさらなる仮説を立てていくイメージです。そうすることで顧客の強い課題を捉えることができます。
事業壁打ちできる投資家や起業経験者を探す
何も事業アイデアがない段階で投資家に相談してもきっと投資家は会ってくれないでしょう。しかし、ユーザーヒアリングを終えて、ある程度事業アイデアを話せる状態であれば、興味を持って貰えるかもしれません。また、事業アイデアの壁打ちができるところや、起業相談を受け入れてくれている行政窓口も多いかと思います。そういったところに相談して、カジュアルに第3者目線から事業に対してフィードバックを貰うことも大切だと思います。
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創業チームをつくる
成長しているスタートアップの創業期をみてみると、同じ会社の同期とチームを組んだり、過去に学生時代のコミュニティで一緒だった同世代と創業チームを組んでいるケースも多いです。いつかは起業したいと思っている同僚や、過去の友人を誘ってみるのも良いかもしれません。
企業のアクセラレータや起業家向けイベントに行ってみる
実際にスタートアップに投資をしている会社の起業家向けの交流会に顔を出してみることもおすすめします。基本的には、そこで出会った繋がりが起業する際に役に立つことがあると思います。課題検証する際のヒアリング相手になってくれたり、お互いの事業相談をするような関係性に発展するかもしれません。また、スタートアップに投資をするVCや、スタートアップスタジオのような会社との接点も重要だと思います。事業アイデアがかたまり、ピッチができる状態になれば、そういった投資家に対してピッチしてみるのも良い動きでしょう。
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週末起業のアイデアの例
本業とシナジーを生みそうなところから始める
本業の知見を活かしながら、まずはビジネスをスタートさせることも重要だと思います。専門性がないと事業に強みがないため、それまでに培った知見があり、業界や市場を熟知しているところの方が戦いやすいです。
始めやすいスモールビジネスからスタートする
スキルシェア系のサービスを利用したり、副業人材プラットホームを活用して求人に応募をしてみたり、まずは始められそうな仕事を探してみて、その業界や仕事のネットワークを軸に新規事業を模索できる可能性もあります。SNSマーケや動画編集などは、業務のフローがわかりやすく、ノウハウが広く共有されているため、最初のハードルは低いです。こういった領域は、企業が業務委託などで外注するのも珍しくありませんので、仕事を受けやすいと思います。
成長しているマーケットに踏み込む
成長しているマーケットに飛び込むということは起業家にとって重要な点です。各市場の増加率を確認したり、まだ解決されていない大きな課題の仮説を立ててみるなどの方法があります。
また、全く新しい市場で事業をつくってみるのも良いでしょう。メタバースやweb3領域などはこれから市場が出来上がってくる状況です。この領域に興味のある方はガイアックスが運営するBlockchain Biz Communityの参加をしてみると良いかもしれません。
週末起業から独立した事例
フォトシンス 河瀬さん
オフィスでよく見かけるスマートロック。多くのオフィスや施設で見かけるスマートロックですが、このスマートロックAkerunというサービスを起業したフォトシンス代表取締役社長 河瀬航大さん。2015年に週末起業を経て、2021年11月15日に東京証券取引所マザーズ市場へ上場を果たしました。
河瀬さんは当時の週末起業の様子をこう語っています。「土日の空き時間にも何かをしたいと思い始め、仲間と一緒に趣味的に5〜10個くらいのプロジェクトを立ち上げました。ある時、普段から仲のいい4人で渋谷で飲んでいた時に、「鍵を持ち歩くのが面倒」「スマホが鍵になればかっこいいよね」という話で盛り上がって。エンジニアとしてアプリが作れる仲間もいたので、僕らが協力すれば自分たちの思い描く新しい鍵が作れるかもしれないと思ったんです。」起業を志す同世代と、起業と距離の近かった環境、また土日の空いている時間をつかってプロダクトを何個も検証したことで、成功確立が高まっていったのではないでしょうか。
» 【関連記事】フォトシンス代表 河瀬さんの新卒1年目から上場までの軌跡
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