マインドセットとは、これまでの経験や教育、先入観から作られる思考パターンや固定化された考え方のこと。このマインドセットがビジネスも含めた人生全般において、大きな影響を与えると言われています。
困難なことがあっても、状況に合わせて柔軟に立ち直る「しなやかな強さ」をレジリエンスと呼びます。変化やストレスの多い現代社会にうまく適応し、精神の健康を保ち、どのように回復しているのか?ガイアックスでは、リーダー達のレジリエンスをシリーズでご紹介します。
今回インタビューしたのは小高 奈皇光(こだか なおみつ)さん。
元ガイアックスのCFOであり、現在はTokyo Otaku Modeの代表取締役社長を務める小高さんは、どんな時でも楽しそうに仕事に取り組む姿が印象的です。
ご自身を「戦国マニア」だと語る小高さんに、エネルギーの高い状態で働き続けるためのヒントをお聞きしました!
小高 奈皇光(こだか なおみつ)
Tokyo Otaku Mode代表取締役社長
大学卒業後、2000年にメリルリンチ投資銀行部に入社。電通IPOやソニーの資金調達(2,500億円)、大成火災の会社更生計画(現損保ジャパンへの統合)など多数の案件に携わる。
2006年、株式会社ガイアックスのCFOに就任。自社株TOBなど資本政策、M&A・人事・経営企画などを管轄、フィリピン及びシンガポールの子会社設立を主導した。2011年には厚生労働省「両立支援ベストプラクティス推進事業」委員を務める。
2012年、Tokyo Otaku Modeを共同創業者として設立し、米国500startupsから資金調達。翌年第1回Japan Startup Awardグランプリを受賞し、2014年にはCool Japan Fundより第1号案件として投資を受けた。その後中国市場への参入と商品開発を始め、商品企画/グローバル流通/メディアを兼ね備えた総合サービスを展開中。近年は渋谷パルコにリアル店舗を出店し、B2B向け配送代行サービス「セカイロジ」をローンチしている。現在Tokyo Otaku ModeのFacebookファン数は2,000万人を超え、世界130カ国以上に日本のアニメグッズを届けている。
慶應大学総合政策学部卒/University of Pennsylvania – The Wharton School Executive Education Program修了/オタクコイン協会理事
戦国武将に思いを馳せ、自分を奮い立たせる
「死ぬわけじゃない」戦国時代に比べたら恵まれた時代に生きている
ー これまでの仕事人生で「ここはキツかったな〜」という場面はありましたか?
小高:多々ありますが、メリルリンチ時代に業務量が多すぎて、寝ているときに心臓が痛くなって目が覚めることが3回ほどありました(笑)。精神的な要因もあると思いますが、体が言うことを聞かないという状態になったことが一番キツかったかもしれませんね。
精神的なものだと、会社をやっている中で「会社を存続させないといけない」「大きくしなければいけない」という日々のプレッシャーは感じています。
悩んでも変わりませんし、僕は寝ると忘れるタイプなのでパフォーマンスが大きく低下するようなことはあまりないのですが、ジムに行って体を動かしたり、仕事以外のことに集中できる時間を持つことで気分転換するようにしています。
ー 会社の代表としてプレッシャーを感じる場面もあると思いますが、エネルギーの高い状態で仕事をし続けるために意識していることはありますか?
小高:僕は戦国マニアなんですけど、戦国時代の大名のプレッシャーに比べたら、令和の人が感じるプレッシャーは大したことないと思っているんですよね。
例えば織田信長は、早朝の5時くらいに本能寺で襲われて死んでしまう。戦国時代は常に命を狙われている、やるかやられるかの世界です。
彼らの生き様を見聞きしていると、自分は非常に恵まれた時代に生きていると思うんです。現代では、仕事で何かあっても命を取られるわけではないですし。日々のプレッシャーや責任を感じる中でも、心の片隅で「(死ぬわけではないし)まぁいっか」と、ある意味無責任に捉えられたら気が楽になるかもしれません。
あえて逃げ道を残す。城攻めから学ぶ“死なない”戦い方
逃げ道を作ることで「全滅」を回避する
ー 他にも、仕事をする上で大切にしている考え方はありますか?
小高:戦国時代と今の自分の状況を比べて、「戦国時代に比べたらマシ。戦い抜け!」とアクセルを踏むのも好きですが、それと合わせて逃げ道を作ることも必要だと思っています。
戦国時代の戦い方で例えてみましょう。城を攻め落とす時に、攻め手は東西南北にある4つの門の内の1つは絶対に空けておき、他の3つの門から攻めるんです。すると攻められている側は、劣勢になると空いている門から退却することができる。逃げ道を作らずに全ての門から攻めると徹底抗戦になり、被害が甚大になってしまいます。人生はこれと一緒です(笑)。
例えば部下を叱る時も、逃げ道を作ってあげないとその人はどこにも行きようがなくなってしまう。水でも何でも、支えようとすると重くなりますが、パッと手を放すことで水は下に流れていきますよね。
4つの門を全部逃げ道にすると成長しなくなってしまいますが、支える言葉と逃がせる言葉の両方を持っているとバランスが取りやすいと思います。
ガムシャラに働く期間を経て、徐々に働き方が変化していった
ー いつ頃から逃げ道を作ることも大事だと思い始めたのですか?
小高:30歳を超えてからかもしれません。メリルリンチでガムシャラに働いていた時はなるべくラーニングカーブ(学習曲線)を高くして成長したいと思っていたので、逃げ道は作っていなかったですね。「どうしてできないんだ」と自分で自分を追い込んで、追い込みすぎて疲れてしまったり。そこから徐々に仕事における役割が変わって、「自分と同じことを部下に求めるのか?」とも考えました。そして、必ずしも常に戦闘状態でいることが戦力の最大化ではないと気付き始めるんです。休みながらの方が戦力が最大化できるし、みんなのやる気も出て能動的になるじゃん、と。その考え方に至ったのは年の功もあるかもしれませんね。
逃げ道の見つけ方もタイミングも、人それぞれ
ー 小高さんはどのように逃げ道を作っていますか?
小高:今の僕は社長という立場なので、あまり逃げ道を多用してしまうのはよろしくないんですけど(笑)、最善を尽くして最後の最後にダメだったとしても「しょうがない」という気持ちはどこかに持っていて。全てを抱えてしまうと日々のパフォーマンスが落ちるし、悩みすぎてしまうと思うんですよね。なので、アクセルとブレーキを9:1くらいの比率で持っています。
もし新卒という立場なら9:1ではなく、自分なりに納得できる言い訳を用意して、もっと逃げ道を作ってあげるといいと思います。その逃げ道がジムに行くことなのか、家族の時間を持つことなのはか、ゲームをすることなのかは人によって違うと思うんです。自分で自分に合理的に説明できる逃げ道を用意することが大切で、逃げ道の見つけ方は自由でいいと思いますね。自分なりに、肩の力を抜ける場所や時間を探しておくことをおすすめします。
ー 逃げ道はどのタイミングで作るといいと思いますか?
小高:人それぞれだと思いますし、役割や役職や年齢によっても変わると思います。
ただ、頑張りすぎて倒れたら意味がないので、まずはフィジカルな体調が一番大事ですよね。歳をとるほど体の自由が利かなくなるので、結果として徐々に逃げ道ができたり、力を抜いていいタイミングが増えてくると思いますよ。
今は戦国時代ではなく平和な令和の時代なので、自分なりのペースでブレーキを踏んで、スピードを落としても大丈夫な時代だと思っていて。今は人生100年時代と言われていますし、そんなに急がなくてもいいという考え方もあると思います。
これがもし戦国時代なら、ゆっくり休んでいる内に命を狙われてしまいますから(笑)。
令和の時代は「頑張る」の種類が変わる
のびのびと健やかに。「頑張る」という感覚が必要じゃない働き方
ー これからの時代は「逃げ道を作らずにガンガン成長するぞ!」というよりも、「自分の心が動くことをしてのびのび仕事をする」という方向に切り替えた方がいいということですか?
小高:のびのびやっている時点で、結果的に成長速度が速くなると思います。嫌な仕事で無理矢理成長速度を求めて、心を追い込む必要はないんじゃないかな。昭和の激烈サラリーマン時代はそれが勝ちパターンだったんだけど、今は完全にそういう時代ではなくなっているので。これからは嫌々頑張っていた仕事はAIに持っていかれるで、もう人類が頑張る意味がないんですよ。だからのびのびと健やかに、自分のテンションが上がるものをやり続ける。きっとそれは「頑張る」という感覚を持たないはずなんですよね。
コロナがきっかけで色々なことが一気に変わったので、固定観念は一切持たなくていいと思います。働く場所も、地方や海外など、視野を広く柔軟に考えたらいいですよね。
100年生きるとして、その自分の人生の中で仕事がどういう位置付けなのかを考えてみるといいかもしれません。もし仕事で悩んでいるなら、仕事を変えることも含めて考えてみたり。今はとてもポジティブで面白い時代になってきていて、画一的に「みんな頑張れ」という時代ではなくなってきています。「頑張るんだけど楽しいこと」や「頑張るんだけど場所は東京ではない」とか、本当にフリーダムな選択ができる時代になってきています。人生は思い出づくりなので、自分の心が動くことをやっていきたいですね。
ー これからの時代をポジティブに捉えられそうです。ありがとうございました!
インタビュー:荒井智子
ライティング:黒岩麻衣
編集後記
インタビューの中で固定観念のことに触れられていますが、例えば働き方のことだけではなく「耐えて頑張っている方がえらい感じがする」「仕事とは大変なもの」といった考えも固定観念かも?と感じています。色々と見直してみると発見がありそうです!
事業アイデア相談会 STARTUP CAFE
今回のインタビューに登場してくれた小高 奈皇光さんは、元ガイアックスのCFO。Tokyo Otaku Modeはご自身で起業された会社です。
(小高さんのガイアックス時代の話や、起業に至るまでのインタビューはこちら)
ガイアックスには、小高さんのように自分で起業してガイアックスを卒業していく方も少なくありません。ガイアックスのスタートアップスタジオでは、ビジネスアイデアをお持ちの方向けの相談会を実施しています。
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