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人間は、人間らしく働こう。 情熱を持って“自分の”ど真ん中を走り続ける – 株式会社Tokyo Otaku Mode 代表取締役社長 小高 奈皇光

最終更新: 2021年11月8日

令和の時代の働き方は、一体どのような働き方なのでしょう。
「ニューノーマル」や「働き方改革」などの言葉を頻繁に見かけるようになり、新型コロナウィルスの感染拡大の影響は結果的に「新しい働き方」を推進する形となりました。
テレワークをすれば、労働時間が是正されれば、それは「新しい働き方」になるのでしょうか?

前編のブログはこちら: 情熱が成長曲線を左右する。意図を持つことで働き方は変わる

今回インタビューしたのは小高 奈皇光(こだか なおみつ)さん。

元ガイアックスのCFOであり、現在はTokyo Otaku Modeの代表取締役社長を務めている小高さんは、「経営者になるつもりは1%もなかった」と語ります。
そんな小高さんはどのような経緯で会社を経営するに至ったのか、これまでの経験や「働く」の根底にあるものをお聞きしました。

小高 奈皇光(こだか なおみつ)
Tokyo Otaku Mode代表取締役社長

大学卒業後、2000年にメリルリンチ投資銀行部に入社。電通IPOやソニーの資金調達(2,500億円)、大成火災の会社更生計画(現損保ジャパンへの統合)など多数の案件に携わる。
2006年、株式会社ガイアックスのCFOに就任。自社株TOBなど資本政策、M&A・人事・経営企画などを管轄、フィリピン及びシンガポールの子会社設立を主導した。2011年には厚生労働省「両立支援ベストプラクティス推進事業」委員を務める。
2012年、Tokyo Otaku Modeを共同創業者として設立し、米国500startupsから資金調達。翌年第1回Japan Startup Awardグランプリを受賞し、2014年にはCool Japan Fundより第1号案件として投資を受けた。その後中国市場への参入と商品開発を始め、商品企画/グローバル流通/メディアを兼ね備えた総合サービスを展開中。近年は渋谷パルコにリアル店舗を出店し、B2B向け配送代行サービス「セカイロジ」をローンチしている。現在Tokyo Otaku ModeのFacebookファン数は2,000万人を超え、世界130カ国以上に日本のアニメグッズを届けている。
慶應大学総合政策学部卒/University of Pennsylvania – The Wharton School Executive Education Program修了/オタクコイン協会理事

投資銀行からベンチャーへ。主体者として社会に影響を与える

エージェントよりも、プレイヤーになりたかった

ー 投資銀行からベンチャーに転職した背景には、どのような心境の変化があったのでしょうか?

小高:投資銀行というのは、ある会社の資金調達や買収・売却をお手伝いすることが仕事なんですけど、あくまでもずっとお手伝いの立場なんです。それはそれでスキルも身につくし面白いんですけど、我々は主体者にはなれないんですよね。
僕がもともと思っていた「社会に影響を与える」ということを考えると、投資銀行ではエージェントとしては影響を与えられるんですけど、プレイヤーとしては与えられない。主体者になりたいという思いから事業会社に行きたいと考えるようになりました。

ー 投資銀行とベンチャーでは環境の変化も大きかったのではないでしょうか?

小高:事業会社は採用や事業部の統合なども含め、「会社をどう動かすか」に関する意思決定がたくさんありますよね。一方で、投資銀行がやっていることは専門性も高くて面白かったですが、提供しているサービスは事業会社からすると一部のものだったんだな、と。社会を知ったつもりでいたんですけど、まだまだ知らないことばかりなのだと気付きました。あらゆる業務にプロフェッショナリズムがあって、その集合体が社会なのだと視野が広がった感じがしました。

転職の決め手は「より刺激的だと感じたから」

ー どのような経緯でガイアックスに入社しましたか?

小高:大学時代の友人がガイアックスで働いていて、声をかけてもらったことがきっかけで2006年に入社しました。上田さん(ガイアックス代表執行役)にお会いして面白くて大好きになりましたし、当時の各部長にも会わせていただき、メンバーのパッションや意外性や特殊性が面白かったことが決め手になりました。
多様性に富んだ人達がいるからこそ、会社は面白くなると思うんですよね。投資銀行にいる人達はいい大学を出ていてとても優秀な人達が多かった印象があります。それはそれで能力も高いし面白いんですけど、ベンチャーの方がより振り切れている人が多く、刺激的に感じたんです。

ー 当時のガイアックスにはどんな方がいましたか?

小高:まず印象に残っているのは村井さん(現AppBank株式会社 代表取締役社長)ですね。何かを立ち上げるからにはあれくらいエッジが立っていないといけないんだなと、村井さんを見ていて感じました。
他にも僕が入った頃の世代では、江戸さん(現アディッシュ株式会社 代表取締役)も印象深いですし、少し下の世代になってくると、杉之原さん(現アディッシュ株式会社 取締役)やスクールガーディアン事業を立ち上げた蔵田さんや河瀬さん(現株式会社 Photosynth 代表取締役社長)など、面白い人が続々と入ってきましたね。

自律的な働き方を学べたガイアックスは「心のふるさと」

ー ガイアックスではどのような日々を過ごしましたか?

小高:当時の私はCFOという役職でしたが、枠に収まらずに様々なことをことを経験させていただきました。経理・労務・総務などのバックオフィス全体のことやM&Aのようなこともしていましたし、フィリピンに出張して海外の拠点作りをしたことも印象的ですね。当時は今のようにSNSが盛んではなかったので、「フィリピン 日本企業」などと検索をしてリストアップし、電話をかけて1日にアポを7つも入れたりして。普通はCFOがする仕事ではないかもしれませんが、僕の場合は率先して、気づいたらやっていました(笑)。

ー 小高さんが感じる「ガイアックスならでは」の特徴はありますか?

小高:ガイアックスではコマンダーとしての動きを新卒から求められるので、自律的な動き方を学べますよね。投資銀行の時は楽しんで多くの仕事をさせていただきましたが、まだまだ受け身だったと思います。初めて本当の意味で主体的に考えてやり遂げるということを学ばさせていただいたガイアックスは、僕にとって心の故郷(ふるさと)のような存在なんです。
また、海外拠点を作ることや採用や事業の管理を通して、自分自身が経営視点を身につけられたのは大きく変われたことだと思います。

人間は、人間らしく働こう。 情熱を持って“自分の”ど真ん中を走り続ける
人間は、人間らしく働こう。 情熱を持って“自分の”ど真ん中を走り続ける

「目の前のやるべきことをやり続けるだけ」自らプレッシャーをかけ、ダイヤモンドを磨き続ける

ガイアックスでの役割もひと段落。新しい挑戦を求めてTokyo Otaku Modeへ

ー どのような経緯でTokyo Otaku Mode(以下:TOM)に入社したのでしょうか?

小高:創業メンバーとなる何名かとは2011年頃に出会っていて、当時はSNSが流行り始めた頃でした。人と人とがソーシャルで繋がるという時代になり、その時にTOMは日本の文化について発信していました。当時のFacebookページのファン(フォロワー)が100万人を超えていて、これは1つのムーブメントになるのではないか、とワクワクしたことを覚えています。
最初はガイアックスがTOMに投資をして、投資先として事業支援をする形で関わっていました。そこからガイアックスが上場して安定してきたこともあり、僕の役割もある程度満たせたのかなと。新しい挑戦をしてみたいと思ったことがTOMにジョインしたきっかけです。

ー そこからどのような流れで社長になりましたか?

小高:2013年の3月にガイアックスを退任してTOMにフルコミットし、社長になったのは2016年の後半頃からです。
色々と事業が拡大して国内外に株主も増えて行く中で、僕が株主の皆さまとのコミュニケーションのフロントに立つことが多くて。僕が社長をすることが全体としてよいのではないかということになり、代表を務めさせていただくことになりました。
実は、大学時代から「いつか経営者になりたい」という趣向をゴール設定したことは一度もなかったんです。僕は経営者ってなろうと思ってなる目標物ではなく、「誰かがその役割をやったら目的が達成されるのであれば、そうしましょう」という手法であって、「常に自然体で」というスタイルなんです。それが積み重なっている人生なのかもしれません。結果としてリードする立場になっていることがあるだけで、目指すものではないと思っているのかも。やるべきことをやり続けるだけ、という感覚でいて、その時その時で“自分の”ど真ん中だと思うものに向けて走り続けているんです。世の中からするとど真ん中ではないかもしれませんが(笑)、逆に言うと「自分のやりたいことが見つからない」とか「経営したいと思う姿勢がない」と悩む必要はないと思っています。

プレッシャーは成長できるチャンス。筋トレのように楽しむ

ー 社長に就任してから見える景色は変わりましたか?

小高:業務的に大きく変わったということはありませんが、責任感はより感じるようになりましたし、身が引き締まる思いでやっています。従業員の生活を一層考えるようになったり、気づかないうちにプレッシャーは感じているのでしょうね。

僕の好きな言葉で「Pressure makes diamonds」ということわざがあります。ダイアモンドというものは、原石に地圧がかかることでダイアモンドになるそうなのですが、プレッシャーがかかることで人も成長する。例えば何百という人の前でプレゼンする時にはプレッシャーがかかってドキドキすると思うんですよ。でも、出てしまえばあとはやるだけですよね。少し喉が渇くくらいのプレッシャーは自分が成長できるチャンスということなので、「いいぞいいぞ」と思っています。最近はジムにはまっていて、筋トレに近いかもしれません。

TOMのこれまでの経験を生かした「越境Eコマース事業」

ー 今後、TOMで成し遂げていきたいビジョンはありますか?

小高:TOMが目指すのは日本のいいモノを世界に伝えること。アニメのフィギュアなど、日本のカルチャーグッズを「越境Eコマース事業」を通して世界に広げていきたいという思いが強いですね。モノを世界中に送る国際物流はけっこう難しいことなのですが、TOMはその領域をやり続けています。そこから関連して国際物流を切り出したサービスも始めていて、僕たちが扱っているようなカルチャーグッズ以外の日本のいい物を世界に届けるためのアウトバウンドインフラとしてお役に立っていきたいです。
日本経済は国内マーケットだけだとシュリンクしていくと思うので、インバウンドで市場規模を広げるか、いい物をアウトバウンドで輸出するしかない。そういう視点で考えると、コロナでインバウンドが厳しい今、TOMは日本のいいモノを世界に届けるアウトバウンドインフラとして日本のお役に立っていきたいという志を持ってやっています。

経営センスは後からついてくる。大事なのは「突き抜けていること」

事業と共に人を育て、社会に与えるインパクトを大きくしていく

ー 上田さんからの質問を預かっています。−−「どうやったらガイアックスは小高さんのような人を輩出できるようになると思いますか?」

小高:採用という点では、ガイアックスはだいぶ振り切れた採用をしていますし、エッジが立った人しか入れないある意味超エリート集団だと思うんですよね。学歴とかではなく「エッジが立ってる偏差値75」くらいある思います(笑)。採用は引き続きその姿勢を続けるといいと思います。
育てるという点においては、今でも新卒ですぐに会社をやらせたりしていると思いますが、さらに足すのであれば「どのように規模を大きくしていくか」の観点を持つことでしょうか。アイディアを数字に落とし込んだ時に、それが1000万なのか、1億なのか100億なのかで全然違ってくると思うんです。結果ニッチでも全然よいのですが、事業規模の大きさは、言い換えると社会に与えるインパクトのバロメータだとも言えます。それを伸ばすという事業領域の場合には、さらに資本力をつけて投資するなどの経営判断をしていくと、もっと面白い人が輩出されていくんじゃないかなと思います。

ー どんな人がガイアックスに来たら活躍できそうだと思いますか?

小高:一言で言うと、変な人の方がいいでしょうね。ガイアックスは大学入試でいうところのAO入試みたいな感じだと思っているんです。そういう懐の広さがあるので、変な人や特徴のある人で、それが輝きそうな人であれば学歴に関係なく応募していいと思います。
経営センスや素質、経営したいというメンタリティは後からついてくると思うので、ガイアックスに来て活躍したい変人がいるとしたら、やはり「突き抜けているかどうか」が大事なのではないかな。

逆に、「会社が仕事を与えてくれる」とか「どうしてこれを教えてくれないんだ」と思ってしまう人にとっては辛い環境かもしれません。そういう人は大企業なり、もう少し研修制度がある会社で3年くらい仕事を身につけてから来た方がいいかもしれませんね。
僕も転職時には、ガイアックスに何も期待せずに来ていますから(笑)。

人間は、人間らしく働こう。 情熱を持って“自分の”ど真ん中を走り続ける
人間は、人間らしく働こう。 情熱を持って“自分の”ど真ん中を走り続ける

生きのびるための仕事から、心の炎を燃やす仕事へ

人の心の中にある「赤い炎」と「青い炎」

ー これから仕事をやっていくぞ、という方に向けてメッセージをお願いします。

小高:色々なところで言われていますが、これからは仕事は完全に権利化すると思うんです。もともと仕事は国民の義務でしたが、働かなくてもベーシックインカムで生活していける世界が来ると思います。僕は歴史好きなので過去の歴史を振り返ると、人類は人口が増えすぎたことで食糧難になり、食料を得るために戦って領土を拡大してきた歴史があります。今はお腹が空いたから戦うということはなくなっていて、そこから考えても、基本的にはそんなに仕事をしなくても食べてはいける時代になりつつあるんです。長い目で見れば、仕事をすること自体が特別なことになっていったり、仕事が趣味化していくのだと思います。
やらされる仕事はいずれAIに持っていかれてしまうので、社会に出て義務感から仕事をしているのであれば、究極的に言うとやらない方がいいと思うんです。そして、やるなら自分の興味があって心の炎が燃えそうなものを徹底的にやるのがいいと思います。

僕はよく、心の中には「赤い炎」と「青い炎」があるという話をするんです。人によってタイプは違うと思いますが、赤い炎があるのは「これをやりたい!」と情熱が前に出るタイプの人。青い炎の人は、外に表現することはあまり好きではないけど、自分の中にテンションが上がるものがあるタイプ。
全員が赤い炎である必要はないと思っていますが、何か自分の炎が揺らぐものを見つけてほしいと思っています。小説を書くでもいいし、ゲームでもいい。昔はEスポーツのゲーマーという職種なんてありませんでしたが、今ではそれが仕事になっている。これから世の中が一気に「そっち」に向かっているんですよ。だから、自分が少しでも好きだと思って時間を投下できることをやって、特徴を身につけていくという振り切れ方を求めたいですね。
妥協して就職するくらいなら、フリーターで食いつなぎながらでも好きなことをやり続ける。自分にとって少しでもテンションが上がるものを社会人になってもやり続けること。そこを軸に職を考えていく方が絶対にいいと思っています。

ー 振り切るのが怖い人や、自分の炎が何に対して燃えるのかわからないという人もいらっしゃると思いますが、それらの不安を乗り越える何かオススメの方法はありますか?

小高:今までにやったことのないことをやってみる。それに尽きると思います。アウトドアで活動してみるのもいいし、家の中でひたすらNetflixを観るのもいいと思います。やってみて意外と好きだと気づくこともあると思いますし、自分が楽しいかつまらないかはわかりますよね。そういうきっかけを積み重ねていって、仕事につながることがベストだと思います。昔は「好きなことを探してやり続ければいい」というのは絵空事でしたが、今は一気にそういう時代になってきています。AIと自動化によって人が仕事をしなくても餓死はしないという状態になった時に、人は何をするのか。そこは、新しいものを取り込んで自分の好きなものや心が動くものを見つけにいく。人生でやることってそれだけだと思うんです。

ー 小高さんのこれまでのキャリアを経てその言葉を聞くことで、勇気をもらう人がたくさんいると思います。ありがとうございました!

 

インタビュー:荒井智子
ライティング:黒岩麻衣

 

<関連ブログ>

編集後記

「やりたいことがわからない」と思うと立ち止まりそうになりますが、必ずしも大きなビジョンを持つ必要はなく、その時その時で少しテンションが上がるものでいい、というのはポイントだと思いました。それに対して「全力」で臨むことで、そのうち想像を超えた場所に行けることもあるのかもしれません。

このインタビュー記事の動画も是非ご覧ください


Vision Notes Episode 5 – 株式会社Tokyo Otaku Mode 代表取締役社長 小高 奈皇光
『外資銀行からベンチャーへ転職し、社長になった人の物語』


投資先経営者
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7. 27歳で取締役としてベンチャー企業の上場を経験して見えた景色 – アディッシュ株式会社取締役 松田光希
8. 情熱が成長曲線を左右する。意図を持つことで働き方は変わる – 株式会社Tokyo Otaku Mode 代表取締役社長 小高 奈皇光
9. 人間は、人間らしく働こう。 情熱を持って“自分の”ど真ん中を走り続ける – 株式会社Tokyo Otaku Mode 代表取締役社長 小高 奈皇光
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小高 奈皇光
大学卒業後、2000年にメリルリンチ投資銀行部に入社。2006年 株式会社ガイアックスのCFOに就任。資本政策、M&A・人事・経営企画などを管轄、フィリピン及びシンガポールの子会社設立を主導。 2012年、Tokyo Otaku Modeを共同創業者として設立。現在Tokyo Otaku ModeのFacebookファン数は2,000万人を超え、世界130カ国以上に日本のアニメグッズを届けている。 慶應大学総合政策学部卒/University of Pennsylvania – The Wharton School Executive Education Program修了/オタクコイン協会理事
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