「Nagatacho GRiD(通称:GRiD)の入居者をインタビュー形式でご紹介していく企画、第4弾。
ガイアックスがGRiDで目指しているのは、日本で一番シェアを体験できる場所。それを体現したひとつが、GRiDの5階にあるMIDORI.so(みどり荘)です。みどり荘は永田町の他にも中目黒、表参道、(その他シェアオフィスの運営を業務委託でやってます)でメンバーシップ制のワークスペースを提供しています。
実は、GRiDはガイアックスとみどり荘がともに立ち上げた場所なのです。
今回はみどり荘のオーガナイザーである小柴美保さんに、オフィスの在り方やコミュニティ作りの工夫についてお聞きしました。
GRiDの中でも異彩を放つみどり荘は「良質なカオス」
永田町でビジネスとクリエイティブが混ざり合う
ーーまず、みどり荘について教えてください。
小柴:一言でいえば、シェアオフィスです。「良質なカオス(混沌)」をテーマにしていて、国籍やジャンル問わずにいろんな人が集まって、働いて交流することにより何かあたらしいことが生まれて、集まった人たちが「来てよかった」と思えるような場を目指しています。
ーー特に永田町でいうと、どんな業種や国籍の方が集われていますか?
小柴:業種は、他のみどり荘に比べるとスタートアップが多いのと、あたらしくビジネスを始める人が多いですね。丸井グループの新規事業チームや、海外から来ている人だとマーケティング関係の仕事をしている人など。ガイアックスの上田社長が理事を務めるシェアリングエコノミー協会も入っていて、個人で仕事をしている人も、そうでない人も、ワイワイと働いています。
他のみどり荘だとよりクリエイティブ寄りの仕事をしている人が多いので、永田町の方がビジネスマインドの強い人が多いと思います。特に永田町の場合はキッチンを広く設計していて、「同じ釜の飯を食う仲間」のように、そこで交流が生まれるようにしています。
良質なカオスとは、与え合うことであたらしいものが生まれる場所
ーーみどり荘が掲げる「良質なカオス」とは、どういうものでしょうか?
小柴:例えば、完全にファシリテートされていないんだけど、ここに行くと面白い人に会えたり面白い話が聞けたりする、というところですね。ただワイワイ集まるだけで何も生まれないよりは、生まれる環境があるといいと思っていて。
あえて定義しすぎないようにはしていますが、みんなが前向きであることが大切になると思います。メンバーになる人たちも、「仕事がもらえそう」という思いで来る人ではなく、何か「与えるものがある人」に優先的に来てもらっています。
お互いの思考をシェアするというか、、、。
ーーどうしてみどり荘では、「良質なカオス」が成り立っているんでしょうか?大切にしていることはありますか?
小柴:成り立っているかはわかりませんが(笑)気をつけているのは、わざとらしくしないようにすることでしょうか。偶然ではないけれど、上手く偶然を装う感じです。例えば、みどり荘を「コミュニティ」と定義してしまうとわざとらしい感じがしてしまう。それよりも、人が偶然集まって、話をして、自然発生的にあたらしいものが生まれるような場所にしていきたい。
本当は頑張ってるけど、頑張っていないふりしてるというか(笑)恩着せがましくなく、サラッとかっこいい感じになるように工夫しています。
「愛着」が育む、応援したくなる繋がり
自然発酵するように醸成するコミュニティ
ーー例えば、わざとらしく「ここにコミュニティがありますよ」としてしまうと、「与えてもらいたい、繋げてもらいたい人」が集まってきてしまうのかもしれませんね。
小柴:そういう人が一人でもいると、全体のバランスが崩れてしまうので気をつけています。「この場所で働きたい」と思う人なら、ある程度近しい価値観があると思っていますが、同じ質の人ばかりを求めすぎても面白くないですよね。
みどり荘の中で起こっていることって、発酵と似ているんです。異質なものが入ると腐ってしまうし、逆にクリーンすぎても発酵しない。スターター(発酵の元となる種菌)もすごく重要で、みどり荘が作って来たものを、メンバーがさらに醸成できる環境があるといいですね。
ーースターターとなる、みどり荘の根底にある「種」とはどういうものでしょうか?
小柴:「一緒にこの場所で働きたいかどうか」もありますが、良質なカオスの意味を身をもってわかっている人がいるとやりやすいですね。あとは、コミュニティオーガナイザーが触媒となり、さらに耕している感じです。
人に迷惑をかけなければいいと思っていて、そこだけ守ってもらえたら、ベタベタと規律を貼らなくても整っていくと思うんです。「ルールがないことがルール」ということにしています。
ーーつい言語化しようとしたり、ルールを作りたくなってしまいますが、あえてそれをしないところに覚悟を感じます。
会えないからこそ、接点を持ち続けた
ーーコロナの感染拡大により、オフィスに集うことが少なくなったと思いますが、オンラインの施策はどんなことをしていましたか?
小柴:仕事中・仕事の合間・仕事終わりのそれぞれにほしいと思うようなコンテンツを用意しました。みどり荘のプレイリストを作ったり、ラジオ体操やヨガや筋トレなどで体を動かしてもらったり。おすすめのビールを紹介したり、ビアナイトもやりましたね。
オンラインでの料理教室や、毎週メルマガを発行してそこにレシピを書いたり、ガイアックスが主催となってGRiDで開催されている「Booked」も、みどり荘バージョンで開催しました。あとはポッドキャストも始めました。
それまでに温めていた企画が、コロナをきっかけにようやく出せたのはよかったです。イベント参加者はだいたい5〜30人くらい。直接会ってお知らせすることができないので、チャットやメッセージで直にコミュニケーションを取るように心がけました。オンライントークイベントの方は人は集まりやすいですね。ラジオみたいに聞いてもらうこともできるし、子どもがいても移動しなくて済むので。そういうあたらしい発見もありました。
ーーコロナ禍で契約者数の増減やプラン変更などはありましたか?
小柴:10%減くらいでしたね。傾向としては、個人で働いていて固定費をすぐに減らしたいという人は、一旦おやすみされる人が多かったです。会社で借りている方ですと、会社自体が出社を禁止しているところもあるので、今後はどうなるかわかりませんね。ただ、すでに内覧が入り始めていて、戻りつつある感覚もあります。
人と繋がることで場所に愛着が生まれる
ーー自然発生的なつながりを生むのは、同じ場に集っていたからこそという面が大きかったかもしれません。オンライン化する中で、どのようにみどり荘らしさを保とうとしていますか?
小柴:愛着があることは重要だと思います。場所じゃなく人に紐づいて、「再開したらまた会える」と思ってもらえるような。場所ありきなので、ずっとオンラインのままでは続かないと思いますが、その状況でもいつも何かやっていて、関わりを絶やさないことが重要だと思っているんです。
チームのみんなも、メンバーのために何ができるかという視点で動いていましたね。「おせっかいおばさん」とでも言いますか、勝手に応援する。例えば、みどり荘でランチを提供していた人がコロナの影響で仕事がなくなってしまったので、お弁当を届けてもらい、ソーシャルディスタンスを保ちながら屋上ランチ会をしてみたり。
そうやって応援しているうちに愛着を持ってくれて、結果的に精神的な繋がりが強くなっていくと思うんです。コロナ禍で場所が提供できなくても何かを作り続けたのは、精神的なつながりを保っていたい、強くしていきたいという思いがありました。
みどり荘が体現する、繋がり合う働き方
みどり荘がいたから生まれたバランスがある
ーーここからは、GRiD事業部の野口佳絵さんにも加わっていただき、お話を伺います。GRiDの中でのみどり荘はどんな存在でしょうか?
野口:みどり荘とGRiDでは、愛着という点で運営の仕方が全然違うと思いました。偶発的なシナリオが設計されているのと、集まってもらいたい人に対する嗅覚がコミュニティオーガナイザーに備わっていると感じました。同じ空気を纏っている人の選別がうまくできているというか。みどり荘が5階に入っていなかったら、GRiDの雰囲気も今とは違うものになったと思います。少し前にデザイン思考という言葉が流行りましたが、その辺りの層を集められていますよね。
コロナ禍における解約率は、みどり荘とGRiDでは全然違うと思います。GRiDに入居している人だと、次の段階として、解約して完全にオフィスを手放したり、コワーキングスペースでは環境的にオンラインでのミーティングが難しかったり、コストの削減という理由から個室の安価なマンション事務所に入る場合もあるようです。
GRiDに魅力を感じて、2席だけ残すという会社もありましたね。ビジネス色とクリエイティブ色が混ざり合うバランスの中で、みどり荘というのは強力な存在です。GRiDの全てがみどり荘でもダメなんですが、みどり荘がいなければ成し得なかったことかもしれません。自分たちだけでは作れなかったと思います。
小柴:どんどん使ってください(笑)
これからのシェアオフィスは設備か、繋がりか
野口:コロナ禍でいうと、本当にこれからはオフラインであることの意味が明確になってくる気がしています。まだはっきりとは見えていませんが、その時にGRiDが選ばれるようになっていたいですね。そういう意味で、みどり荘は集めたい人を集められていますよね。人が人を呼んできているということもあると思います。
小柴:コロナ禍は、オンラインでやり続けることには必死でした。お金を払って契約しているのにサービスがないと言われるのは避けたかったんです。もし参加者が集まらなかったとしても、やることに意味があるというか、、、。自粛が始まる前までに組み立てないといけなかったので、急ぎました。
野口:オンラインでイベントを開催することになって、コミュニティオーガナイザーのみなさんは違和感なく受け入れていましたか?
小柴:ファシリテーションが得意な人もいれば苦手な人もいるから、それぞれの得意分野を生かすようにしていました。料理教室やラジオ体操など、得意分野をどんどん生かすことでそれそれののモチベーションの維持にも繋がったと思います。必死でやる必要があったので、みんなの頭の体操にもなってよかったかもしれません。できるものは今後も続けていくつもりです。
野口:今後、シェアオフィス事業は伸びると思いますか?
小柴:なくなりはしないと思っています。オンラインミーティングに対応できる静かな場所か、人との関係を築くコミュニティのような場所の2パターンになっていくのではないかな。
野口:今後は、自分がどのサロンやコミュニティに属して繋がっているかが重要になってくるのかもしれませんね。
小柴:あと、上半身だけ見えていても「その人自身」があまり見えないですよね。ちょっとした雑談から生まれるものもあると思っていて、オンラインだとそれが難しいかなって。だから今後も、仕事において直接会うことは生じると思っています。みどり荘は一言で言えばシェアオフィスなんですが、ただ作業するだけなら他の場所でもできますよね。だからこそ「みどり荘に来たい」と思ってもらえるような場所に育てていきたいですね。
ーー今後シェアオフィスを運営していくことにおいて、オフィスの設備面を整えていくのか、愛着を育てて繋がり合う場所にしていくのかが、重要な観点になりそうです。小柴さん、野口さん、ありがとうございました。
入居は現在、入居者募集中です。2020年8月末までにご入居を決定頂いた方には、3ヶ月賃料無料でのご利用いただける「コロナに負けるな!3ヶ月シェアオフィスフリーレント応援キャンペーン」を開催中。ご入居先を探されている方はぜひ一度お問い合わせください。
※みどり荘はキャンペーン適用外です。
編集後記
これまでのオフィスというと「なんとなく行かなければならない場所」と思っていた方も少なくないかもしれませんが、もしどんなこともできるとしたら、どんな働き方を実現したいでしょうか?これからのオフィスの在り方や働き方を見直す時に、この記事がその一助になれば幸いです。(ライター:黒岩麻衣)