2020年5月29日、ガイアックスの3つの事業部の代表者が集まるトークイベントがオンラインで開催されました。新型コロナウィルスの感染拡大により、大勢で集まる・対面するなど、これまでの「当たり前」が通用しなくなってしまいました。そのことは個人の日常生活を様変わりさせただけでなく、リアルの場が中心だった事業についても、影響は計り知れません。
そんな中ガイアックスでは、前を向いて立ち止まらず、これを好機と捉え、新しいチャレンジをしています。飲食・体験・就活サービス事業を行う入社同期の3人に登壇いただき、コロナ禍における取り組みや、挑戦についてお話を伺いました。
リーダーとして事業やチームメンバーを引っ張る立場にある3人は、この変化の波の中で何を思い、動き続けていたのでしょうか?世の中全体が大変な時期だからこそ、シェアリングの精神でこの2ヶ月間の試行錯誤について、葛藤や苦労も含めてまるごと公開してもらいました。
今回はイベントの参加者として、その内容をお伝えしていきます。(ライター:黒岩麻衣)
登壇者・ファシリテーターのご紹介
登壇者:管大輔
株式会社ガイアックス
ソリューション事業本部長
新規事業「オンライン就活」責任者
登壇者:細川哲星
株式会社ガイアックス
TABICA事業部 地方創生室 室長
aini(旧:TABICA) Founder
各事業部のコロナ禍におけるとりくみ
各事業部のコロナ禍における取り組みについては、それぞれブログに綴られているのでぜひそちらをお読みください。
●tiny peace kitchen
飲食店としてコロナ禍で模索し続けた2ヶ月間
●aini(旧:TABICA)
TABICAオンライン体験で見えた新たな世界
●オンライン就活
もう距離はハンデじゃない。熱意を生かすオンライン就活。【前編】
自分の人生のための就活をしよう。オンライン就活が目指すもの。【後編】
それぞれが過ごした2ヶ月間の挑戦と葛藤
ー千葉ー
この2ヶ月間、みなさんは事業をリードする立場としてどういう事を感じ、どういう事が大変だったか、実感を素直にお話してもらってもいいですか?
ー細川ー
まず僕の担当は、TABICA(※2021.08月にainiとしてリニューアルされました)における新施策を推進するということなので、比較的ルーティンの業務がなく身軽に動ける立場なんです。
日頃からコミュニケーションを取らせていただいているTABICAのホストの皆さまや、TABICAと他の企業や団体7組織で運営している、地域おうえんBASHという地域の活動を応援しようというコミュニティに賛同していただいている皆さまと改めて「この新型コロナウィルスの状況で僕たちは何ができるか」をお話させていただいて、「これはもう私たちが動き出すしかない」ということで、考えた結果、答えが出ないので「とりあえず動きまくろう」と決めました。
ー細川ー
チームの動きとしては、事業部長である原田さんのジャッジが凄まじく適切でした。
事業と世の中の現状把握をしっかりしていて、目標というよりは予想という感覚でプランが3つくらいあり、それぞれの筋道が立てられていました。その内のどれかは当たる、という感覚で「こっちに行ったか」と方向性を判断できるのがわかりやすかったですね。
また、日頃から活動を一緒にさせていただいております皆さまと、「なんとかしたいよね」ということで、毎日夜中の24時から2時くらいまで、寝かしつけの終わったお母さんたちとミーティングをしたのですが、熱意ある皆さまと一緒に働けていて、本当に充実した毎日ですし、こどもの日に「親子でオンライン体験フェス」を開催した時には参加者が7500人も集まって、すごく盛り上がりました。また、6月6日も開催し、3100人のお客さまにも参加いただきました。今度は、7/5の七夕企画や、自治体を巻き込んだ、観光をバーチャル化していく企画、7/25四国オンライン体験フェスの準備を行なっています。
その他、たくさんの企業さまからこんなことできないか?あんなことできないか?というご提案を毎日のようにいただいております。
僕自身も関わってくださる方々からエネルギーをもらって、原田さんの存在もあり、コロナショック中は周りの人たちに助けられている時間だったな、と思っています。今後、観光やイベントについては、1.5年間はなかなか苦しい戦いになると思っています。
PDCAを回していく期間というよりかは、行動しまくるAAAAA!の時期かと思いますので、観光やイベントに関わる皆さまと共に手を取り合って、いろんな発明を思考し続ける、1.5年になりそうです。
ちなみに、6/6には、来客数が96%減している高知県の桂浜水族館にて、バーチャルで餌やりをする、という企画にもチャレンジしたしたりもしました。
「飼育員へのオンライン餌やり」桂浜水族館の奇策について、担当者に聞いた
ー千葉ー
確かに、TABICAに関わっている方たちすごいパワフルですよね!こういう変化の大きな時は多くの人が、機敏に動けるか思考が停止するかの2パターンに分かれると思っているんです。それだけアクティブに動けるのは、その人の性格や生まれ持ったものだけではなく、周りの環境も影響していそうですね。
ー管ー
去年の秋にテスト的にスタートして、正式にリリースしたのが今年の2月だったのですが、2月下旬のタイミングではもうコロナがけっこう広がっていました。大手の就活サービスが合同説明会を中止すると宣言していたタイミングで僕たちのオンライン就活がリリースになったので、「コロナだから始めた」と思われてしまうこともありました。
もともと僕らは、オンライン就活をコロナ対策で始めたわけではないので、コロナ前までは、例えばTwitter で「企業説明会をオンラインでやりたい」というツイートを見つけたら「うちのサービスを使いませんか?」とすぐ話しかけに行っていましたが、そうやってアプローチする事すらリスクになってきてしまいました。
だから、リリース直後は自分たちではコロナという文言を使わずにアピールする事を広報の方針として決めたり、アウトバウンドのアプローチもかなり慎重にならざるをえなくなりました。
当初、事業を拡大するためには「コロナだから始めた」と思われるのもひとつの手だと考えましたが、「人の弱みに付け込んできた」と見られるリスクもありますよね。本来ならリリースしたばかりで勢いよく攻めたかった所を、いろんなものに配慮して進めなければならないという難しさがありました。コロナは事業戦略においても全く予測していなかった事態でした。
最初は戦略を3段階くらいに分けていて、「オンライン合同説明会」からスタートし、まずはスピードで浸透させてから次の段階の打ち手を打って、差別化を構築していこうと思っていたら、最初の段階でスピードでの差別化がとれなり、次の打ち手に行く前にコロナの影響で追いつかれてしまった。本当は1年くらいかけて次の仕込みをしようとしていた所を、1週間くらいで新しいサービスのLPを作ってリリースしました。この2か月間はめまぐるしく、あっという間に過ぎたなという感覚です。
ー千葉ー
そんな葛藤があったとは思っていませんでした。ずっと順調に進んでいたのだと、ガイアックスの内部の人間ですら思っていました。
では、荒井さんはどうでしたか?飲食はだいぶ影響があったのではないでしょうか…。
ー荒井ー
めまぐるしすぎて、あまり記憶がありません(笑)
当初は、頑張りたいけど頑張る方向を間違うとエライことになるという葛藤がありました。
例えば、私たちのお店の売上は半分以上がケータリングによるものでしたが、2月くらいからケータリングがどんどんキャンセルになっていき、ついには3月の予約が全てキャンセルになってしまいました。
その時に、お店のメンバーとしては「売上を挽回するために、何か自分たちにできる事があるんじゃないか」と思うんですけど、そもそも人が集まってご飯を食べることに対する自粛ムードの中で、ケータリングやお弁当の配達をしますよ、というのが不謹慎になりかねないというか、状況を慎重に見極めなくてはならず、身動きがとれないという気持ちでした。
責任者として、事業もチームも守りたい
ー荒井ー
3月末にお店を休業する事になった時もそうですし、休業してからはオンラインで料理教室やインスタライブやってみたりと、新しい事に挑戦してみたのですが、こういう時こそエネルギーが出てくるメンバーもいれば、先行きが不安だと塞ぎ込みがちになってしまうメンバーもいました。
全メンバーが揃うミーティングでは、自分の葛藤も含めて全部共有しました。誰も取り残さずに船を進めて行きたいけど、歩みを遅くしたら船自体が沈んで事業解散になってしまう。大変だけどみんなで前に進めていきたいと、オンライン会議で初めて泣いてしまいました(笑)
全体感を保ちながら、あまり皆を不安にさせないようにしっかり情報共有したり、先行きが不安な時にどういう心持ちでいたらいいかを話し合ったりもしました。着実に進みつつ、リスクとりすぎず、なるべく会社全体にも迷惑かけないような判断をするという連続だったな、と感じています。
ー千葉ー
特にガイアックスはITベンチャーという事もあり、こういう時だからこそアクセルを踏む人が多いですよね。その雰囲気の中で、身動きがとれなくなっている人もいるだろうと思っていました。荒井さんのように、満遍なくメンバーを気にかける人がリーダーだったらいいけど、そうでないと、この状況下で分離してしまうチームも少なからずあると思いました。
ー管ー
荒井さんの部署は私が本部長として管轄しているので、組織図的には荒井さんの上司が僕になるんです。毎週事業報告があるのですが、本当にtiny peace kitchenのダメージは計り知れなくて。緊急事態宣言がいつ解除されるかもわからないし、もしお店を再開してコロナが出てしまったらガイアックス全体に影響があるし、自分でコントロールできない要素が大きすぎるんです。でも売上はたたないから、プレッシャーになってしまう。その中でよく折れずにあの期間をすごせたなと思っています。厳しい時こそ事業責任者の度量というか、覚悟の強さが問われるなと感じていました。僕が上司という立場ではありますが、荒井さんの事業報告を聞きながら、責任者の在り方を学ばせてもらいました。
ー荒井ー
うちには3歳の子どもがいて、4月中旬から保育園が利用自粛になりました。夫とシフトを組み、育児と仕事を完全に交代制にしました。私の部署の副事業部長の場合は、共働きで子どもが2人いるので、彼女は子どもが起きる前、午前4時から稼働していました。私と彼女で午前中は稼働時間が重なるので、打ち合わせをその時間に入れて、それ以外の個人タスクの状況がお互いにわかるようにガントチャートを作って管理していました。
両立のポイントはなんでしょうね、、気合いでしょうか?(笑)
あと、メンバーとのチェックインは大事にしていました。
業務を開始する時や打ち合わせする時にまずチェックインをして、お互いの気分や状況をシェアしています。子どもが全然寝てくれなかったとか、夫とモメたとか、大変なことや辛いことを言える環境を作っておけば、お互いに気にかけられます。無理して溜め込まないようにする事は意識していましたね。
ー管ー
先日見たデータでは、リモートワークで効率が上がるのは独身世帯だけという結果が出ていました。お子さんがいらっしゃる世帯は集中できる割合が減るので、それを見て、同じ状況でもメンバーによっては自分と同じような働き方ができると思ってはいけないんだと改めて思いました。
特に今回の場合は保育園も閉まるという事で、メンバーへの仕事の振り方とか、仕事の状況を注意深くヒアリングする事にはさらに気をつけるようになったと思います。
参加者の感想
・自分も飲食をやっているので、聞くも涙、語るも涙でした。一緒に頑張りましょうという強い希望を持って今夜は眠れそうです。
・就活中で、色んなことが押し寄せてきた時にどんな風に冷静に意思決定をされているのかを伺いました。コントロールできる事と、できない事をしっかりと切り分けて、コントロールできない部分にストレスを使いすぎないように、コントロールできる所でやっていく。でも、どうしようもないところは人と共有して、自分がワクワクしたり一緒にやりたいという思いを持って意思決定されているというお話を聞けて、すごく元気が出ました。
・1on1みたいに聞きたい事が聞けました。オンライン就活のようにもともとオンラインである事を前提とした事業と、リアルの場がメインだったのにオンラインに取り組まないといけなくなった事業部もあり、オンラインだから生める価値と、うまくいかない事も、それが今の所うまくいかない事なのか、そもそもオンラインだと難しい事なのかという所は気になっていて、もっと聞きたかった部分でもあります。
・オンラインの価値をあげるというより、オンラインをテコにしてリアルの価値を大きく高めると考える方がマッチすると感じました。
ライター編集後記
今回のイベントでは、登壇者の3名が率いる事業のコロナ禍における新たな挑戦や、その裏側にあった葛藤や苦労などをお聞きしました。参加者はトークの最中でもチャットからリアルタイムで質問をすることができ、オンラインのトークイベントでありながら登壇者との「近さ」も感じられるイベントでした。
ガイアックスはシェアリングエコノミーにも力を入れている会社ですが、今回のイベントでもその「シェアリング精神」の土台を感じました。自分たちの知識やノウハウだけでなく、葛藤やうまくいかなかった事も公開する事で、周りを巻き込んで一緒にアップデートしていこう、という心。この「シェアリング精神」は、アフターコロナのニュースタンダードになっていくのではないでしょうか。
そして、登壇者の3名のお話を聞いた前と後を比べると、参加者の皆さんの表情が明るくなっていることに気がつきました。
新型コロナウィルスの前では、これまでの「当たり前」が通用しなくなってしまいました。多くの人が先の見えない事に不安を抱え、戸惑い、早く状況が元通りになることを願っているだろうと思います。
先が見えないという点では、皆一緒です。
変化に戸惑って歩みを止める事もできますが、「どうしていきたいか」に目を向け、動き続けている人たちもいます。「自分たちがどうにかするしかない」というエネルギーは、周囲の人まで元気づけます。それに対して、私自身は機敏に動けただろうか、、?と耳の痛い思いでお話を伺っていました。
新しい事に挑戦する時には、これまで積み重ねてきた「当たり前」が障害になる事があります。その「当たり前」が崩れてしまった今だからこそ、自分たちが望むものを見つめ直し、そこへ向かっていくいい機会なのかもしれません。